子どもを突然連れ去られた!違法性や対処法について解説

2023/9/26

 

配偶者(または元配偶者)による子どもの突然の連れ去りは、子どもの生活、就学環境への影響が懸念される緊急事態です。
離婚前の夫婦が別居をする場合や、離婚後に面会交流の機会を利用して連れ去ってしまうという事態が典型例です。
このような状況に直面した場合、どのように対応すべきか具体的な対処法を弁護士が詳しく解説します。

1 子どもの連れ去りは違法なの?

子どもが無断で連れ去られた場合、その行為の違法性は民事上、刑事上の両側面から検討が必要です。

民事上では、子どもの連れ去りが違法性を帯びる場合、連れ去った親は親権者や監護権者としてふさわしくないと判断されたり、慰謝料の支払義務を負う場合があります。

刑事上では、子どもが連れ去られた状況によっては未成年者の誘拐や略取(刑法224条)に該当する可能性もあります。
もっとも、多くの場合では民事的な解決が優先されるべきとされ、警察も簡単には動きません。これは、家庭内の問題に警察が介入するのは抑制的であるべきという考えが根底にあるためです。最高裁判所においても子どもの連れ去りを巡って、刑事事件として処罰するのか否かは、意見が分かれていました(離婚係争中の別居中の夫婦について、最決平成17年12月6日の多数意見と滝井繁男裁判官の反対意見を参照。)。現在の実務では、まずは民事的な解決に委ねられることがほとんどです。

そのため、子どもの連れ去りに対して法的手続きに対応する第一義的な専門家は弁護士となります。以下では、子どもの連れ去りに対する民事上の対応について説明します。

(1)離婚成立前の場合

離婚が成立していない場合、親権者は両方の親であり、どちらか一方が子どもを連れ去ったとしてもすぐに違法とは言えません。ただし、子どもの福祉を害するような連れ去り行為は民事上違法とみなされる可能性があります。

違法とされる可能性のある例と、違法とされる可能性の低い例は次の通りです。もっとも、いずれの例も具体的な状況によって違法かどうかの判断は分かれ得ます。

<違法とされる可能性のある例>

■子どもが嫌がるにもかかわらず、無理やり連れ去る

■学校で待ち伏せして無理に連れ去る

■自宅に押し掛けて連れ去る

 

<違法とされる可能性の低い例>

■DVから自分や子どもを守るために、連れ出す

■子どもの命に危険が及ぶ恐れがある場合

■一時的に実家に帰る場合

(2)離婚後の場合

離婚後の場合、子どもの親権者が父母いずれか一方の単独親権者となりますと状況が異なってきます。先頃、日本でも共同親権を取り入れるべく民法改正が行われましたが、共同親権ではない場合、子どもの親権者は父母いずれか一方となります。

裁判所の判断の傾向としては、親権者の下から親権者ではない親が子どもを無断で連れ去った場合、その連れ去りは違法と判断される傾向にあります。これは、実力行使で親権を蔑ろにすることは許容できないという法的な判断に基づきます。

離婚後の子どもと暮らす父母を変更したい場合は、親権変更の調停や、面会交流の内容を充実させるといった方法で対応する方が好ましいです。

2 親権獲得不利になることも~不利にならないためには~

子どもを無断で連れ去った場合、親権獲得に不利になる可能性があります。
特に、子どもとの生活が突然断絶されることが裁判所の判断において不利に作用することがあります。裁判所は、親子の関係を急激に断ち切ることを望まないため、連れ去り行為が親権に与える影響を慎重に判断します。

親権獲得に不利にならないためにはできるだけ冷静に対応すること、無断で連れ去られた場合でも適切な法的手続きを踏んで、子どもとの接触を取り戻すことが重要です。

また、親権獲得の有利、不利や感情にかかわらず、弁護士の立場としては子どもの視点に立って、父母双方が子どもにとってより良い養育環境を提供するために考えてもらいたいと思っています。親権の有無にかかわらず、子どもの父母であることには変わりはなく、子どもが健全に育っていくためには父母の協力が必要不可欠なためです。子どもを巡る紛争では、解決に至った後も、父母双方の関係は子どもを介して続いていくという点が金銭トラブルのような事案と決定的に異なる点です。

3 子どもを連れ去られた!対処方法

子どもを無断で連れ去られた場合、多くの方が焦って自力で取り戻そうとするかもしれません。
しかし、このような行動は更なるトラブルを引き起こす可能性が高いです。ここでは、子どもを取り戻すために必要な法的手続きを詳しく解説します。

(1)子の引渡し調停(審判)の申し立て

子どもを無断で連れ去られた場合、家庭裁判所に「子の引渡し調停」を申し立てることができます。
この調停では、調停委員や裁判官が間に入り、両親の意見を聞きながら解決を図ります。もっとも、連れ去りが発生している場合は調停では迅速な解決が難しいため、最初から審判を申し立てることが多くなります。

(2)子の監護者指定調停(審判)の申し立て

離婚協議中または、別居中に子どもとどちらの親が生活するかについて争いがある場合、「子の監護者指定調停(審判)」を申し立てることができます。
この調停では、調停委員や裁判官が間に入り解決を図ります。審判では裁判所がどちらの親が子どもを監護するかを決定します。

連れ去りが関わる場合には、監護者指定の審判と並行して「子の引渡し調停(審判)」を申し立てることになります。

(3)審判前の保全処分

子どもの監護や引渡しに関して緊急を要する場合、家庭裁判所に「審判前の保全処分」を申し立てることができます。
この処分が認められると、裁判所が子どもの引渡しを命じることが可能となります。

(4)強制執行による子どもの引渡し

裁判所が「子の引渡し」の審判を下し、相手がそれに従わない場合、強制執行を行うことができます。強制執行には、以下の2種類があります。

①直接強制:家庭裁判所の執行官と一緒に相手方の家に赴き、子どもを引き渡してもらう方法。実際に子どもを連れ帰るため、迅速に解決が可能です。

②間接強制:相手方が子どもを引き渡すまでの間、相手方に金銭の支払いを命じる方法です。この方法は、心理的に圧力をかけ、子どもの引渡しを促すことを目的としています。

 

強制執行を行う場合、保全命令が送達された後、2週間以内に執行を行う必要があります。
保全処分が認められた場合は、その後の強制執行を見越してスケジュールを組むことが重要です。

(5)人身保護請求による子どもの引渡し

「子どもの引渡し」に関する審判や保全処分が実行されても相手が応じない場合、さらに強力な方法として「人身保護請求」を行うことができます。人身保護請求は、子どもが不当に拘束されている場合、速やかに子どもを取り戻す手続きです。人身保護請求では、原則として弁護士を代理人として選任することが義務付けられています(人身保護法3条)。

人身保護請求を行うには、次のような要件を満たす必要があります:

■子どもが拘束されていることが、明らかに違法であること

■子どもが拘束者の監護下にいることが、子どもの幸福に適さないことが明らかであること

人身保護請求を通じて、拘束が違法である場合、最も迅速かつ強力な方法で子どもを取り戻すことが可能となります。

人身保護命令が出ますと、これに従わない場合、刑事罰が科され得ます。そのため、子どもの引渡しを求める手段としては非常に強力な一方、その強力さゆえに、最後の手段といった位置づけの手続になります。

4 まとめ

子どもが無断で連れ去られると、冷静に対応するのが難しくなることもありますが、「自力救済」ではさらなるトラブルを招く可能性が高いです。
法的手続きを迅速に行い、子どもを守るための確実な手段を講じることが最も重要です。

子どもの引渡しに関する法的手続きは、短時間のうちに証拠を集め、主張書面を作成して提出しなければなりません。証拠も父母の不仲を示すものではなく、子どもの監護という観点から必要な証拠を収集するという視点が必要です。そのため、冷静さを欠いた状態では、解決に向けて効果的な行動がとれていないこともままあります。

弊所では、子どもの連れ去りに対する対応から面会交流の対応まで、子どもに関する問題を重点分野として扱っています。子どもを連れ去られてお困りの方は、早急にご相談ください。


執筆者:弁護士 稲生 貴子

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