親権者の決め方と知っておくべきポイント

2023/2/27

未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合、子供の親権者を決めなければ離婚ができません。

そのため、お互いが、離婚後、子供の親権者になりたいと譲らない場合は、なかなか離婚が成立しないケースもあります。

今回は、そもそも親権とはどういうものなのか、夫婦がお互いに親権者を譲らない場合にどうやって親権者を決めていくかということについてご紹介いたします。

1親権者とは

親権者とは、未成年の子供の親権を行使する者のことをいいます。

そもそも親権とは何かということは後述しますが、父母が婚姻中は、子供の親権者は父母の両方になり、共同で親権を行使します。

父母が離婚する場合は、どちらか一方が単独で親権者となります。

2親権の種類

親権者というと、離婚後も子供と一緒に生活をする方の親というイメージを持つ方も多いと思いますが、法律の世界では、大きく分けて⑴財産管理権⑵身上監護権(監護権)の2種類の権利があります。

(1)財産管理権

財産管理権とは、子供の財産を管理し、財産に関する法律行為を行う権利のことです。

例えば、子供がもらったお年玉を預かって預金したり、子供が一人暮らしをするための賃貸物件の契約に同意することなどです。

(2)身上監護権(監護権)

身上監護権とは、子供を監護したり教育をしたりする権利のことです。

具体的には、子供の生活する場所の指定、子供のしつけ、仕事をすることの許可を与えたりするこのとのできる権利です。

3親権者の決め方

親権者は、父母が離婚時に話し合いによって決めるのが原則です。

話し合いによって解決ができない場合は家庭裁判所での調停や裁判で解決することになります。

調停や裁判については後述しますが、家庭裁判所では、以下のような事情を参考に、子供の利益を尊重して決めていくことになります。

(1)養育環境

親権者を決めるにあたっては、養育環境が重視されます。

養育環境は、生まれてから離婚するまでの間、子供の衣食住の世話や病気の際の対応、学校対応などをより子供のためにしてきたことが重要です。

また、離婚するまでの事実だけでなく、離婚後の養育環境が整っているかということも重要です。

離婚後、配偶者と共同生活ができなくなっても、これまでどおり監護する親が十分に養育をすることができるか、実家の両親(子供から見ると祖父母)が養育を手伝ってくれるか等の事情も重要になります。

(2)経済力

子供を養育するためにはお金がかかるので、経済力が高い親の方が親権者としてふさわしいと思われるかもしれません。

確かに、経済力が全くなく、子供を困窮させてしまうことは望ましくありません。

しかし、経済力の差は、養育費の支払いや公的な援助等で一定の水準は確保できることが多いので、経済力は親権者を決めるにあたって重要視はされません。

(3)子供の将来、年齢

親権者を決めるにあたり、子供の意思を重視するのは、子供の年齢によります。

15歳以上の場合は、親権者を決めるにあたっては、法律上、子供の意見を必ず聞かないといけないことになっています。

15歳未満であっても、子供の意思は家庭裁判所調査官によって確認され、小学校高学年以上の場合は子供の意思が非常に尊重されます。

他方で、小学校高学年よりも年齢が低い場合は、必ずしも正確な意見を述べることができないことも多いので、養育環境などの要素の方が重視されますが、子供の意思も尊重されます。

(4)離婚原因

離婚原因が一方にある場合、親権者の獲得に有利に(不利に)なるかどうかは離婚原因の内容によります。

例えば、離婚原因が子供に対する暴言や暴力にある場合は、子供の養育を継続することは問題があるため、親権者としてはふさわしくないという判断になり得ます。

しかし、離婚原因が不貞行為等の異性関係の問題であった場合には、子供の監護に関して直接関係する事情ではないことから、親権者の判断にあたっては重要視されません。

4親権者が決まるまでの流れ

親権者は、父母が離婚時に話し合いによって決めるのが原則です。

話し合いによって解決ができない場合は家庭裁判所で調停をすることになります。

調停をしても解決ができない場合は、裁判によって決着をつけることになります。

(1)話し合い

まずは、夫婦間で親権者をどちらにするかを話し合います。

当事者同士で話し合いをすることが難しい場合は、この時点で弁護士を入れて代理で話し合いをすることも可能です。

(2)調停

話し合いでの解決ができない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申立てます。

離婚調停では、調停委員2名が中立の立場で間に入り、お互いの言い分を個別にヒアリングし、歩み寄ることができるように調整します。

調停はあくまで当事者間での話し合いになるので、双方が承諾しなければ調停は成立しません。

(3)裁判

調停が成立しない場合は、裁判をすることになります。

裁判は、最終的には裁判所が判決という形で強制的に親権者を決めることになります。

5まとめ

離婚をするとしても、父母は共に子供に愛情を持っていることがほとんどで、お互い子供と一緒に生活したいと考え、親権を譲らないケースも多いです。

また、親権の問題は、金銭では解決できない部分でもあるので、対立が深まることも多いです。

したがって、当事者間で解決が難しいと感じた場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。