【財産分与】子ども名義の預貯金はどうなるの?

2023/6/27

 

子ども名義の預貯金口座に、将来の教育費等のためということでお金を預け入れている夫婦は多いと思います。
離婚のとき、このお金はどうすればよいのでしょうか。
今回は、離婚のときに子ども名義の預貯金について、法的にはどのように扱うことができるのかについてご説明します。

1 財産分与の対象となるもの

夫婦が離婚をするとき、婚姻期間中に築いた夫婦の財産を分け合うことができます。
これを「財産分与」といいます。
財産分与では、①夫婦がそれぞれ婚姻期間中に築いた財産を洗い出し、②それらを夫婦で2分の1

婚姻期間中、夫婦の協力によって得られた財産は、離婚時には財産分与として夫婦で分け合うことになります。
この財産分与の対象になる財産のことを、夫婦共有財産などと呼んでいます。
民法上は、夫婦のいずれかに属するか分からない財産は、共有であると推定されるとなっています(民法762条2項)。
「夫婦の協力」については、有形無形を問いません。
そのため、夫のみが働き、妻が専業主婦であるという家庭においても、夫が働くことに全力をかけることができるのは、妻の協力があるためであると評価することになり、婚姻中に夫の収入で得られた財産を財産分与の対象とすることになります。

(2)『特有財産とは』

一方、婚姻期間中に得られた財産であっても、財産分与の対象とはならないものもあります。
民法では「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産」のことを特有財産として、夫婦の一方が単独で有する財産とされます。
婚姻中自己の名で得た財産の典型例は、相続で得た財産です。

2 子ども名義の財産は財産分与の対象となるの?

では、子ども名義の財産は財産分与の対象となるのでしょうか。
ここでも、子ども名義の財産が、「夫婦の協力によって得た財産」、すなわち、夫婦共有財産とすることができるかどうかで判断をしていくこととなります。
なお、ここまで述べてきたとおり、財産分与の場面では、形式的な名義のみを捉えて財産分与の対象か否かを決めているわけではなく、実質的にみて夫婦の協力があるのかないのかを考えています。
そのため、実質的に夫婦の協力があるといえそうなのかどうかが、財産分与の対象となるかどうかの分かれ目となります。

(1)預貯金

子ども名義の預貯金については、その原資で判断することになります。
たとえば、子ども名義の預貯金が、夫婦の収入から預け入れられたものだとしますと、その預貯金は夫婦の協力によって築かれた財産となるため、財産分与の対象となります。
一方、子どもが親族から子ども自身の名前でもらった財産が原資となっている場合は、子ども自身の財産となるため、財産分与の対象とはなりません。
夫婦がその収入から預け入れた部分と、子ども自身が親族等から子どもの自身の名前でもらった部分が混在している場合も、考え方としては、上記のとおりでよいと思われます。
もっとも、子ども固有の部分を証明できない場合、全体として夫婦共有財産として扱われる可能性があるため注意が必要です。

(2)お年玉

お年玉は、子どもに渡した時点で、子ども自身の財産とすることを念頭に置いたものですので、子ども固有の財産となり、夫婦共有財産には含まれません。

(3)お祝い金

子どもに対するお祝い金についても、お年玉と同様、子ども自身の財産となり、夫婦共有財産には含まれません。

(4)おこづかい

おこづかいについても、子ども自身が得た財産ですので、財産分与の対象とはなりません。

(5)アルバイト代

アルバイト代は、子ども自身が働いた対価として、名実ともに子ども自身が得た財産となりますから、夫婦の協力によって得た財産とはいえず、財産分与の対象とはなりません。

(6)児童手当

児童手当は、中学校3年生までの子を監護する父又は母等に支給される給付であり(児童手当法8条)、受給者は子の父や母となります。
そのため、支給された児童手当を貯蓄していた場合、夫婦の財産と評価でき、財産分与の対象となると考えられます。

(7)学資保険

学資保険は、保険会社との契約者が夫婦のいずれかまたは双方、被保険者を子どもとするタイプの契約です。
保険会社に対する保険料は、保険契約をしている者が支払うこととなり、保険金はその保険料に対する対価といえます。
したがって、保険料を支払っているのが夫婦のいずれかまたは双方であるなら、夫婦共有財産にあたるといえます。

3 まとめ

財産分与を巡っては、子どもの財産だからということで、子ども名義の財産を財産分与から外そうとする考える人も一定数います。
素朴な心情としてはそれも誤りではなく、夫婦でそれでよいと合意するのであれば、子ども名義の財産を財産分与から外すのも一つでしょう。
しかし、多額の財産を子ども名義で貯蓄していた場合で、財産分与に子ども名義の財産が含まれないと処理してしまうことに、躊躇いを覚える方もいるかもしれません。
財産分与は、民法上の条文が少なく、実務を通して考え方が形成されている部分が大きい分野となりますので、財産分与で悩んでいる場合は、弁護士にご相談ください。


執筆者:弁護士 稲生 貴子

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