破産の免責不許可事由とは~偏頗行為~

2024/10/15

 

多額の借金を抱え、返済が困難になった場合は自己破産を検討することになります。
自己破産をすると、裁判所の審査を経て借金の支払義務を免除してもらうことができます。
このことを免責といいます。
もっとも、自己破産をしても、破産に至る経緯や自己破産申立前後の破産者の対応によっては免責不許可事由に該当し、免責が認められない場合があります。
今回は、免責不許可事由のうち、不当な偏頗行為(「へんぱこうい」と読みます。)(破産法第252条第1項第2号)について解説します。

1 免責不許可事由となる不当な偏頗行為とは

免責不許可事由となる不当な偏頗行為とは、債務者が、特定の債権者に特別の利益(公平性を害する利益)を与える目的や、他の債権者を害する目的で、特定の債権者にだけ優先的に債務を弁済したり、担保を提供したりすることをいいます。

2 偏頗行為に当たる支払行為など

(1) 友人や親族への返済

友人や親族から借り入れをしている場合、人情や今後の人間関係への配慮から、他の債権者よりも優先して返済したいと思う方も多いかもしれません。
しかし、借金の返済が困難になった場合は、友人や親族であっても、消費者金融であっても平等に取り扱わなければならず、友人や親族に対して優先して返済することは偏頗行為にあたります。

(2) 自動車ローン会社への返済

自動車をローンで購入した場合、ローン会社は自動車に担保を付け、返済が困難になった場合は自動車を引き上げ、売却して返済に充てます。
ローン会社に自動車を引き上げられるのを回避するため、自動車ローンだけを優先的に返済することは偏頗行為にあたります。

3 偏頗行為に当たらない支払行為

(1) 家賃、光熱費

家賃や光熱費など、生活に必要な支払いについては、特定の債権者にだけに支払っていますが、支払をしなければ契約は解除されるため、生活ができなくなってしまいます。
そのため、生活に必要な支払いについては、偏頗行為には当たりません。

(2)スマホや携帯電話

スマホや携帯電話の料金についても、通話料や通信料については、生活に必要な支払いのため、偏頗弁済にはあたりません。
もっとも、スマホや携帯電話の本体料金を分割で支払っていたり、キャリア決済をして商品の購入代金を支払ったりすることは偏頗弁済に当たる可能性があるので、控えるようにしましょう。
スマホや携帯電話の利用料金と、本体の分割代金は、通常まとめて請求されることが多いです。
利用料金と分割代金の請求を分けられない場合は、別の携帯電話会社に乗り換えるなどの方法を検討する必要があります。

4 偏頗弁済を回避するには

(1) 知人、友人、親族への説明

偏頗弁済をしてしまうと免責許可が下りない可能性があり、破産者に不利益になります。
それだけでなく、偏頗弁済を受けた知人、友人、親族などは、後日破産管財人から弁済を受けた額の返還を求められる可能性があるため、偏頗弁済を受ける側にも迷惑がかかります。
そのため、知人、友人、親族などから返済を求められた場合は、返済ができない理由をしっかりと説明することが重要です。

(2) 第三者弁済

どうしても返済をしなければならない事情がある場合は、破産者以外の第三者が直接債権者に支払うことは可能です。
ただし、その第三者が支払った借金を後日破産者が支払うことは偏頗弁済となってしまうのでできません。

5 まとめ

以上のように、破産者が特定の債権者に対してのみ借金を返済することは破産者にとっても債権者にとっても不利益があります。
また、どこまでが偏頗弁済になるのかという点や家族や友人への説明が困難を要するケースもありますので、弁護士にご相談されることをおすすめします。


執筆者:弁護士 森本 禎

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