【総論】免責不許可事由とは?

2024/8/5

借金の返済が困難になった際の解決方法の一つとして、自己破産があります。
裁判所に自己破産を申し立て、免責の許可が下りれば、以後借金を返済する必要は無くなり、破産者は経済的に再生を果たすことができます。
もっとも、破産に至る事情や破産者の態度によっては、免責不許可事由に該当し、免責の許可が下りず、借金が残り続けてしまう可能性があります。
今回は、免責不許可事由の全体像と、免責不許可事由に該当する場合の対処法についてご紹介します。

1 免責不許可事由

免責不許可事由は破産法に規定されており、全部で以下の11パターンがあります。

(1)詐害目的での財産の不利益処分

債権者を害する目的で、財産を隠匿したり、破壊したり、廉価で売却するなどの処分行為が該当します。
債権者を害するという積極的な目的があることが必要なので、資金繰りのための廉価売却などはこれにあたらないとされています。

(2)不当な債務負担行為

破産手続の開始を遅らせる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担した場合や、信用取引で商品を購入して著しく不利益な条件で処分した場合などがこれに該当します。
例えば、既に債務の支払が不可能な状況を認識しつつ、破産を回避するために法外な条件で借り入れを続けたり、クレジットカードで購入した商品を換金したりすることなどがこれにあたります。

(3)不当な偏頗行為

特定の債権者に利益を与える目的や、他の債権者を害する目的で、特定の債権者への借金を返済したり、担保を提供したりする行為がこれにあたります。

(4)浪費または射幸行為

収入や資産に見合わない多額の商品購入やホストクラブなどでの遊興や飲食、パチンコや競馬などのギャンブルが原因で借金を重ねた場合がこれにあたります。

(5)詐術による信用取引

借金の返済が不可能であることを認識しながら、収入や他の借り入れの状況などの財産状態を偽って借り入れをした場合などがこれにあたります。

(6)帳簿隠匿等の行為

業務及び財産状況に関する帳簿類を隠滅、偽造または変造した場合は、破産手続の適正な遂行を妨げるものとして、免責不許可事由となります。

(7)虚偽の債権者名簿の提出

債権者名簿には、全ての債権者を記載することが義務付けられています。
これに反し、虚偽の債権者一覧表を提出した場合は、免責不許可事由に該当します。

(8)調査協力義務違反

破産者は、裁判所や破産管財人が行う調査に協力しなければなりません。
破産者が虚偽の説明をしたり、説明を拒絶したりすることは免責不許可事由となります。

(9)管財業務妨害行為

破産管財人等の職務を妨害する行為は免責不許可事由となります。
例えば、破産財団に属する財産の持ち出し、破産者が所有、占有する不動産の引渡しの拒絶、破産管財人等の調査対象者に対して威迫をするなどがこれにあたります。

(10)免責後7年以内の免責申立て等

以前の免責許可決定から7年以内に再度免責許可の申立をすることは、免責不許可事由となります。

(11)破産手続・免責手続上の義務違反行為

破産者が重要な財産を隠し、裁判所や破産管財人に開示しなかった場合、居住制限に違反した場合、免責手続きについての調査に協力しない場合はこれにあたります。

2 裁量免責とは

免責不許可事由に該当する場合であっても、全てが免責不許可となるわけではありません。
破産に至る経緯や、免責不許可事由の内容、程度、反省の有無等の一切の事情を考慮して、免責が相当と判断されると裁量免責となります。
免責不許可事由がある場合でも、多くの場合は裁量免責が認められています。

3 裁量免責が下りない場合の対処法

裁量免責も認められない可能性があるような場合は、自己破産以外の債務整理を検討する必要があります。
自己破産以外の債務整理の方法として、任意整理があります。
任意整理は、自己破産とは異なり、裁判所を介さず、私的に債権者と交渉して分割払いでの支払いの合意や利息の減額などを合意する手続です。
他にも、個人再生を申し立てる方法もあります。
個人再生は、債務を5分の1程度に圧縮して分割返済をしていく手続です。個人再生は自己破産と同じく裁判所を介する手続ですが、免責不許可事由の規定はないので利用を検討する余地があります。

4 おわりに

今回は、免責不許可事由についての全体像を簡単に説明しました。
免責不許可事由にあたるかの判断は難しいケースもあります。また、免責不許可事由に該当するとしても、破産申立後の対応によっては裁量免責が認められたり、自己破産以外の手段を選択することで債務整理ができる可能性がありますので、債務整理を検討中の方は弁護士に相談されることをおすすめします。
弊所では債務整理の初回相談は無料となりますので、是非ご相談ください。


執筆者:弁護士 森本 禎

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