自己破産したら、住宅ローンはどうなるの?

2023/8/17

 

借金が積み重なり、返済が困難になると、自己破産を検討せざるを得なくなります。
この場合、住宅ローンはどのように取り扱われるかについて、解説いたします。

1 住宅ローン債務は免責される

自己破産をすると、原則として借金は免責されます。
つまり、借金の返済が免除されます。住宅ローンも、借金であることに変わりはないので、返済する必要がなくなります。

2 住宅ローン担保物件の処分

自己破産すると、免責により住宅ローンは返済する必要がなくなりますが、住宅は住み続けることができなくなり、処分しなければなりません。

(1)破産申立前の処分

住宅ローンがある場合、住宅には、金融機関の抵当権が設定されています。
破産申立前であれば、金融機関の同意を得て、売却処分することができます。
売却代金はローンの返済に充てられます。
自己破産申立前に処分するのは、注意が必要です。
自己破産をすると、手持ちの財産は破産管財人によって債権者に公平に分配されることになります。
自己破産前に売却した金額が、適正な価格よりも低くなってしまうと、債権者に分配される財産もその分
低くなってしまうため、破産管財人によって売却が否認されたり、不当な財産処分として免責不許可事由の問題となるリスクがあります。
このようなリスクがあることから、破産申立前に安易に売却を行わない方が無難でしょう。

(2)破産申立後の処分

自己破産申立後の財産は、破産管財人が処分を行うのが原則です。
もっとも、住宅に抵当権が設定されている場合は、破産管財人ではなく、債権者が直接抵当権を実行して住宅を処分します。

(3)共有名義の住宅の場合

家族で共有名義の住宅を所有している場合も、住宅ローンが支払えなくなった者の持分は債権者により競売にかけられることになります。
共有名義人の持分は必ずしも手放す必要はありません。
もっとも、住宅の一部のみの競売になり、所有者が家族ではない者との共有状態になってしまうと、住宅の価値も下がってしまうので、同時に売却してしまうか、共有名義人が買い取る形になることが多いです。

3 住宅をどうしても手放したくない場合

自己破産を選択してしまうと、住宅は手放さざるを得ません。住宅を手放さずに債務整理を行う方法は、⑴任意整理をする、⑵個人再生をするという2つの方法があります。

(1)任意整理

任意整理とは、自己破産のように、裁判所を介することなく債権者と個別に交渉して月々の支払額を減らす手続です。
月々の支払額を収入で支払える範囲に減らすことで破産を回避し、住宅を手放さずに住み続けることができます。

(2)個人再生

個人再生とは、債務を5分の1程度に圧縮し、それを3年程度で分割して返済する手続です。
個人再生は任意整理と異なり、裁判所に申立を行います。
個人再生手続きには、住宅資金特別条項といって、住宅ローンの債務は減額せずに支払いを継続する代わりに、住宅を所有し続けられる制度があります。

4 自己破産後に住宅ローンを組む場合の注意点

自己破産をすると、これまであった借金は返済する必要がなくなります。
これを免責といいます。自己破産は免責を得られるというメリットがある反面、今後住宅ローンなどの借金をする際には注意が必要です。

(1)個人信用情報の事故情報掲載期間

自己破産をすると、その情報が信用情報機関に登録されます。
住宅ローンの審査を申し込むと、債権者は必ず信用情報機関で信用情報を確認するので、自己破産した履歴があると住宅ローンが通らない可能性があります。
一般に、信用情報機関に記録される期間は5年から10年間と言われています(信用情報機関によって異なります。)。

(2)借金が免除になった金融機関は避ける

信用情報機関に記録される期間は5年から10年間ですが、一度借金が免除された金融機関であれば、その後も独自のデータベースに過去の取引は記録されています。
そうすると、一度借金が免除された金融機関が再度貸してくれるケースは考えられないので、借り入れをする際は、借金が免除になった金融機関は避けた方が良いでしょう。

(3)複数の金融機関に申し込まない

金融機関に住宅ローンを申し込むと、信用情報機関に、ローン審査の情報が6か月間記録されます。
仮に住宅ローン審査に落ちてしまった場合は、その記録が残るということです。
そのような状況で、別の金融機関の住宅ローンの申し込みをしてしまうと、審査に落ちた記録を確認されてしまうため、更に審査に通りにくくなってしまいます。
したがって、複数の金融機関に申し込むのではなく、1つの金融機関で審査を否決された場合は、6か月以上あけてから別の金融機関に審査を申し込むのが良いでしょう。

(4)頭金の払い方

自己破産をした後の借り入れは、どうしても審査に落ちやすくなったり、借入金額が少なくなってしまうことが多くなります。
そこで、しっかり自己資金を確保したうえで、頭金を多く支払うことで、借り入れに多くを頼らない方法でローンを組むことをお勧めします。

(5)返済能力の証明

金融機関に返済能力を証明することも重要です。
クレジットカードや少額のローンを組み、返済期限を守ることによって、きちんと返済能力がある人物であることを証明します。
返済に遅れが無いということも信用情報機関に登録されますので、これを積み重ねることで返済能力があると判断されると、今後住宅ローンの審査も通りやすくなります。

5 まとめ

自己破産をした場合の住宅ローン物件がどのように取り扱われるかについて解説しました。
自己破産をすると、住宅は手放さなければなりませんが、家族が住宅を引き継ぐことも、将来再度住宅を所有することもできる可能性があります。
現在住宅を所有しており、お困りの方は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。


執筆者:弁護士 森本 禎

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