自己破産ってなにするの?どうなるの?

2023/4/26

「自己破産」という言葉は、新聞やテレビなどで一度は耳にしたことがあっても、具体的に自己破産とはどのようなもので、自己破産になるとどうなってしまうのかということはご存じない方も多いかと思います。
今回は、自己破産について解説いたします。

1自己破産とは?

まず、自己破産とは何か、どういう場合に自己破産ができるのかという点について解説いたします。

(1)自己破産とは

自己破産とは、債務の返済ができない破産状態であることを裁判所に申し立て、破産状態であることを認めてもらい、原則として債務の返済を免除してもらう手続のことです。
破産の申し立てを債権者などの第三者ではなく、ご自身で行うことから自己破産と呼びます。
また、債務の返済を免除してもらう手続のことを免責と呼びます。

(2)自己破産するための要件

自己破産を申し立てるためには、法律上要件が定められていますが、簡単に言うと、客観的に見て債務を支払うことが不可能な経済状態になっていることが必要です。

2自己破産手続きの種類と流れ

一言で自己破産といっても、2種類の手続があり、それぞれの手続ごとに流れや注意点が異なってきます。

(1)手続の種類

 ① 破産管財手続き

個人事業主の方の破産や、一定の財産(現預金が50万円以上、価値が20万円以上の資産)をお持ちの方の場合や、免責不許可事由がある場合などは、裁判所から選任された破産管財人の監督の元、財産の調査や免責不許可事由の有無の調査が行われます。

 ② 同時廃止手続き

上記の破産管財手続となるケースに該当しない場合は、財産も乏しく、目立った免責不許可事由もないことから、破産管財人が選任されず、財産の調査や免責不許可事由の有無の調査を行わないで、破産手続が終了します。
これを同時廃止手続きといいます。

(2)手続の流れ

 ① 破産管財手続き

破産管財手続きは、破産申立後、まずは破産管財人と面談をし、破産に至る経緯や免責上の問題点等についての問答を行います。
その後2~3か月後に、裁判所において、債権者集会が開催されます。
債権者集会では、裁判官、破産管財人、破産者、債権者が一堂に会し、破産手続の進捗状況について報告が行われます(多くの場合は、債権者は出席しません)。
債権者集会は事案によって複数回開催されることがあります。
債権者集会の終了後、免責許可の決定が裁判所よりなされます。

 ② 同時廃止手続き

同時廃止手続きについては、破産管財人が就任しないことから、破産管財人との面談や債権者集会は開催されません。
破産申立後、免責不許可事由が認められる場合は、免責審尋といって、裁判官と破産者が面談することになります。
その後、免責許可をしても問題ないと裁判所が判断すれば、免責許可決定がなされます。

(3)手続に際しての注意点

 ① 破産管財手続き

破産管財手続きは、破産手続中は、破産管財人が破産者の財産の有無を調査します。
その一環として、破産者の郵便物は破産管財人の事務所に転送され、内容を確認されます。
そのため、仕事で必要な書類や支払期限のある公共料金や携帯電話料金の払込票については、あらかじめ破産管財人に伝えておき、すぐに受け取るようにしましょう。
また、旅行や転居については、破産管財人の許可が必要になりますので、事前に申請が必要です。
申請をせずに旅行や転居をしてしまうと、免責が受けられない可能性があるので注意が必要です。

 ②同時廃止手続き

同時廃止手続きは、財産も乏しく、目立った免責不許可事由もないことから、破産管財人が選任されず、簡易な手続きで終了させる手続です。
もっとも、財産の存在が疑われる場合や、免責不許可事由に関する事情によっては、同時廃止手続きを申立てたとしても、裁判所の判断で破産管財手続きに移行することになります。
その際は、追加費用が必要になる点は注意が必要です。

3自己破産するとどうなるの?

自己破産をすることは様々なメリットがあります。
しかし、メリットばかりではなく、デメリットも存在します。

メリット(1)借金の返済義務を免れる

まず、自己破産の最大のメリットは、裁判所の免責許可により、借金の返済義務を免れるということが挙げられます。
借金の返済義務がなくなることにより、心機一転新たな生活を開始することができます。

メリット(2)債権者からの催告が止まる

約束通り借金の返済ができなくなると、債権者から連絡が来て精神的に苦しい思いをされている方も多いと思います。
自己破産を申し立てたり、申立の準備を弁護士に依頼して受任通知を送付すると、債権者からの連絡が止まるので、支払う必要もなくなりますし、精神的な負担も軽減されるメリットがあります。

メリット(3)最低限度の生活をおくるための財産は処分されない

自己破産手続きをすると、原則として債務者に残っている財産は債権者に分配されますが、全ての財産が奪われて分配されるわけではありません。
法律や裁判所のルールで決められた生活のための最低限の財産は処分されず、手元に残しておくことができるので、破産後の生活の心配は大きくありません。

デメリット(1)ブラックリストに載る

自己破産をして借金の返済をしなくてよくなるということは、債権者にとっては、借金を踏み倒されるということなので、債務者の経済的信用は失墜します。
自己破産をした情報は、金融機関や信用情報機関に登録され、破産後5年から10年程度は、ローンやクレジットカードの審査に通らない可能性があります。
このことをいわゆるブラックリストに載るといいます。

デメリット(2)20万円以上の価値のある財産や、99万より多く現金を持てない

自己破産のメリットとして、最低限度の生活をおくるための財産は処分されず、手元に残せるとお伝えしました。
逆にいうと、最低限度の生活を上回る財産は原則として保有することができません。
法律や裁判所のルールでは、20万円以上の価値のある財産や、99万を超える現金は、保有することができなくなります。

デメリット(3)保証人、連帯保証人に借金返済義務が移る。

自己破産をすると、債務者は借金の返済義務がなくなりますが、保証人や連帯保証人がいる場合は、保証人や連帯保証人が返済義務を負うことになります。
したがって、ご家族や友人などに保証人になってもらっている方は、ご家族や友人に迷惑をかけることになってしまいます。

デメリット他(官報に載る、一部職業、資格の就業規制)

他にも、自己破産をしたことは官報に掲載され、公表されます。

また、警備員や生命保険募集人などの一部の職業に就けなかったり、法人の取締役などになれなかったりする制限を受けることがあります。

4自己破産解決事例

当事務所のご依頼者様で、破産を申立て、解決した事例をご紹介いたします。

(1)Aさんの場合

法人の代表取締役で、法人の債務が8000万円以上、個人の債務が4000万円以上ありました。
一度任意整理をしましたが、コロナ禍の影響で財務状況が改善をせず、やむなく自己破産申立を行いました。

負債の原因が法人の経営悪化に伴うものであったため、免責不許可事由はありませんでしたが、通帳の取引履歴が多かったため、破産管財人への説明をしっかり行うことにより、最終的には全て債務が免除されました。

(2)Bさんの場合

債務が14社から1500万円以上ありました。
ネットワークビジネスへの投資をするという免責不許可事由に当たる行為がありましたが、反省文を提出してもらうことにより、裁量免責を得られ、最終的には全て債務が免除されました。

5まとめ

自己破産は、2種類の手続があり、それぞれの流れや注意すべき点、準備しなければならないことが異なります。
また、自己破産にはメリットとデメリットがあり、簡単に認められるものではありませんので、自己破産をすべきかどうかという点も含めて弁護士に相談されることをおすすめします。