顧問弁護士とは?顧問弁護士を就けておくことのメリット

2023/7/19

 

「顧問弁護士」という言葉を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
ですが、実際に何をしてくれるのか。
誰に頼めばいいのか。
顧問弁護士の役割とお勧めの選び方をご紹介します。

1 顧問弁護士とは

顧問弁護士とは、継続的な法律サービスを提供する契約を結んだ弁護士のことを指します。
このような契約を顧問契約または顧問弁護士契約といいます。
毎月定額の費用を支払うことで、法律相談や簡単な契約書のチェックなどを随時受けていただくことができます。

(1)顧問弁護士とインハウス・ローヤー

弁護士の職域拡大やキャリアプランの多様化と共に、企業が弁護士を従業員として雇用するという働き方が増えてきました。
このような弁護士は、「企業内弁護士」や「インハウス・ローヤー」と呼ばれます。
これと対比する形で、顧問弁護士のことを「外部弁護士」と表現することもあるようです。
顧問弁護士とインハウス・ローヤーでは、求められる役割も負う職務、職責も異なります。

・顧問弁護士

企業にとっての防波堤となる存在。
トラブルへの対応や、リーガルリサーチ、意見書の作成、計画されたプロジェクトの実現に向けた戦略の策定など、その企業内部にとどまらない知見を基にサービスの提供ができるのが特徴です。

・インハウス・ローヤー

企業内部のかかりつけ医のような存在。
位置付けは各企業によりますが、法務部が設置されている会社では、法務部に属し、会社のプロジェクトに関するリーガルチェックが主な業務になります。
株主総会の実施が必要な企業では、株主総会準備を主に法務部が担うこともあるようです。
基本的に、その会社の従業員ですので、会社によっては異動もあり得ます。

(2)ビジネスに顧問弁護士が必要な理由

ビジネスを行うに当たって、法律は切っても切れない関係です。
規制に従ったビジネスを営むことも、規制の合間を抜って新規のビジネスを営むことも、ビジネスとして成り立つのであれば双方とも正解です。
しかし、いずれの場合も、法律に対する正確な理解ができていることが前提となります。
商流を踏まえて契約書に落とし込んでいくのも顧問弁護士の役割です。契約書はビジネスの設計図でもありますので、商流を踏まえて権利義務関係を整えなければなりません。
また、どのように契約書を作り込んでも、ビジネスを行っていく上では、多かれ少なかれ、紛争になることもあります。
このようなときに、顧問弁護士がいれば、解決に向けた方法をすみやかに得ることができます。
法務部がある場合は、上記のような対応を内製化できるかもしれませんが、法務部がない場合はそうもいきません。
顧問弁護士は、法務部がない会社において、法務部の代替としても機能し得ます。

2 顧問弁護士の役割

顧問弁護士には大きく分けますと、(1)会社を守る、(2)会社内部の体制整備、(3)経営者の相談相手、という役割があります。

(1)会社を守る

会社が事業を行っていく上では、どうしても、何らかの利害の対立が生じることを避けられません。
取引先との契約について業務量と金額が合わない、契約上の期限を過ぎてしまう、取引先が倒産した、従業員同士でトラブルが発生した、業務上の事故で顧客や第三者が被害を被った、従業員が逮捕されてしまったなど、トラブルの例を挙げますと枚挙に暇がありません。
顧問弁護士がいれば、予め将来生じ得るトラブルを見通した上で、それを避けるための手段を講じることができますし、トラブルが起こった後でも、初動の段階でどのような問題があり、どのような見通しを持って動くことができるのか、早期に把握できます。

(2)会社内部の体制整備

会社は複数の人が集まる組織ですので、必然的に会社内部の体制整備をしないと、会社が組織としてうまく機能しません。
コンプライアンスの強化が唱えられて久しいですが、コンプライアンスも日常業務の中の行動に落とし込めないと意味がありません。
ルールだけを定めればよいわけではないということは、弁護士が日常的に紛争案件に取り組む中で感じていることであり、顧問弁護士は、法律上のルールとそれを実際の行動に落とし込む方法を行き来しながら体制整備を図ることができます。

(3)経営者の相談相手

経営者は孤独な存在です。
トラブルが予想されても、社内で相談できる者がいないということもよくあります。
顧問弁護士には守秘義務がありますので、たとえ社内の者に対してでも、相談内容を話すと社内紛争が勃発するような場合、社内の者に対しても秘密で経営者の相談に乗ることができます。
また、顧問弁護士は、どの専門家に相談をした方がよりよい解決に至るのかの目利きができる存在でもあります。
弁護士は、日常的に、トラブルを解決していくに当たって各専門家の力を借りており、物事の解決のために誰にどのような相談をすればよいのかを経験則的に知っているからです。
そのため、法律問題ではない場合でも、顧問弁護士に相談をすることで、物事の解決を図ることができます。

3 顧問弁護士の選び方

顧問弁護士はどのように選べばよいのでしょうか。
私たちの事務所では、次のようなポイントがあると思っています。

(1)企業の規模に対応できるか

顧問弁護士に相談をする際、企業の規模に対応できるのかどうかは重要なポイントです。
ここにいう「企業の規模に対応できるのか」は、法律事務所の人数がいればよいというものではありません。
といいますのも、顧問弁護士がご相談に対して回答をする場合、多くは、その方針決定のために重要な回答を行うことになります。
三国志に例えるならば、軍師・諸葛亮公明のようなポジションを顧問弁護士は担うことになるのです。
顧問弁護士側も船頭が多いと弁護士によって回答が異なる場合に時間を要してしまうことになり、顧問弁護士側のスピード感を上げようと思いますと、少数精鋭での対応が好ましくなります。
このことから、「企業の規模に対応できるか」というのは、企業の内外に対する想像力が働く弁護士であり、関係各所の調整を図る時間、労力、人数規模を想定しつつ、回答に対応できることを意味します。

(2)ビジネス・業界を理解できるか

1点目に関連しますが、顧問弁護士がビジネスやその業界のことをきちんと学んでおくというのは大事なポイントです。
ビジネスでは、各業界特有の慣行やビジネススキーム、売上予測があり、顧問弁護士はこれらを踏まえた回答が求められます。
もちろん、顧問弁護士自身がその企業で働いているわけではありませんので、企業側に教えを請わねばならないこともあるのですが、教えていただいた内容を基に、解決案を提示することが顧問弁護士には必要です。
その意味で、ビジネスやその業界について元々精通していることも必要ですが、たとえ最初は精通していない場合でも、顧問先から謙虚に教えを請い、自主的に業界のことを学ぶ姿勢のある弁護士は、その企業にとって優秀な顧問弁護士になると思われます。

(3)顧問サービスの内容

顧問サービスの内容も重要です。
顧問サービスの内容は事務所ごとに異なりますので、顧問契約の範囲内でどういった対応が可能なのかは、顧問契約を締結する前に確認しておくようにしましょう。

4 顧問弁護士を就けるメリット

(1)いつでも気軽に相談できる

顧問弁護士の最大のメリットは、事前予約がなくとも、電話やメール等で相談ができることです。
顧問契約がない場合は、法律相談のご予約を頂いて、ご予約日にお話を伺うというのが通常です。
しかし、顧問契約を締結しておけば、ご予約がなくとも、電話やメール等での相談が可能です(事務所によりますが、少なくとも弊所では顧問先に対しては、電話、メール、SNSを用いたご相談に、平日・休日を問わず、対応しています。)

(2)予防法務でトラブルに強くなる

顧問弁護士がいると、ビジネスを始める前や契約を締結する前にアドバイスを気軽に受けることができます。
顧問弁護士でなくとも、これらのアドバイスを受けることは可能ですが、多くの場合、新しいビジネスを始める前や契約締結前のアドバイスは一度で終わりません。
そのため、継続的にアドバイスを受けられる体制を整えておいた方が、トラブルを予防できるといえるでしょう。

(3)自社の問題点について事前に指摘を受け、改善できる

顧問弁護士は経営者から様々な相談を受けます。
その中で、社内に問題があることもしばしば見受けられます。
こういった相談に対する回答は、1回限りでのご相談では適切な回答が難しいことも多く、継続的な相談対応が必要となることがよくあります。
こういったときに顧問契約を締結しておけば、継続的な法律相談が受けられます。

(4)常に最新の法改正情報を得られる

法改正の情報も、自分ではなかなか時間を割いて調査するということが難しくとも、顧問弁護士がいれば顧問弁護士に最新の法改正情報を調べさせることができます。

(5)リーガルコストの削減

顧問弁護士に早期に相談をすることができる体制を整えておけば、紛争が健在化した場合でも、解決方針を早期に見定めることが可能です。
顧問弁護士にアドバイスを受けながら自分たちで解決することができれば、個別案件について弁護士に支払う費用を抑えることもできます。

5 顧問料の相場

顧問料は、一般的には5万円(税別)以上としている事務所が多いように思います。
もちろん、規模が小さく、相談量もそこまで見込まれないという企業の場合はこれ以下のこともあるでしょうし、逆に、規模が大きく、相談料も多い企業の場合はこれ以上のこともあります。
顧問料だけでなく、その顧問料でどういった業務までが可能なのかも大切なポイントですので、顧問契約を検討される場合は、顧問契約で対応可能な範囲についても確認した方がよいでしょう。

6 まとめ

今回は、顧問弁護士の意義とメリットについてご説明しました。
弊所では、大阪はもちろんのこと、北は北海道、南は沖縄まで、顧問対応をさせていただいております。
昨今のWeb環境を前提としますと、遠方であっても打合せは可能ですので、顧問弁護士が必ずしも近場の弁護士でなければならないということもありません。
顧問弁護士を検討される場合は、本記事に記載しているようなポイントにご留意されてください。


執筆者:弁護士 隅田 唯

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