【事業者必見!】キャッシュレス決済の手数料を顧客に負担させることは違法?

2021/10/13

近年、QRコード決済の登場により、キャッシュレス化の動きが加速しています。
経済産業省も、キャッシュレス決済を推進しており、キャッシュレス決済を導入する事業者が増えています。
キャッシュレス決済といえば、かつては百貨店、家電量販店、ホテル等でのクレジット決済が主流でしたが、最近は個人経営の店舗でもQRコード決済ができるようになってきました。
キャッシュレス決済は、顧客にとっては、現金を持ち歩かなくてもよい、決済でポイントが貯まるなどのメリットがあり、事業者にとっては、現金取り扱いの時間短縮、外国人観光客の需要の取り込みなどのメリットがあります。
他方で、事業者がキャッシュレス決済を利用すると、決済ごとに手数料が発生することが一般的です。事業者の中には、手数料の負担を抑えるため、決済手数料を顧客負担としていたり、ランチではキャッシュレス決済ができないようにする店舗も散見されます。
もっとも、キャッシュレス決済の手数料を顧客に負担させることは以下のような問題があるので注意が必要です。

1 決済手数料を顧客に負担させることは違法?

決済手数料を顧客に負担させることについて、現在、明示的に禁止している法律はありません。
したがって、よほど大きな上乗せであるなどの特殊事情がない限りは違法となるわけではないと考えられます。

2 利用規約に違反する可能性

もっとも、キャッシュレス決済事業者と加盟店との間の利用規約では、加盟店が、キャッシュレス決済を希望する顧客に対し、その利用を拒絶することや、決済手数料を請求することを禁じていることが一般的です。

(1)QRコード決済事業者の場合

例えば、QRコード決済で最もユーザーが多いPayPayでは、「PayPayの利用を希望するPayPayユーザーに対してPayPayを利用した取引を拒絶すること、異なる決済手段による支払いを要求することまたは異なる方法で商品等代金を決済すること」や、「PayPayを利用するPayPayユーザーに対し、商品等代金以外の金銭の支払いを請求すること」が禁止されています(PayPay加盟店規約第4条第3項)。
また、PayPay残高加盟店規約においても、「正当な理由なく利用者とのPayPay残高取引を拒絶したり、現金その他の支払手段による決済を要求したり、現金その他の支払手段による場合と異なる代価を請求する等、PayPay残高取引によらない一般の顧客よりも不利となる差別的な取扱いをする行為」が禁止されています(PayPay残高加盟店規約第18条第1項(1))。
したがって、加盟店が設定する条件に合わない取引の際にキャッシュレス決済の利用を拒否したり、決済手数料を上乗せして請求することは利用規約に違反します。
利用規約に違反した場合は、その加盟店がQRコード決済サービスを利用停止させられる可能性があります(PayPay加盟店規約第32条第1項(1))。

(2)クレジットカード事業者の場合

クレジットカード事業者の場合も同様です。
楽天カード加盟店規約によると、「加盟店は、有効なカードを提示した会員に対し信用販売等の取扱いを拒絶したり、また、現金払いを要求したり、会員に対し現金客と異なる代金を請求する等会員の利益の保護に欠ける取扱いを行わないものとします。」(第6条第4項)とされており、違反した場合は事業者と加盟店との契約を解除される可能性があります(第39条第1項⑷)。

3 まとめ

キャッシュレス決済の手数料を顧客に負担させることは、法律に触れるわけではありませんが、キャッシュレス決済事業者と加盟店との間の利用規約に違反する可能性があります。
利用規約に違反した場合、キャッシュレス決済が利用停止になり、顧客が不便を感じ、結果的に売り上げに悪影響が出てしまう可能性も否定できません。
したがって、決済手数料を顧客に負担させることはすべきではないということになります。


執筆者:弁護士 森本 禎

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