事業のためにお金を集める方法と難しさ

2020/3/3

 

みなさん、こんにちは。
瀧井です。
今日は、事業のためにお金を集める方法と、その難しさについてお話したいと思います。

1 法律的に正しくお金を集める

事業を大きく、または迅速に発展させるには、お金を集めることは必要不可欠といってもいいでしょう。
ただ、今回は「お金を集める」といっても、経営的な意味ではなく、主に、「法律的に正しくお金を集める」ことの難しさについてのお話になります。
ここでピンとくる方は多くはないでしょう。「お金を集める」ことと「法律」がどう関係するのか、少し詳しい方でしたら、「金銭消費貸借契約の何が難しいんだ?」と思われるかもしれません。
お金を集める手段はたくさんあります。会社で働いてお給料をもらう、商品やサービスを提供してお客さんからお金をもらう、知人や金融機関から借りる、出資を受ける、銀行強盗をする、詐欺をする、あたりでしょうか。銀行強盗や詐欺は犯罪ですので、絶対にやめましょう。
今回は、このうち、「出資」に関する法律のお話になります。ここでいう「出資」とは、「事業に資本を出捐・投下すること」をいい、「投資」とほぼほぼ同義であると考えていただいても結構です。

2 出資(投資)に関する法律

弊所では、出資(投資)をした方からのご相談だけでなく、出資をしてもらおうとする事業者様からご相談・ご依頼をいただくことも多く、都度、この分野の法規制の難しさを感じております。
出資関連の法律で頻出なものとしては、

(1)民法

(2)会社法

(3)出資法

(4)利息制限法

(5)金融商品取引法

(6)資金決済法

(7)特定商取引法

(8)消費者契約法

(9)刑法

等があります。個別の事案によってはもっと色々出てくるのですが、頻出となるとこんな感じでしょうか。
それぞれについて概説していきます。

(1)民法

民法は、お金をあげたり貸したりする際のベースとなる法律です。また、出したお金を、騙されたことや勘違いを理由に返して欲しいときにも使うこともあります。

(2)会社法

社債を発行したり合同会社社員権スキームを構築したりする際などに使います。これらについては、後日【別記事】にて解説させていただきます。

(3)出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)

様々な内容の規制を行っている法律なのですが、同法が禁じている元本保証や預り金に該当しないかや、金利について判断する際に用います。

(4)利息制限法

金銭消費貸借における利息や遅延損害金の利率を一定限度に制限する法律です。

(5)金融商品取引法

投資を募る場合、金融商品(有価証券や、有価証券に近い性質を有する権利)を販売するという建付けになることが多いです。
そうなると、金融商品取引業の取得をしなければなりません。無許可で販売すると、氏名(社名)が公表されたり、逮捕されたり刑事罰を受けることもあります。
そのため、そもそも金融商品取引業の登録が必要なのかから精査しなければなりません。どのような目的で、どのようなスキームを用いて、どのような行為をするか。それによって、登録が必要かどうかや、その中身が変わってきます。
たとえば、弊所では、第二種金融商品取引業についての検討が多いです。第二種金融商品取引業ひとつとってみても、自ら売買をするのか、売買を媒介するのか、資産運用をするのか、投資の助言をするのかなど、幅広い分野に及んでいます。
そして、一定の条件のもと、第二種金融商品取引業が必要のないパターンも存在します。
第二種金融商品取引業についても、後日【別記事】にて解説させていただきます。

(6)資金決済法

暗号資産(仮想通貨)についてや、前払式支払手段、資金移動業について規制をしています。
電子マネー、暗号資産といった、現代的なご相談の際には真っ先に検討すべき法律となります。

(7)特定商取引法

出資の勧誘が、通信販売や訪問販売に該当するパターンが多いです。
これらに該当すると、各々別個の規制を受けます。
特に、クーリングオフが広く認められるなど訪問販売の規制はとても厳しいので、慎重な検討が必要です。
そして、一般的なイメージ以上に、訪問販売の範囲は広いです。
この法律に違反すると、氏名(社名)が公表されたり、逮捕されたり刑事罰を受けることもあります。

(8)消費者契約法

一方当事者が「事業者」で、他方当事者が「消費者」に該当する場合には、この法律により、消費者に有利となることがあります。

(9)刑法

出資案件は、詐欺や(業務上)横領と結びつきやすいです。
仮に法律上犯罪に該当しなかったとしても、出資してもらったお金を約束通り返せなかったりした場合には、大きなトラブルとなることが多々あります。

以上のように、「法律的に正しくお金を集める」には、極めて多様かつ難しい法律の検討が必要になり、また、仮に法律的に正しい集め方をしても、(金額や期限など)正しい返し方をしないと、大きなトラブルを招いてしまいます。
特に、お金を広く集めるのであれば、相当な覚悟をもって臨まなければなりません。
これからお金を集めようと考えている方は、まずは、金融関連法務に詳しい弁護士にご相談のうえ、そのリスクを正しく理解してください。そして、専門家の知識・知恵等を借りながら、慎重にお金を集めてください。

3 さいごに

最後に、何よりも大事なのは、集めたお金を何に使うかです。
弊所といたしましては、世の中をより良くするという目的のために一生懸命な方にご相談に来ていただきたいと思っております。


執筆者:弁護士 瀧井 喜博

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