配偶者の借金を理由にして、離婚できる?

2023/5/16

 

配偶者が借金を重ねている場合、今後の生活が不安になりますよね。
解決方法として離婚も選択肢に入ってくることでしょう。
また、離婚以外にも、借金を減らす方法もあります。
今回は、借金を理由に離婚できるか、離婚せずに借金を減らして生活を立て直すにはどうすればよいかという点についてお答えいたします。

1 方法によって難易度が異なる

離婚の方法としては、(1)協議離婚、(2)調停離婚、(3)離婚裁判の3つが挙げられます。
そして、各方法によって、難易度が異なります。

(1)協議離婚

協議離婚とは、夫婦同士の話合いによって、離婚をする方法です。
夫婦間で協議離婚による解決ができれば、早期かつ簡易に離婚をすることが可能です。
しかし、協議離婚は夫婦双方が離婚することや離婚の条件に合意しなければならないので、お互い感情的になり冷静な話し合いができなかったり、離婚することや条件の折り合いがつかなければ協議離婚は成立しません。

(2)調停離婚

調停離婚とは、家庭裁判所に離婚調停を申立て、家庭裁判所での話し合いによって、離婚をする方法です。
離婚調停では、調停委員が夫婦の間に入り、夫婦間の話合いの調整を行います。
離婚調停は1~2か月に1回程度の開催になるので、解決までには時間がかかります。
また、調停委員に言い分を理解してもらうための書面作成や証拠の準備が必要になるため、協議離婚よりも手間がかかります。
調停委員が間に入って調整をするため、協議離婚よりも話し合いがまとまりやすくなることもありますが、あくまで話し合いによる合意のため、双方が合意しなければ調停離婚は成立しません。

(3)離婚裁判

裁判離婚とは、離婚訴訟を提起し、判決によって離婚する方法です。
離婚訴訟をするためには、前提として離婚調停を行い、調停で解決に至っていないことが必要です。
離婚訴訟は、話し合いによる解決ができない場合に、裁判所の判断によって離婚するか否かを判断します。
裁判は、証拠に基づいて民法に定められた離婚原因があるか、離婚の条件はどのようにすべきかが判断されるので、協議離婚や調停離婚に比べて難易度が高く、離婚原因が無ければ離婚が認められないことになります。
配偶者に借金があるという事情は、借金により生活費を支払わないなどの事情があれば「悪意の遺棄」、その他ギャンブルなどの浪費がある場合は「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性があります。
しかし、このような事情が法律上の離婚原因に当たるかは個別の事案によって違ってくるので、なるべく協議離婚や調停離婚での解決を目指すことが望ましいでしょう。

2 子どもの養育費はどうなる?

離婚をすると、子供の養育費を請求できます。
養育費を請求する権利は強力で、自己破産をしても支払義務は免除されません。
相手方が調停や裁判で決まった養育費の支払いをしない場合は、強制執行をすることができます。

3 借金の返済義務はどうなる?

一方配偶者の借金の返済義務は、原則として他方の配偶者に返済義務はありません。
もっとも、借金の内容によっては返済しなければならない場合があります。

(1)【原則】返済義務は発生しない

配偶者の借金は、配偶者と金融機関などの債権者との契約によって負ったものなので、返済義務があるのは配偶者本人です。
そのため、原則として借金の返済をする義務はありません。

(2)返済義務が生じるケース

配偶者名義の借金であっても、返済義務があるケースがあります。
1つめは、生活費のための借金の場合は、法律上「日常家事債務」に該当する可能性があります。
日常家事債務に該当すれば、夫婦が連帯して責任を負うものとされるので、返済義務が生じます。
2つめは、配偶者の借金の保証人になっている場合です。
この場合は、ご自身も債権者との間で保証契約を締結しているので、離婚をしても保証人として返済義務を負うことになります。

(3)借金をした配偶者が離婚後に亡くなった場合子供に返済義務が生じるケースも

配偶者が負った借金の返済義務は原則として生じないと述べましたが、その場合でも、配偶者が死亡した際に子供が返済義務を負うことがあります。
離婚すると、夫婦は法律上家族ではなくなりますが、親子関係は存続します。
そして、配偶者が死亡した場合は、子供が相続人になります。
相続が発生すると、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産である借金も相続することになり、借金の返済義務が子供に相続されます。
これを回避するには、相続を放棄し、全ての財産を相続しない手続をするか、財産を清算し、プラスの財産が生じた場合のみ相続をする限定承認による相続を選択する必要があります。

4 慰謝料はもらえる?その相場は?

配偶者の借金が原因での離婚については、それだけでは慰謝料が発生しないことがあります。
もっとも、借金の他に、生活費を一切負担しなかったり、不貞やDV行為があった等の事情を総合的に判断して、慰謝料が認められる可能性はあります。
また、法的に慰謝料が発生しないケースでも、協議離婚や調停離婚の話合いの際に、慰謝料に相当する一定の解決金を支払う合意をすることもありますので、諦めてはいけません。
慰謝料が認められる場合の相場は、個別の事情にもよりますが、50万円から300万円程度とされます。
話し合いでの解決の場合は、相場にとらわれない柔軟な解決が可能です。

5 借金を減額する方法も:債務整理とは?

以上は、配偶者に借金がある場合に離婚ができるかということについて述べましたが、離婚の方法以外に、借金を減らして生活をやり直すという方法も可能です。
借金を減らす主な方法は、以下の3つの方法があります。

(1)任意整理

任意整理とは、債権者と個別に交渉して、月々の支払金額を減額する手続のことをいいます。
月々の支払額を減らすことができることと、合意時点で支払いの総額を決めることが多いので、将来の利息が発生しないことになり、結果的に支払総額を減らすことができます。

(2)個人再生

個人再生は、借金を全額支払えない債務者が、裁判所に再生計画の認可を受けて、借金を減額してもらう制度です。
減額された借金は3年程で返済をしていくことになります。
後述の自己破産手続は、住宅などの手持ちの財産は全て手放してお金に代えて債権者に分配しなければなりませんが、個人再生手続には、住宅ローンがあっても、住宅資金特別条項といって、住宅ローンの返済を継続することで、住宅を手放さずに借金の減額が可能になります。

(3)自己破産

自己破産手続は、借金を全額支払えない債務者が、裁判所に申し立てることにより、借金を返さなくてよくなる手続です。
どうしても借金が返せない場合の手段ですが、借金を返さなくてよくなる半面、手持ちの財産は、生活に必要な最低限度の分を残して債権者に分配しなければならなくなったり、破産手続中は一定の職業に就けなくなったりというデメリットも存在します。

6 まとめ

今回は、配偶者の借金を理由にして、離婚できるか、借金を減らす手段はどのようなものがあるかについてお伝えしました。
配偶者の借金は不貞や暴力などのように必ずしも離婚原因にはならないケースや、離婚しても支払義務が生じるケースもあります。
また、借金の減額についても主に3種類の手段があり、どれを選択するかは置かれている状況によって検討しなければなりません。
これらをご自身で検討するのは容易ではありませんので、弁護士にご相談されることをおすすめします。


執筆者:弁護士 森本 禎

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