離婚原因とその証拠
2023/7/25
配偶者が離婚に応じてくれない、お互い離婚したいけど条件が整わない等、離婚協議が難航することも多いと思います。
双方の主張が食い違えば、交渉から離婚調停、最終的には離婚訴訟に発展することもあり、自身に有利に進めるためには、自身の主張を支える「証拠」が重要となります。
具体的に、どのような「証拠」が必要か、証拠の集め方はどうすればよいのか等、今回ご紹介いたします。
1 証拠集めの必要性
離婚で双方の主張が食い違う場合、夫婦のみが見聞きした内容であることが多く、どちらの言い分が正しいのか分からないことが大半です。
そこでどちらの主張が正しいのか判断するには、第三者の目からみても「あ、この事実はあったんだろうな」と思う証拠が必要となります。
(1)離婚が有利に進む
訴訟に進まなければ、証拠は必要ないのでしょうか。
いいえ違います。
交渉段階から証拠を持っている方が、有利に協議を進めることが可能となります。
例えば、相手方の不倫を追及する場合、何も証拠がなければ相手方は否定したままでしょう。
この点、不倫を示す証拠(不倫相手とホテルに入る写真等)があれば、相手方は言い逃れ出来なくなります。
このように証拠があれば、訴訟となった場合、証拠に基づく主張が認められる可能性が高くなることから、相手方としても強く否定することができなくなり、交渉を進めやすくなります。
(2)「やっぱりなかったことに」を言わせない
夫婦二人で話し合った際には不貞の事実を認めたにもかかわらず、その後、両親を交えた話し合いの場では、不貞を完全に否定する、そんな場面がよく見られます。
このように、最初は相手方が認めたことであっても、その後、態度を翻すことは往々にして起こります。
そのような場合であっても、最初の話し合いの際に録音しておく等、証拠を残しておけば、相手方も態度を翻しにくくなります。
このように交渉の際にも、証拠を残しておくことが重要となります。
2 証拠集めにおける大事なポイント
では、証拠集めにはどのような点、気を付けたらいいのでしょうか。
(1)チャンスを逃がさない
離婚を考えだしたら、まずは証拠集めからスタートしましょう。
証拠は日々の生活にあります。
例えば、夫が他の女性とやり取りしていると思われるLINE、メール等があればその場で写真を撮ったり、夫から暴言を言われた際に携帯電話等で録音、暴力を振るわれ怪我を負った場合はすぐに負傷部分を写真撮影し、病院で診断書を取得、友人にLINE等で相談し、相談内容を文字として残る形で保存する、といった方法があります。
また、夫婦間で話し合う場合は、録音をしておくことをお勧めいたします。
普段の生活で録音等、慣れないことから躊躇される方も多いかもしれません。
しかし、離婚に向けて有利に交渉を進めるためにも、チャンスを逃さないことが大事です。
(2)お金に関するものはコピーや写真を残す
離婚協議において、財産分与が問題となることが大半です。
いざ財産分与をする際、配偶者がどのような財産を持っているのか分からなければ、請求しようにもできない場合もあります。
そのため、離婚を考えだした段階で、自宅にある預金通帳、保険証書、家の権利証、配偶者の給与明細、有価証券(株等)、財産に関するものすべてを把握しておきましょう。
全てコピーや写真を撮り、ご自身で整理しておくと後々の交渉の際に利用しやすくなります。
また、プラスの財産だけでなく、ローンや借り入れ等の情報も重要です。
自宅のローン残高、カード等の使用履歴、借用書等、お金にまつわるものは、全てコピーして保存しておきましょう。
(3)日記をつける
録音や写真撮影等の他、日々どのようなことが起こったのか記した日記も重要な証拠になることがあります。
日記は証拠となるだけでなく、不安な気持ちの整理にもつながります。
簡単なメモ書きでもいいので、毎日コツコツと日記をつけてみてください。
3 集めるべき証拠とは
では、それぞれの離婚原因に応じて、どのような証拠が必要となるのでしょうか。
(1)不倫の場合
-
メール、LINE、電話の着発信履歴
不倫相手とのメールやLINEに、性行為を示す内容が記載されていることもあります。
携帯電話の頻繁な発着信も、親密な関係を示す間接的な証拠となります。
配偶者の携帯電話等に不審な履歴があれば、画像に撮る等、証拠として保存しておきましょう。
-
写真や動画
写真や動画は、確実性の高い証拠となります。
配偶者と不倫相手がラブホテルに入る写真があれば、不倫について言い逃れ出来なくなるでしょう。
携帯電話に保存された二人の写真等があれば、写真を撮る等、保存しておいてください。
-
レシート・領収書
不倫相手と食事やホテルに行った際のレシート、領収書も証拠の一つとなります。
但し、誰と行ったのか具体的な事実は分からないことから、レシート・領収書等だけで不倫の立証は困難です。
写真や録音等、他の証拠と併せて証明することが必要となります。
-
車のドライブレコーダー、カーナビの履歴
不倫相手と車で出かける場合もあります。
最近のドライブレコーダーには車内の様子を撮影したり、音声を保存しているものもあります。
またカーナビには走行履歴が保存されることもあります。
-
音声(録音)
携帯電話やICレコーダーにより音声を録音することも有効です。
例えば、配偶者を問い詰めて不倫の事実を認めさせた際の音声を録音しておけば、不倫を示す証拠の一つとなり得ます。
(2)DV、モラハラなどのハラスメント系
-
写真・動画
DVを受けている様子を撮影した動画があれば、証拠に使えます。
いつDVを受けるか分からないことから、自宅でパソコンや携帯電話で撮影しておくのもいいでしょう。
また、DVにより怪我を負った場合は、すぐに自身の携帯電話などで写真を撮っておきましょう。
-
録音
動画・画像でなくても、配偶者の怒鳴り声や、暴力をふるった際の音を録音することで、DVを示す証拠となり得ます。
日頃から携帯電話の録音機能をすぐに使える状態にする等、いつでも録音できる状態にしておきましょう。
-
日記・メモ
日頃から詳細に、どのような暴力・暴言を受けたのか書き溜めていくことも、DV、モラハラの証拠となります。
日記帳でなくても、手帳やメモ書き、LINEのノート機能等でも大丈夫です。
日頃からコツコツと記すことが重要ですので、簡単でもいいので毎日積み重ねていきましょう。
-
医師の診断書
DV被害を受けて怪我をした場合や、精神的に疲弊した場合等には、病院を受診し、医師の診断書を取得してもよいでしょう。
なお医師には守秘義務があることから、事実を隠す必要はありません。
配偶者からDVを受けたことをそのままお話下さい。
(3)財産分与をする場合
財産分与を求めるにあたり、次のような資料を集めておきましょう。
-
預貯金通帳、取引履歴(定期預金もお忘れなく)
-
保険証書(火災保険、医療保険、生命保険、学資保険、種類は問いません)
-
不動産の契約書、ローン残高や固定資産税等記載した書類等
-
車検証、車の売買契約書、車のローン残高が記載された書類
-
給与明細、確定申告書の資料(確定拠出型年金等を行っている場合もあります)
-
退職金に関する資料
-
投資をしている場合(暗号資産、FX、株式等)、残高や取引会社に関する資料
4 まとめ
このように、離婚の交渉段階から、有利に交渉するには証拠が重要となります。
実際には協議を開始すると、相手方は警戒し証拠を隠すことも多く、場合によってはせっかく集めた証拠を消されることもあります。
そのため、離婚協議を始める前に、どのような証拠を集めるべきか、どのように証拠を保存しておくべきか等、弁護士のアドバイスを受けておくことを強くお勧めいたします。
これまで様々な離婚問題を解決してきた瀧井総合法律事務所だからこそ、交渉を有利に進めるための証拠集めから解決に至るまでしっかりとサポートいたします。
離婚にお悩みの方は是非ご相談ください。
執筆者:弁護士 稲生 貴子
▽そのほか、離婚に関する記事をお読みになりたい方はこちらから。
離婚関連記事