共同養育について

2022/10/21

 

代表弁護士の瀧井です。
離婚後、子育てをする親は一般に「シングルマザー」や「シングルファーザー」と呼ばれ、ひとりで子育てをしている家庭が多いのが実情です。
しかし、子どもの心身の健全な発達のためには、仮に離婚をしても父母の双方が子育てに関与するのが理想ですよね。
そこで、本稿では今すぐにでも取り組める「共同養育」という方法についてお話したいと思います。
私も離婚を経験していますので、その経験も踏まえてお伝えできれば幸いです。 

1 共同養育とは

共同養育とは、父母が離婚後も引き続き共同して子育てをしていくことです。
親権は単独親権、共同親権であるかを問いません。
共同養育は、特別なルールが存在しているわけではなく、各家庭の状況に応じてさまざまな取り入れ方がされています。
例えば、1週間のうち1日だけを父親または母親の家で過ごすパターンや、父母の家を隔週で行き来するパターンなど、さまざまな方法があるようです。
面会交流との違いを考えると、面会交流は基本的に月に1度、数時間一緒に過ごすことが多いです。
これに対し、共同養育は、その面会交流の頻度が高く、もしくは、一度に過ごす時間が長い状態というように考えると分かりやすいと思います。

2 共同親権とは

共同養育と似た言葉である「共同親権」についてご説明します。
まず、親権とは、未成年の子を監護教育するために、子の父母に認められた権利義務のことをいいます。
たとえば、子ども名義の預貯金を管理したり、子どものアルバイトの労働契約締結などの同意をしたり、子どもの居住所を指定したり、しつける権利などが挙げられます。
共同親権とは、父母の双方が子どもに対する親権を有する制度のことをいいます。
父母の婚姻中は父母の双方が親権者とされており、共同親権となっています。
これに対し、離婚後は父母のうち一方を親権者と定めることとされており、いわゆる単独親権となっています。

3 共同養育のメリットとデメリット

 (1)メリット

・子どもにさまざまな体験をさせることができる。

離婚後、親権者である親とだけで生活していくよりも、もう一方の親との交流もある生活の方が、よりたくさんの体験をさせてあげられます。
例えば、母親の方がおままごとを一緒にするのが上手だったり、ママ友親子と一緒にグループで子どもを遊ばせることができたりします。
一方、一般的には、父親の方が虫取りをしたり、公園で遊ぶ体力があると思います。
もちろん例外はありますが、父母それぞれが得意、不得意な育児がそれぞれありますよね。
父母が補完しあって育児をすることで、子どもは片親と生活する場合よりも、たくさんの体験をすることができ、心身の健全な発達にいい影響を与えることができると考えられます。

・父母同士が少し距離を置くことで、冷静に話し合えるようになる。

夫婦であったとき、特に前後は、父母同士で落ち着いて話し合うこともできない、できなかったという方は多いと思います。
私もそうです。
とくに親権者となった方は面会交流をさせたくないとまでは思わなくても、相手への負の感情から関わりたくないとお考えの方もいらっしゃると思います。
それでも、月日が経ち、距離を置くことで、元配偶者と冷静に話し合えるようになる方は多いです。
むしろ、婚姻中よりも、いい距離感を保って育児ができているという家庭も少なくないようです。

・子どもとの面会中は自分の時間を作ることもできる。

ひとりで育児をするとなると、仕事と両立しなければなりません。
育児と仕事で忙殺され、息抜きをする暇など無く、イライラしてしまい、子どもに当たってしまうこともあると思います。
子どもは親の様子を敏感に察知するため、親の顔色をうかがって生活するようになり、親子ともにストレスを感じながら生活することになってしまいます。
そこで、共同養育を取り入れれば、子どもが別居親と面会交流している間に、自分の時間を作ることができるため、気分転換ができ、日々の育児と仕事にも余裕を持って取り組むことができます。

・子どもが同居親の前で、別居親の話をしやすくなる。

子どもが別居親に会えていない場合、子どもは同居親の様子を敏感に感じ取り、同居親が嫌がりそうな別居親の話を避ける場合があります。
たとえ、別居親に会いたいと思っても、同居親の機嫌を気にしたり、養ってもらっている同居親に嫌われないように別居親のことを話題にしないようにしたりします。
共同養育を取り入れると、子どもは同居親の前で、別居親の話をしやすくなり、同居親と子どもの間での会話が増えると考えられます。

・養育費が支払われやすくなる。

共同養育によって、別居親が子どもと頻繁に会うことで、養育費を支払うモチベーションにつながるという効果が期待できます。

(2)デメリット

・子どもが二重生活を嫌がる可能性がある。

共同養育は、子どもが父母の家を行き来するため、移動すること自体や移動距離が子どもの負担になる可能性があります。
例えば、「今週末は友達と遊びに行きたいから別居親の家に行きたくない」や、「部活で疲れたからゆっくり休みたい」等といった事情から父母の家を行き来することが困難な場合もあると思います。
このような状況においては、夕食時だけ一緒に過ごしたり、交流日を翌週にずらす等の工夫をして、子どもの生活に配慮した柔軟な対応をしてあげましょう。

・遠方への引っ越しをしにくくなる。

共同養育は、子どもが父母の家を行き来することで行われるため、その前提として、父母の家がある程度、近所にあることが必要です。
しかし、例えば、仕事による転勤などで父母のどちらかの家が遠方に引っ越すことになれば、両家の行き来は気軽にできなくなります。
その場合は、夏休みや冬休み等の長期休暇に一緒に過ごす時間を作るなどの工夫をして、調整することが大切です。

・DVやモラハラが離婚理由だと暴力、暴言が継続する可能性がある。

離婚原因がDVやモラハラの場合、共同養育を取り入れるのは難しいかもしれません。
子どものためとはいえ、離婚後も相手に連絡先や住所が知れてしまうと、暴力や暴言が離婚後も継続し、子どもにも被害が及ぶおそれがあります。
そのような状況でも、面会交流をしたいと考える場合は、第三者機関のサポートを受けて、安全に面会交流を行えるようにすることが子どもの心身の健全な発達のために非常に重要です。

(3)メリットであり、デメリットでもあること

ステップマザー、ステップファザーがいる場合において、共同養育を取り入れると、子どもは、父母だけでなく、ステップマザーやステップファザーとの交流もすることで、より多くの体験をすることができ、さまざまな角度からのものごとの考え方などを学ぶ機会となりえます。
多種多様な教育を受けることができ、3人からの愛情を受けられていると実感できる点は、メリットであるといえます。
一方で、たとえばステップマザーやステップファザーと別居親が明らかに不仲である場合、共同養育を取り入れると、かえって子どもは親たちの様子をうかがって気を遣い、別居親に会うのを控えようとしたりする可能性もあります。
子どもの精神的な面のケアを忘れずにしてあげることが大切です。

4 共同養育を上手に取り入れるコツ

 (1)子どもを自分の所有物と思わない。

子どもは自分の所有物ではないと分かっているつもりでも、子どもを自分の所有物かのように捉えてしまう方もいるのが実情です。
そのような考え方ですと、「元配偶者は悪い人だから自分は会いたくない。子どももそう思っているはず。」というように、子どもは自分と同じ気持ちであり、自分の言う事を聞くのが当たり前だと思いこんでしまいます。
子どもは心の中では、別居親に会いたいと思っているかもしれません。
親子であっても、親と子どもは別の人間ですので、子どもには子どもの意思があることを認識することが大切です。

(2)相手の悪口を子どもの前で言わない。

離婚した父母は、お互いに憎みあっている場合も少なくないと思います。
そのような状況では、相手に対する愚痴や非難の言葉をつい子どもに聞かせてしまうこともあるかもしれません。
しかし、父母同士は離婚しても、子どもにとっての親であることには変わりありません。自分の親を悪く言われると大人でも気分が悪いですよね。
とくに子どもは精神的に未熟ですので、一方的な悪口を信じ込み、別居親との関わりを拒絶するようになるかもしれません。
また、同居親から嫌われたくないため、聞かされる悪口に同意するふりをしたりするなど、精神的に追い詰めることにも繋がりかねません。
どうしても悪口を言いたくなるときは、紙に書き出してみたりする等の工夫をしてみてください。
書き出した紙をぐちゃっと丸めて捨てたり、びりびり破って捨てると意外とすっきりするのでおすすめです。

(3)父母同士お互いに適切な距離感を維持する。

共同養育は、必ずしも父母同士が直接会う必要はなく、メールやLINEでのやり取りで済ませるのもひとつの方法です。
子どものために、「面会交流をしてあげたいけど、元配偶者と直接会うと喧嘩してしまう」等の理由から直接会いたくないという方もいるのではないでしょうか。
このような場合に、メールやLINEで面会交流の日程や送り迎えの時間だけ決めて、父母は直接会わないという方法で共同養育を取り入れているご家庭もあります。
各ご家庭の状況に合わせて共同養育を上手に取り入れてみるのはいかがでしょうか。
私が理事を務めさせていただいているNPO法人関連会社でも、面会交流の支援を行っていますので、ご興味がある方は検討してみるのもいいかもしれません。

5 まとめ

弊所では、離婚や面会交流調停、養育費の請求を含む男女問題に関する案件を、2019年から2021年までの3年間で、200件程度受任しています。
離婚を決意されている方だけでなく、離婚をする時期で悩まれている方やそもそも離婚するべきか悩んでいる方、離婚を拒否したいという方にも複数お問い合わせいただいております。
また、医師や士業の先生方、経営者といった、種々の配慮が必要となる職業の方からのご相談も数多く受けております。
お電話やメールはもちろん、LINE(24時間受付中)でも受け付けておりますので、是非お気軽にお問合せいただけたらと思います。


執筆者:弁護士 瀧井 喜博

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