国会で審議中の「共同親権」について

2024/3/21

1 はじめに

離婚にあたり、子の親権をめぐって争うことも少なくありません。
そんな中、日本において導入が検討されていた「共同親権」等に関して、令和6年3月8日に通常国会に民法の改正案が提出されました(法務省https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00348.html)。
国会に提出された法案では、共同親権の他、法定養育費制度が新設されたり、父母以外の者も一定条件のもと面会交流権を主張可能とされたりする等、多数の改正が提案されています。
本コラムでは、これらの改正のうち、共同親権について解説いたします。

2 現行法での親権について

現在の民法では親権者は、

■婚姻期間中には父母ともに親権者(共同親権)

■離婚の際に、父母のいずれかを親権者に指定(単独親権)

とされ、離婚により単独親権となり、一方当事者は離婚後親権者ではなくなります。

3 改正民法案について(令和6年3月8日国会提出)

世界各国における法制度や、離婚に伴う子の養育への影響、子育て等の多様化等を踏まえて、日本においても親権の在り方等を見直す議論が長期にわたって行われ、ようやく改正案が国会審議に入ることとなりました。
主な改正点は次の通りです。

■ 離婚後の単独親権・共同親権の決め方

① 離婚協議の際に、共同親権とするか、単独親権とするのか、父母が決める。

② 共同親権か、単独親権か、父母の協議で定まらない場合は、父母の請求により、家庭裁判所が判断する。
なお、家庭裁判所が判断する際には、子の利益のため、父母と子の関係、その他の一切の事情を考慮しなければならない。
ア、イのいずれかに該当するときは、父母の一方を親権者と決めなければならない。

ア 父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき

イ 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受ける恐れの有無等から、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき

と定め、離婚後必ず共同親権となるとは限らず、あくまでも単独親権か共同親権か、選択肢が増えることとなります。

4 既に離婚し単独親権となっている場合

改正法施行前に離婚が成立し単独親権となっている場合であっても、共同親権への変更申立てが可能となります。
そのため既に離婚が成立し単独親権となっている場合であっても法改正の影響を受ける可能性があります。

5 さいごに

離婚後、単独親権となり、親権者でなくなった親が子に会えなくなるケースもあることから、共同親権が選択可能となることを評価する声がある一方、DV被害を受けている人が共同親権を配偶者から強要され、子の利益を害する恐れがあるとして、共同親権導入に反対する声もあり、共同親権に対する考えは様々です。
なお、改正案では「2年以内に施行」と規定されており、改正案が国会で可決されても直ちに共同親権の選択ができるようになるわけではありません。
今国会で法律案が成立するのか、成立後の施行状況も併せて確認し、随時こちらのコラムでご紹介したいと思います。