後遺障害逸失利益とは~交通事故の後遺障害によって収入が減少した場合~
2019/6/7
こんにちは。
これから、ホームページの記事において、継続的に、交通事故の基本的なテーマについてご紹介しようと思います。
今回は、「後遺障害逸失利益」についてです。
1 後遺障害逸失利益とは
後遺障害とは、交通事故により傷害を負ったとき、治療を継続してもこれ以上症状が改善する見込みがない状態(症状固定)になったあとに残った精神的・身体的な毀損状況をいいます。
そして、後遺障害が残ったことにより仕事に支障を来し、稼働力が下がったり、仕事に行けなくなったりしたような場合、後遺障害がなければ得られたはずの収入が失われてしまいます。
このような、被害者が、後遺障害があるために失った、将来にわたり得られるはずであった利益のことを「後遺障害逸失利益」といいます。
2 後遺障害逸失利益の算定方法
後遺障害逸失利益を算定する計算式は、
基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
です。
もっとも、症状固定時18歳未満の者については、通常、就労の始期が18歳とされており、それまでは金銭的な利益は発生していないと考えられることから、
基礎収入額×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)
となります。
たとえば、35歳会社員が交通事故に遭った場合を考えてみましょう。
事故前の年収は、500万円であり、後遺障害等級10級に該当したと判断されたとします。
この場合、
基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
500万円×27%×32年(15.8027)=2133万3645円
が、後遺障害逸失利益となります。
計算式のそれぞれの項目がどのようなものであるかを説明すると、以下のようになります。
(1)基礎収入額とは
基礎収入には、通常、被害者の現実の収入や賃金センサスの平均賃金を用いることが多いですが、どのような収入を得ている者であるかにより、実際になにを基礎収入とするかは個別具体的に検討する必要があります。
たとえば、給与所得者の場合は、原則として交通事故に遭う前年度の給与年額(賞与を含む)を基準とします。また、自営業者などの事業所得者の場合は、交通事故に遭う前年度の申告所得を基準とすることが多いです。
(2)労働能力喪失率とは
労働能力喪失率とは、労働能力の低下の程度のことを指します。
労働能力の低下の程度は、「自動車損害賠償保障法施行令別表第二」を参考としており、裁判例も、この表の数値によったものが多数です。
もっとも、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位、程度、事故前後の稼働状況を考慮して、この表の喪失率と異なる喪失割合が認定されることもあります。
(3)労働能力喪失期間とは
労働能力喪失期間の始期は、症状固定日とされ、未就労者の場合には、原則18歳(大学卒業を前提とする場合は大学卒業時)とされます。
終期については、原則満67歳とされていますが、高齢者の場合など、事案によっては期間に応じた喪失率の逓減を認めることもあり、職種、地位、健康状態、能力等によって異なる判断がされる場合があります。
(4)ライプニッツ係数とは
逸失利益の請求は、長期間にわたって発生する収入減少による損害を、一時金で受け取るため、将来の利息分(中間利息)を差し引き計算することにより、将来の利益を現在の価値に換算する必要があります。
言い換えると、もらったお金を運用すれば、利息が付いて増えるのですから、現在請求できる額は、将来もらえるはずの金額から、それまでの利息を控除した金額ということになります。
そして、この中間利息を控除するために使う数値が、ライプニッツ係数です。
3 おわりに
今回は、後遺障害逸失利益の意味や、計算方法について説明させていただきました。
具体的な金額など、イメージしづらかったかもしれませんが、実際にはこのような方法で算定されています。
交通事故に遭われた方で、後遺障害逸失利益を請求できるのか、できるとしていくらになるのかなど、疑問に思われたときは、是非弊所にご相談ください。
交通事故被害に関する相談の場合、弊所では、初回相談料は無料となっております。
執筆者:弁護士 森本 禎
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