交通事故の通院~頻度は?いくらもらえるの?~

2023/9/8

今回は、交通事故に遭い、怪我をしてしまった場合、病院への通院はどのような頻度ですべきか、通院の頻度によって獲得できる慰謝料の額に違いがあるのかなどについて解説いたします。
なお、本記事で述べる通院の頻度は、あくまで適正な損害賠償を獲得するという見地からのものであり、医学的な見地での通院の頻度については主治医の指示に従ってください。

1通院頻度の目安

まず、通院の頻度については誤解が多く、注意が必要です。

(1)毎日通院したら慰謝料が増えるってホント?

慰謝料は、特に、後述の弁護士基準に基づけば、毎日通院すればするほど多くもらえるわけではありません。

(2)通院の目安は「3日に1回」

通院の頻度については、それぞれの症状に応じて違ってきますので、主治医とご相談ください。
慰謝料を獲得するという観点での通院の目安としては、3日に1回程度(週2回程度)が理想的です。

(3)毎日通院することのリスク

主治医の指示がなく、必要もないのに毎日通院していると、治療費を支払う任意保険会社から早期に治療費の支払いが打ち切られるリスクが高くなり、結果的に少額の慰謝料しか得られない可能性があります。

2通院頻度以外の注意点

通院に際し注意すべき点は通院の頻度だけではありません。
適切な損害賠償金の獲得のためには、以下の点にも注意が必要です。

(1)治療、リハビリ内容

通院頻度が適切であっても、毎回同じような治療やリハビリを漫然と継続していたり、痛み止めの湿布や薬を処方されているだけである場合などは、もはや通院の必要が無かったり、余分な治療とみなされ、治療費の支払いが打ち切られたり、慰謝料が減額される根拠になることがあります。

(2)整骨院への通院

交通事故の治療は、原則として整形外科で行うようにしましょう。
整骨院への通院は、交通事故の治療にあたっては副次的な扱いとなります。
したがって、整骨院への通院が必ず損害賠償として認められるわけではありません。
整骨院への通院は、①主治医の了承を得る、②主治医に了承を得たことを保険会社に連絡する、③整骨院に通院中も定期的に病院にも通院する、という点に注意して行うことがポイントです。

(3)治療費の打ち切り

任意保険会社による治療費の対応は被害者が通院を続ける限りずっとなされるものではありません。
たとえば、むち打ち症の場合であれば、事故から3か月程度で治療費の打ち切りを告げられることがあります。
治療費の打ち切りを告げられた際に、まだ痛みやしびれなどの症状がのこっているにもかかわらず通院をやめてしまうと、適切な治療を受けられないだけでなく、慰謝料の金額も低額になってしまいます。
そこで、任意保険会社から治療費の打ち切りがあった場合は、主治医に治療を継続すべきか確認し、医師に意見書を書いてもらうなどして、治療費打ち切りの延長を交渉するようにしましょう。
それでも治療費を打ち切られた場合は、健康保険を利用して自費で通院したうえで、示談交渉時に支払の請求をするなどの方法で、通院を継続することも検討してください。

(4)自己判断での休業

交通事故による負傷で休業を余儀なくされた場合は休業損害が認められます。
もっとも、痛みがあるからと言って、自己判断で休業すると、休業損害としては認められない可能性があります。
休業損害が認められるためには、通院のため仕事を休まなければならない事情があったり、医師から休業の指示を受けるなどの事情が必要です。

3慰謝料額を最大限もらうには?

慰謝料を最大限受け取るためには、以下の点に注意が必要です。

(1)「弁護士基準」で慰謝料算定

まず、損害賠償の算定基準は高い基準で算定する必要があります。
損害賠償の算定基準は、自賠責保険の基準、任意保険会社独自の基準、弁護士基準の3種類の基準があります。
このうち、弁護士基準は、裁判所で認定される基準に従って算出するため、最も高額な基準になります。
もっとも、ご自身で弁護士基準に基づいて算出をしても、任意保険会社は請求に応じないことが多いので、弁護士に依頼することをお勧めします。

(2)後遺症が残った場合は後遺障害認定!

通院を継続しても、症状が改善しない場合は、後遺障害が残存している可能性があります。
その場合は、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
そして、認定を受けた等級に応じて、慰謝料や逸失利益(後遺障害により労働能力が喪失したことにより失われる給与相当額)を追加で請求することができます。

(3)慰謝料以外の費目に漏れがないか確認

交通事故の損害は、治療費や慰謝料以外にも、通院交通費、休業損害、逸失利益、物損など、様々な費目があります。
これらの損害費目に漏れが無いよう、きちんと請求するようにしましょう。

4具体的にいくらくらいもらえるの?

慰謝料の算定基準は、自賠責保険基準、任意保険の基準、弁護士基準があるとお伝えしました。
それでは、具体的にどれくらい通院すればどのくらいの慰謝料が獲得できるかについて見ていきましょう。
なお、弁護士基準については、大阪地方裁判所での基準を前提にしています。

(1)1カ月通院した場合

 ①自賠責保険

自賠責基準では、実通院日数の2倍の日数と通院期間を比較して短い方の日数に4300円を掛けた金額が慰謝料額となります。
通院1か月の場合、実通院日数が16日とすると、通院期間は最大で31日になるため、31日×4300円=13万3300円となります。

 ②任意保険基準

任意保険基準は、任意保険会社独自の基準であるため、保険会社により算定方法は異なります。
自賠責保険の基準を下回ることはありませんが、実質的には自賠責保険の基準と同額か少し上回る程度になることが多いです。

 ③弁護士基準

弁護士基準は、怪我の内容と通院期間によって慰謝料の金額が変わってきます。
通院1か月の場合、むち打ち症や打撲などの軽傷であれば18万円、骨折などの傷害の場合は27万円、重傷の場合は34万円程度になります。

(2)3カ月通院した場合

 ①自賠責基準

実通院日数が40日、通院期間が90日とすると、慰謝料額は80日(40日×2)×4300円=34万4000円となります。

 ②任意保険基準

自賠責保険の基準を下回ることはありませんが、実質的には自賠責保険の基準と同額か少し上回る程度になることが多いです。

 ③弁護士基準

通院3か月の場合、むち打ち症や打撲などの軽傷であれば48万円、骨折などの傷害の場合は72万円、重傷の場合は90万円程度になります。

(3)半年通院した場合

 ①自賠責基準

実通院日数が60日、通院期間が180日とすると、慰謝料額は120日(60日×2)×4300円=51万6000円となります。

 ②任意保険基準

自賠責保険の基準を下回ることはありませんが、実質的には自賠責保険の基準と同額か少し上回る程度になることが多いです。

 ③弁護士基準

通院6か月の場合、むち打ち症や打撲などの軽傷であれば80万円、骨折などの傷害の場合は120万円、重傷の場合は150万円程度になります。

(4)1年通院した場合

 ①自賠責基準

実通院日数が120日、通院期間が365日とすると、慰謝料額は360日(120日×2)×4300円=154万8000円となります。
もっとも、自賠責保険は、損害賠償額の上限が120万円まで(後遺障害認定分を除く)となるので、慰謝料は全額受け取ることができません。

 ②任意保険基準

自賠責保険の基準を下回ることはありませんが、実質的には自賠責保険の基準と同額か少し上回る程度になることが多いです。

 ③弁護士基準

通院1年の場合、むち打ち症や打撲などの軽傷であれば110万円(ただし軽傷の場合は1年間の通院が損害として認められない可能性が高いです。)、骨折などの傷害の場合は166万円、重傷の場合は208万円程度になります。

(5)後遺障害慰謝料

後遺傷害慰謝料は、後遺障害等級によって違ってきます。
等級ごとの慰謝料(弁護士基準に基づくもの)は以下のとおりです。

5慰謝料はどのタイミングでもらえるの?

通院慰謝料は、原則として通院期間に応じて算出します。
したがって、通院期間が確定するのは通院終了時なので、通院終了後のタイミングでもらえることになります。
後遺障害慰謝料については、後遺障害等級認定を受け、等級が確定した段階でもらえることになります。

6まとめ

以上のように、通院にあたっては注意する点がたくさんあり、通院の仕方や慰謝料の算出の仕方によって獲得できる慰謝料の金額に違いがあることがわかります。
弁護士に依頼すれば、通院のやり方に対するアドバイスを受けることができます。
また、慰謝料の算定もなるべく有利な金額で算出し、高い金額で示談できるように交渉することができますので、弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士費用特約が付帯された保険に加入している場合は相談や依頼にかかる費用は掛からないことが多いので、ぜひ相談してみてください。