交通事故で後遺障害が残ってしまったら

2023/8/7

交通事故で負傷し、医療機関で治療を続けたものの、改善せず後遺障害が残ってしまうことがあります。
今回は、交通事故により後遺障害が残ってしまった場合について、後遺障害の認定の手続の仕組みや、認定された場合の賠償について解説いたします。

1後遺障害とは

後遺障害とは、症状固定後も残存している症状のことをいいます。
症状固定とは、治療を継続してもこれ以上の症状の改善が期待されない状態のことをいいます。
例えば、交通事故で失明し、治療をしても視力が回復しなくなったり、骨折により治療をしても歩行が困難になってしまった場合は後遺障害となります。

後遺症と後遺障害の違い

治療をしても完治せず、症状が残存することを一般的には後遺症といいますが、後遺症と後遺障害とは、厳密には異なります。
後遺障害とは、損害料率算出機構の後遺障害等級認定が認められるか、裁判所の判決による認定を受けた後遺症のことをいいます。
後遺症が残っていたとしても、認定されないものは、後遺障害とはなりません。

2「後遺障害等級認定」を受けるメリット

後遺障害等級認定を受けると、後遺障害慰謝料や後遺症逸失利益の請求ができるなど、損害賠償額を増額できるというメリットがあります。

(1)後遺障害慰謝料の請求ができる

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残存したことによる精神的苦痛に対する賠償のことをいいます。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じて違っていて、等級が重くなるほど慰謝料額も高くなります。
また、慰謝料の算定方法も、以下のように、基準によっても金額が異なります。

  Ⅰ 自賠責基準

自賠責基準とは、自賠責保険から保険金が支払われる際に算定する基準です。
慰謝料の金額は後遺障害等級によって違っていて、一番重い第1級であれば最高1650万円、一番軽い等級である第14級であれば32万円となります。
自賠責保険は、最低限の損害を補填する趣旨の保険なので、慰謝料の金額としては次に述べる裁判所基準よりも低額になります。

  Ⅱ裁判所基準

裁判所基準とは、裁判をした場合に裁判所が認定する慰謝料の基準です。
裁判所基準は自賠責保険よりも高額になります。
弁護士が相手方と交渉をする場合も、この裁判所基準を前提に交渉することになります。
裁判所基準は、後遺障害等級や管轄の裁判所によって違っていて、一番重い第1級であれば最高2800万円、一番軽い等級である第14級であれば110万円(大阪地方裁判所の場合)となり、自賠責基準と比べて大幅に異なっています。

(2)逸失利益の請求ができる

後遺障害慰謝料の他、逸失利益も請求できます。
後遺障害が残存することで、労働能力が低下し、収入が下がることが予想されます。
逸失利益とは、後遺障害によって収入が下がると想定される分の損害のことをいいます。
逸失利益の具体的な算定方法については、以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

後遺障害逸失利益とは~交通事故の後遺障害によって収入が減少した場合~

(3)賠償金増額

このように、後遺障害が認定されると、怪我による損害賠償に加えて、後遺障害慰謝料、逸失利益が請求できるので、獲得できる損害賠償額が増加することになります。

3後遺障害認定の仕組みと認定確率

後遺障害は、損害料率算出機構という自賠責保険の支払内容を調査する機関において、後遺障害等級認定を受ける必要があります。

(1)基本的に書類審査で判断される

後遺障害等級認定は、損害料率算出機構に対して、これまでの検査記録や後遺障害診断書などの書類を提出し、書面による審査で判断されます。

(2)認定される確率は約5%!

書類を揃えて提出すれば必ず後遺障害が認定されるわけではなりません。
一般に後遺障害が認定される確率は5%程度とされており、簡単に認定がされていないのが現状です。
したがって、少しでも認定確率を高めるためにも、十分な書類の準備をしておくことが肝要です。

4後遺障害認定が認定される条件とは?

後遺障害が認定されるためには、以下のような条件が揃っている必要があります。

(1)症状と交通事故との関連性

前提として、残存している症状が、交通事故と関係していることが必要です。
自賠責保険や事故の相手方への損害賠償請求は、交通事故による被害者の損害を賠償するためのものです。
したがって、例えば持病によって元々生じていた症状や、加齢による症状については、交通事故によって生じた症状とは言えないので、交通事故の後遺障害とは認められないことになります。

(2)継続的に、一貫性をもって症状があらわれているか

症状に継続性かつ一貫性があることも重要です。
例えば、寒い日や雨の日だけ痛みがあるという場合は、症状が継続的ではないため、後遺障害とは認められない可能性があります。
また、交通事故当初は訴えていないにもかかわらず、交通事故からしばらくたってから訴えだした症状については、一貫性がなく、事故との関係が疑われるため、後遺障害とは認められない可能性があります。

(3)症状の有無や程度等を医学的に証明できるか

後遺障害が認められるためには、自覚症状の裏付けとなる医学的な検査結果が明らかになっている必要があります。
例えば、自覚症状の原因がレントゲンやMRIなどの画像検査によって異常が明らかになっていれば、後遺障害が認定される可能性が高くなります。
逆に、自覚症状はあっても、その裏付けとなる検査結果が十分でない場合は認定されないことがあります。

(4)後遺障害等級の認定基準を満たしているか

後遺障害等級については、各等級ごとに認定基準があります。
損害料率算出機構はこの認定基準に基づいて後遺症の有無及び等級を判断します。
認定基準にない障害の場合でも、認定基準と同等の傷害と認められる場合は等級相当として認定を受けることができます。

(5)治療期間が適切か、生活や仕事に影響しているか

後遺障害の認定にあたっては、治療期間も考慮されます。
治療期間が短期間であれば、まだ治療によって回復する余地があり、症状固定に至っていないと判断される可能性があります。
症状にもよりますが、痛みやしびれなどの神経障害であれば、一般的に6か月以上は通院する必要があります。
また、日常生活や仕事にどの程度影響があるかという点も認定に当たって考慮されます。

5後遺障害認定の手続き(被害者請求)

後遺障害等級認定の手続は、症状固定後、被害者が病院で検査を受け、必要書類を準備したうえで、自賠責保険会社に申立を行います。
以下具体的な流れを見ていきましょう。

(1)医師から「症状固定」の診断を受ける

まずは、後遺障害等級認定の申請をする前提として、治療をしても症状の改善が見込めない状態である症状固定になる必要があります。
症状固定の時期は主治医に確認し、症状固定となれば、後遺症の有無及び程度に関する検査をし、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。

(2)必要な書類を集めて加害者の自賠責保険会社に提出

後遺障害診断書以外にも、交通事故証明書、請求者の印鑑証明書、損害賠償額支払請求書、事故発生状況報告書、診断書・診療報酬明細書などの必要書類を準備し、窓口となる加害者の自賠責保険会社に提出します。
必要者書類の詳細や、記載すべき書類の雛型などは自賠責保険会社に問い合わせれば入手することができます。

(3)自賠責保険会社が、書類を損害保険料算出機構に提出

書類を受け取った自賠責保険会社は、そのまま後遺障害等級認定をするわけではありません。
必要書類は自賠責保険会社を通じて損害料率算出機構に送付されます。

(4)損害保険料率算出機構で審査が行われ、その結果が通知される

損害保険料率算出機構で審査が行われます。
審査は概ね1か月程度かかり、審査結果は書面で通知されます。

(5)結果に納得がいかない場合、異議申立

後遺障害等級認定がなされた場合は、自賠責保険の基準に従った後遺障害慰謝料と逸失利益が被害者に支払われます。
認定がなされなかったり、想定よりも低い等級が認定され、結果に納得がいかない場合は、異議申立てをして再審査を請求することができます。
異議申し立てに回数制限は無く、何度でも申し立てることが可能です。

6事前認定とは

後遺障害等級認定の申請を被害者が行う方法以外にも、事前認定という方法があります。
事前認定とは、加害者側に任意保険会社がある場合に、任意保険会社を通じて後遺障害認定の申請をしてもらう手続です。
事前認定は、被害者が後遺障害診断書を提出すれば、その他の必要書類は加害者側の任意保険会社が準備して自賠責保険会社に提出します。
事前認定は、被害者が準備する書類が少なくて済むので、準備の負担が少ないというメリットがあります。
しかし、被害者側で書類を準備しないので、追加で有利な資料の提出などができず、納得のいく等級認定が受けられない可能性があるというデメリットもあります。

7まとめ

今回は、交通事故で後遺障害が残ってしまった場合の対処方法について解説しました。
後遺障害は申請にあたり準備することも多く、申請したとしても必ずしも認められるものではありません。
また、有利な認定を受けるためには、医学的な知識も必要になりますので、ご自身で納得のいく等級の認定を受けるのは大変です。
そこで、手続を弁護士に依頼をすれば、手続を代理で任せることができますし、その後の示談交渉もまとめて依頼することができます。
弁護士費用特約に加入している場合は弁護士費用の負担なく弁護士に依頼することができるので利用されることをお勧めします。