2024年4月の労働法改正~労働条件明示のルール~
2024/3/7
労働基準法において、使用者は、労働者に対し、労働契約の締結時点において、労働条件を明示しなければならないと定められています。
令和6年4月より、これらのうち書面の交付による明示を要するものについて、内容の変更が行われます。
労働条件の明示にあたっては、どの労働者に対し、どのような内容を明示すべきか、という視点が重要です。
では、その内容を順にみていきましょう。
1 期間の定めのない労働契約を締結する場合
期間の定めのない労働契約を締結する場合には、その対象となる労働者に対し、書面の交付により、次の労働条件を明示しなければなりません。
1 労働契約の期間に関する事項
2 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
3 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇に関する事項
4 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項
5 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
【変更点①】「就業場所及び従事する業務の変更の範囲」の追加
令和6年4月より、明示すべき労働条件に「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」が追加されました。
変更の範囲とは、将来の配置転換によって変更が予想される就業場所・業務の範囲を指します。正社員の場合は特に想定が難しいものですが、変更の範囲はなるべく広く記載し、就業規則における配置転換に関する規則を記載しておくことが望ましいと言えます。
2 期間の定めのある労働契約を締結する場合
期間の定めのある労働契約を締結する場合には、その対象となる労働者に対し、書面の交付により、次の労働条件を明示しなければなりません。
1 労働契約の期間に関する事項
2 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)
3 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
4 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇に関する事項
5 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項
6 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
【変更点②】「通算契約期間または更新回数の上限」の追加
令和6年4月より、明示すべき労働条件のうち契約の更新に関するものについて「通算契約期間または更新回数の上限」が追加されました。
また、最初の契約締結後に更新の上限を新設する場合、最初の契約締結の際に設けた通算契約期間を短縮する、または更新回数の上限を減少させる場合には、更新上限の明示に加えて、それら新設・短縮・減少の理由を詳細に説明することが求められます。
3 期間の定めのある労働契約を締結する場合であって、その契約期間内に労働者が期間の定めのない労働契約の締結の申込みができる場合
期間の定めのある労働契約を締結する場合であって、その契約期間内に、労働者が期間の定めのない労働契約の締結の申込みができる場合には、その対象となる労働者に対し、書面の交付により、2,の場合に明示を要する労働条件に加えて、次の事項を明示しなければなりません。
7 使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをすることができる旨
8 7の申込みに係る期間の定めのない労働契約について
a 労働契約の期間に関する事項
b 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
c 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇に関する事項
d 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項
e 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
【変更点③】「期間の定めのない労働契約の締結の申込ができる旨」の追加
通算契約期間が5年を超える労働者は、使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをすることができます。
労働者が当該申込みをしたときは、使用者はそれを承諾したものとみなされます。
無期労働契約の締結の申込みができる有期労働契約労働者に対しては、当該申込みができる旨を明示しなければなりません。
【変更点④】「期間の定めのない労働契約に関する労働条件」の追加
労働者が期間の定めのない労働契約の締結の申込みをした場合、その申込みに係る期間の定めのない労働契約について、その労働条件を明示しなければなりません。
明示すべき労働条件の具体的な内容は1,の場合と同様です。
4 最後に
今回は、書面の交付による明示を要する労働条件について、改正点を踏まえながら述べてまいりました。
労働条件の明示にあたっては、どの時点で、どの労働者に対し、どのような方法により、何を明示すべきか、の4点を正確に把握することが肝心です。
特に期間の定めのある労働契約を締結する場合には、当該労働者が期間の定めのない労働契約の締結の申込みができる者か否かにより、明示すべき事項が異なります。
使用者側の皆様には、労働条件通知書の記載事項の見直しとともに、有期労働契約労働者の契約期間を今一度確認なさるようお勧めいたします。
今回の改正の背景や改正点全体についてはこちらの記事でご紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
労働関連の法改正に関する最新情報と影響~2024年4月以降の変更点~
監修者:弁護士 稲生 貴子
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