任意整理と自己破産の違い~どちらを選ぶべき?~

2023/6/7

 

「借金で首が回らない」「借金を返す資産はあるけれども、毎月の返済額を用意できない」
借金(友人、知人、消費者金融からの借入れ、クレジットカードのキャッシングローン、ショッピングローンなど)に悩んでしまった場合でも、置かれた状況は人によりさまざまです。
弁護士が関与する借金問題の対応方法は、大きく分けて、任意整理と法的整理に分かれます。
今回は、任意整理と、法的整理の中でも特に自己破産との違いについて、ご説明します。

1 任意整理と自己破産の違い

任意整理と自己破産には様々な違いがあります。
まず、それらの違いについて説明します。

(1)一番の違いは「裁判所」を利用するか否か

一番の違いは、裁判所が関与するかどうかです。
任意整理は、あくまで、債権者と話合いの上で解決を目指すものです。
この場合、裁判所は関与しません。
一方、自己破産は、破産法に基づいて借金問題を解決していく手続であり、裁判所が関与することになります。

(2)借金の返済を続ける必要があるかどうか

任意整理の場合、多くは、借金の返済を続けていくことになります。
任意整理では、月々の支払額を見直し、改めて返済スケジュールを組み立てることになります。
自己破産の場合は、「免責」という決定を得ることができれば、例外を除き、借金の返済を行う必要はありません。

(3)弁護士費用やコストの違い

任意整理と自己破産では、必要となる費用も異なってきます。
任意整理では、債権者の数だけ和解をしていかなければなりませんので、弊所の場合、債権者数に応じて弁護士費用が変わります。
自己破産の場合は、裁判所に申し立てる手続のため、見込まれる業務量や債権者の数、個人か法人かの違いなどによって弁護士費用が変わります。
また、自己破産の場合、弁護士費用とは別で、裁判所に予納金を納めなければならない場合があります。

(4)資格に対する影響の違い

任意整理の場合、法的には自己破産などの事情がないため、資格への影響は基本的にありません。
一方、自己破産の場合、資格によっては、破産手続中は資格が制限される場合があります。
弁護士の場合ですと、裁判所による破産手続開始の決定を受けてから、復権(破産手続が終了したり、免責を受けた場合などです。)するまでの間、弁護士となる資格を有しないとして(弁護士法7条4号)、弁護士としての活動ができなくなります。

(5)手持ちの財産に対する影響の違い

任意整理の場合、自分が持っている財産は自分の判断で自由に処分することができます。
借金の返済のために、必ず財産を売却しなければならないということもありません。
もちろん、返済が前提となりますので、返済資金が工面できない場合は、資産の売却が必要となりますが、これはあくまで任意のことで、法的に強制されているわけではありません。
自己破産の場合は、任意整理と異なり、一定の財産以外は、債権者に対する配当のために手放さなければならなくなります。
手元に残せるのは、破産法上、当然に手元に残してよいとされている財産と、裁判所に認めてもらって手元に残しておくことが認められる財産です(破産法34条3項、4項)。
当然に手元に残しておいてよいとされている財産は、民事執行法による差押えが禁止されている財産を指し、例として、99万円以下の現金などがあります。
大阪地裁では、これを参考に、一定の財産について手元に残す決定をする基準を設けています。

2 任意整理と自己破産、どちらを選ぶ?

任意整理と自己破産では、手続中の状況も、解決したときの状況も異なります。
では、どちらの解決の方が好ましいのでしょうか。
そのことについて説明します。

(1)任意整理が向いている人

任意整理が向いている人は、一言でいうと、自己破産を行うと不利益がある人です。
返済スケジュールを見直せば、借金の返済が可能であり、99万円を超える財産を持っている人や、資格を用いた仕事に就いているため、自己破産を行うと仕事ができなくなる可能性がある人などが挙げられます。
また、任意整理の場合、住宅ローン付きの自宅に住んでいる人でも、自宅を残すことができる可能性があるので、このような人も任意整理を検討してよいでしょう。

(2)自己破産が向いている人

自己破産が向いている人は、借金の総額が多額なため、返済が難しい人です。
具体的にいくらであれば自己破産なのかという基準はなく、収入や持っている資産と比較して、借金の返済が可能なのかどうかという視点で判断することになります。

(3)選べない場合もある

借金の総額が多額に過ぎ、任意整理をしても返済の目途が立たない場合は、自己破産一択となります。

3 任意整理と自己破産、それぞれのメリットとデメリット

任意整理と自己破産、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのかについて説明します。

(1)任意整理のメリット

任意整理では、①資格の制限を受けることがない、②自分の資産を引き続き持っていたり、処分することに法的な制限を受けない、というのが大きなメリットといえます。

(2)任意整理のデメリット

任意整理のデメリットとしては、①信用情報機関に登録されてしまう、②信用情報機関の登録により、新たにクレジットカードを作ったり、住宅ローンを組んだりすることが難しくなる、といったものが挙げられます。

(3)自己破産のメリット

自己破産では、①免責が得られれば、借金の返済をしなくて済む、②99万円以下の現金など、一定の財産については手元に残せる、といったメリットがあります。

(4)自己破産のデメリット

自己破産のデメリットとしては、①破産手続中、資格の制限を受ける(破産手続が短期で終わる場合もあります。詳しくは弁護士にご相談ください。)、②手元に残してよい財産以外は手放す必要がある、③信用情報機関に登録されてしまう、といったものが挙げられます。

4 まとめ

借金問題は適切に対応すれば、社会生活をリスタートできます。
今回は取り上げませんでしたが、個人再生といった手続を利用すれば、裁判所が関与しつつも、住宅ローン付きの自宅を残すことができるといった方法もあります。
借金問題で困っている方は、ぜひ一度、弊所にご相談ください。
大阪の方のみならず、全国からご相談をお受けしています。


執筆者:弁護士 隅田 唯

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