別居期間の離婚調停への影響について。離婚が成立する別居期間とは?
2023/4/18
配偶者が協議での離婚に応じない場合、調停→訴訟へと手続を進めていくことになるのですが、訴訟では、「離婚原因」がなければ離婚が認められません。
配偶者の不貞行為や暴力などのような離婚原因がない場合、「別居」だけで離婚が認められるのでしょうか。
今回は、離婚における別居期間についてお話します。
1 別居期間は離婚調停に影響
裁判で認められるような離婚原因があれば、あえて裁判にせずとも調停で離婚に応じようという配偶者もいるかもしれません。
その意味では、別居期間の長さが離婚原因に当たるかどうかが、調停にも影響を及ぼすといえます。
(1)離婚に必要な別居期間
離婚原因とは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められる場合をいいます。
不貞行為や暴力などがなくとも、別居期間が「相当期間」に及んでいる場合には、それだけで婚姻関係の破綻が事実上推定されるので、離婚原因になると考えられています。
現在、「相当期間」とは、おおむね3年以上とされています。
訴訟が終結するまでには1年近く(場合によってはそれ以上)を要するので、訴訟を提起する時点でおおよそ2年に及んでいれば、最終的には離婚が認められる可能性が高いと考えられています。
(2)有責配偶者の離婚請求の別居期間
上記は、別居期間が相当期間に及んでいるという他に、双方に離婚原因がない場合を想定していますが、「有責配偶者」からの離婚請求の場合には、同じように考えることはできません。
「有責配偶者」とは、自身が不貞行為に及んだなど、婚姻関係破綻について、専ら又は主として責任のある婚姻当事者をいいます。
有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、①別居が相当の長期間に及んでおり、②未成熟子が存在せず、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないことが必要とされています。
この場合の①相当の長期間は、おおむね10年以上に及ぶことをいうとされています。
②③との兼ね合いで、それ以下の別居期間で離婚が認められる場合もあると思われますが、上記(1)の場合と比べて、相当長期の別居期間が必要であるということがわかります。
2 別居離婚を成立させるポイント
有責配偶者でない者から離婚を請求する場合に、「別居」が相当期間に及んでいれば必ず離婚原因があると認められるでしょうか。
次に「別居」の態様についてお話します。
(1)別居に至った経緯
離婚原因となるための「別居」とは、婚姻の本旨に反する別居をいうとされています。
婚姻の本旨に反する別居に当たるというためには、性格の不一致や価値観の相違などの夫婦不和によって別居を開始したといえなければなりません。
夫婦不和に至るような原因についての主張立証もなく、単に別居が長期間に及ぶというだけでは、婚姻の本旨に反する別居に当たるとは判断されないでしょう。
他方、単身赴任などの正当な理由のある別生活は、ここでいう「別居」に当たりません。ですので、長期間単身赴任をしているというだけでは離婚原因にあたりません。
また、家庭内別居の場合、それが「別居」に当たると立証するハードルはかなり高いので、離婚原因としての「別居」があるとは認められないことが多いでしょう。
(2)別居することの同意を得る
ちょっとした夫婦喧嘩で家を出て行ったとか、離婚について一切話し合いもせずに家を出て行ったような場合には、婚姻の本旨に反する「別居」であるとはいえない可能性があります。
同居中の配偶者が、夫婦不和の状態を認識していないと思われる場合には、念のため、別居することの同意を得てから別居を開始するのがよいでしょう。
(3)配偶者が浮気していた場合は証拠を確保
相手方配偶者に有責行為があり、その証拠があれば、それだけで離婚原因を主張立証することができます。
配偶者の不貞行為がある場合などには、その証拠を確保しておきましょう。
3 短い別居期間で離婚を成立させるためには
相手方配偶者から離婚の同意を得られれば、別居期間の長短にかかわらず離婚することが可能です。
離婚したいと持ち掛けてみたが、話し合いの余地もないという場合でなければ、一度じっくり話し合ってみるのが近道かもしれません。
4 まとめ
離婚の場面では、それぞれの夫婦の事情によって何を優先的に進めるべきかが異なります。
衝動的に別居を開始してしまった場合、別居をする前に準備しておくべきことが準備できておらず、証拠の不足により、本来請求できたはずの請求ができないということにもなりかねません。
また、一方的に別居を開始してしまったがために、かえって離婚協議を拗らせてしまうこともあります。
これから別居をして離婚協議をしていこうと考えている方も、別居前に一度弊所までご相談ください。
執筆者:弁護士 前川 恵利子