交通事故におけるペット損害について

2020/1/9

 

こんにちは。
今回は、交通事故におけるペット損害についてのお話です。
交通事故で傷付けられる可能性があるのは、人間や車に限りません。飼い犬などのペットが、交通事故で損傷することもあり得ます。
このような場合、ペットが受けた損害についても、賠償されるのでしょうか。

1 ペットの損害について

法律上は、動物は「物」として扱われるので、ペットについての損害も、自動車の損傷と同様に、「物的損害」に該当します。
もっとも、ペットは自動車とは異なり、命のある存在であるため、自動車と全く同じ扱いがされるというわけではありません。
飼い主からすれば、ペットは家族の一員ともいえる場合もあり、時価相当額以上の治療費や、飼い主の慰謝料が認められることもあります。

2 具体的な損害

(1)ペットの治療費

不法行為により物が毀損した場合の修理費等については、不法行為時におけるその物の時価相当額(及び買替諸費用)に限り、不法行為との間に相当因果関係のある損害とすべきであると考えられています。
しかし、ペットのうち、家族の一員のように扱われているものについては、そのペットの当面の治療や、生命の確保・維持に必要不可欠なものについては、そのペットの時価相当額を超える部分についても、社会通念上、相当と認める限度において、不法行為たる交通事故との間に相当因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である、とする裁判例もあります。

(2)ペットが死亡した場合の死亡自体による損害

交通事故によりペットが死亡した場合の死亡自体による損害については、当該ペットの「死亡時における客観的価値」であると考えられています。
この客観的価値については、通常は、ペットの購入価格や年齢などを考慮して判断されています。なお、無料で譲り受けたり、拾ってきたりしたペットのように、購入価格を想定できないものであっても、裁判所は、ペットの種類や年齢を踏まえて、損害額を認定しています。
死亡時における客観的価値が高額となる可能性のある特殊なケースとして、死亡したペットがブリーディングに用いられる犬や猫であった場合や、品評会等での入賞実績がある場合、盲導犬の場合などが挙げられます。

(3)飼い主の慰謝料

物的損害については、財産上の損害賠償がされれば精神的苦痛も慰謝されると解されているため、原則として、財産上の損害の賠償に加えて慰謝料が認められることはないと考えられています。
もっとも、ペットは飼い主にとってかけがえのない存在になっていることなどから、交通事故によりペットが死亡した場合や重い傷害を負った場合について、飼い主の慰謝料が認められるとした裁判例もあります。
また、ドッグホテルに預けられていた犬が、ホテルから逃げ出した際に自動車に跳ねられて死亡した事故について、飼い主らがホテル経営者、ホテル従業員を被告として損害賠償請求訴訟を提起した事案において、飼い主らにそれぞれ10万円の慰謝料を認めた裁判例もあります。

3 おわりに

いかがでしょうか。
ペット損害については、治療費や慰謝料が認められるのかどうかや、損害の算定方法など、様々な点で法的に問題となります。
ペット損害に限らず、交通事故に遭った際の損害賠償請求についてお悩みの際は、是非一度、弊所にご相談ください。
なお、交通事故被害者の方の場合、初回のご相談は無料となっております。


執筆者:弁護士 森本 禎

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