交通事故で自動車全体を塗装しなければならなくなった場合に、塗装費用全額を請求できるか。

2019/10/8

こんにちは。
今回は、自動車の事故に関する記事です。
交通事故に遭った車の修理に塗装を要するような場合、傷のついた一部のみを塗装しても色むらがでてしまうため、もっと広い範囲の塗装をしたい、と思うことがあるかもしれません。
このように、色むらの発生を防ぐために修理箇所を超えて車両全体の塗装を行った場合、この塗装費用を、加害者に請求することができるのでしょうか。

1 全塗装費用請求の可否

結論からいうと、このような全塗装に要する費用の賠償請求については、裁判実務では認められにくい傾向にあります。
ただし、これを認めた裁判例もあります。以下、詳しくみていきましょう。

2 修理費用

いわゆる修理費用については、一般に、必要かつ相当な範囲の費用が損害の賠償となるものとされています。
塗装は修理の一環として行われるため、塗装費用についても修理費用と同様に、必要かつ相当な範囲の費用が損害として認められるものと考えられます。
そして、裁判実務では、車両全体を塗装しなければならない合理的な理由がない限り、部分塗装をもって相当と考えられています。

3 全塗装費用請求が認められる場合

では、どのような場合に全塗装費用請求が認められるのでしょうか。
これについては、裁判例が以下のような基準を挙げています。

①特殊な塗装技術を施してあるため部分塗装では外の部分との相異が明白となって美観を害する場合

②車両自体が高価なもので車両の価値の大部分が外観にかかっている場合

③再塗装の範囲が広いため全塗装する場合と比較して費用に大きな差異を生じない場合

したがって、これらの条件を満たす場合には、全塗装費用の請求が認められる可能性があります。

4 実際の裁判例

実際に全塗装費用請求が認められたものもいくつかあり、たとえば、

①バッテリー液(塗装、下地の腐食の原因となります)の飛散範囲が広範囲であったという特殊事情があったケース

②特殊塗装のため、部分塗装では色合わせが困難であるという特殊事情があったケース

などでは、全塗装費用請求が認められています。
特に、②の場合には、被害車両がメルセデスベンツ500SLのオープンカーという高級車であることを認定した上、「破損箇所だけの部分塗装では色合わせが困難であり、機能的には部分塗装で十分であるとしても、部分塗装であれば部分塗装したこと、すなわち事故車であることが時とともに一目瞭然となり、車両価値がそれだけ低下することが認められる」として全塗装の必要性を認めました(神戸地裁平成13年3月21日判決)。

5 おわりに

いかがでしょうか。
全塗装費用請求の相当性などには、法的な判断が必要となる場合があります。
交通事故に遭った車両の修理についてなどでお悩みの際は、是非一度、弊所にご相談ください。
また、交通事故被害者の方の場合、初回のご相談は無料となっております。


執筆者:弁護士 森本 禎