交通事故の人的損害における3つの慰謝料算定基準
2019/6/28
こんにちは。
今回は、交通事故における慰謝料算定基準についてのお話です。
交通事故の人的損害に対する慰謝料には、入通院慰謝料・死亡慰謝料・後遺障害慰謝料があります。
そして、慰謝料の算定基準には、①自賠責保険基準②任意保険基準③裁判・弁護士基準の3種類があります。
それぞれの内容と、弁護士に委任いただくメリットをお伝えいたします。
1 自賠責保険基準
自動車事故による人身損害の賠償に関しては、被害者保護の観点から、自動車損害賠償保障法が規定されています(自賠法5条)。
これにより、自動車を使用する者は、自動車損害賠償責任保険または自動車損害賠償責任共済への加入が強制されています。
これらの自賠責保険は、被害者保護を目的とはしているものの、被害者の最低限の補償を行うという性質が強く、3つある算定基準のうちでは最も低い金額となることが多いです。
ただし、自賠責保険基準の場合、他の場合と異なり、被害者保護の観点から、被害者の過失割合が7割未満の場合には、過失割合による保険金の減額はされません。
そのため、ご自身の過失割合が大きい事故などでは、任意保険基準や弁護士基準よりも高い算定結果となる場合もあります。
また、自賠責保険の保険金額は、上限額が定められています。
具体的には、
傷害に対する補償(治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料など)で120万円、
後遺障害に対する補償(逸失利益、後遺障害慰謝料)で、等級に応じて75万円から4000万円(平成14年4月1日以降の事故について)、
死亡に対する補償(葬儀費、逸失利益、死亡慰謝料)で3000万円
が上限となっています。
なお、自賠責保険の補償の対象は原則として人的損害のみであり、物損への補償はありません。
2 任意保険基準
任意保険は、自賠責保険の限度額内で補償できなかった部分を補填する保険であり、現在、その支払基準は、各保険会社が独自に決定しています。
保険会社から、任意保険基準での慰謝料が提示され、それに応じると、裁判等をせずに早期・確実に損害賠償金の支払いを受けられるというメリットがあります。
他方で、任意保険は自賠責保険に上乗せするものとはいえ、傷害慰謝料・後遺傷害慰謝料及び入院雑費等、定額扱いの賠償基準については、弁護士基準と比較して低額であるというデメリットがあります。
3 裁判・弁護士基準
弁護士に委任すると慰謝料の額が上がる、ということを聞いたことのある方もいらっしゃると思います。
その大きな理由のひとつは、弁護士が、今まで裁判で認められた慰謝料額をまとめた基準を用いて交渉するからです。
交通事故については既に多くの裁判例が蓄積されていることから、これらをもとに、公益財団法人日弁連交通事故相談センターなどが調査・分析し、公表したものが、いわゆる弁護士基準です。
具体的には、公益財団法人日弁連交通事故相談センター本部が発行する「青本」や、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「赤い本」、大阪地裁が発表している算定基準(緑本)などが用いられており、これらの基準は年々詳細化されています。
これらの基準は、原則として弁護士が用いる基準であるため、弁護士でない方が、この基準で算定してほしいと主張しても、認められることはほとんどありません。
そのため、交通事故事件を弁護士にご依頼いただくと、この算定基準を含めた、その事案によって最も高額な算定基準での慰謝料請求を主張できるということが、大きなメリットだといえるでしょう。
4 具体例
それでは、これら3つの基準を用いた場合、具体的にどのような差が生じるのでしょうか。
具体的な計算式等は省略しますが、たとえば、交通事故による怪我で、入院1か月、通院3か月の治療を要した場合(実通院日数が42日の場合)であれば、
①自賠責基準の場合 50万4000円
②任意保険基準の場合 約60万円
③裁判・弁護士基準の場合 約115~119万円
となります。
5 おわりに
いかがでしょうか。慰謝料算定基準のうち、最も高額になるのは弁護士基準です。しかし、上述したように、この基準を用いるには、原則として弁護士にご依頼いただく必要がございます。
弊所では、交通事故事件も数多くご依頼いただいております。弊所では、交通事故事件の被害者様の場合、初回は無料でご相談いただけます。
交通事故の慰謝料請求でお困りの方は、お気軽にご相談にいらしてください。
執筆者:弁護士 森本 禎
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