交通事故の被害者家族が慰謝料をもらえる?条件と請求方法

2023/9/29

交通事故の被害に遭うと、事故に遭った被害者本人だけでなく被害者の家族も精神的苦痛を受けます。
今回は、このような場合に、被害者家族も慰謝料を請求できるか、請求する場合はどのような方法で進めていけばよいのかについて解説します。

1どんな時に交通事故の被害者家族が慰謝料を請求できる?

交通事故で負傷をした被害者は、通院期間に応じて慰謝料を請求できますが、被害者家族については常に請求できるわけではありません。
被害者家族も慰謝料を請求できる場合は以下のとおりです。

(1)被害者が亡くなった場合

 ①死亡慰謝料の金額

被害者が亡くなった場合には、被害者本人のみならず、被害者の家族固有の慰謝料を請求できます(民法711条)。
被害者本人の慰謝料は、被害者が亡くなって受け取れないため、相続人である家族が受け取ることになります。
死亡慰謝料の金額は、慰謝料の算出基準や立場によって異なります。
慰謝料の算出基準は、自賠責保険の基準、任意保険の基準、弁護士基準(裁判基準)の3種類があり、自賠責保険の基準が最も金額が低く、弁護士基準(裁判基準)が最も金額が高くなる傾向があります。
任意保険の基準は任意保険会社独自の基準になるため保険会社毎に異なりますが、①の基準に近い金額になることが多いです。
まず、自賠責保険の基準についてみると、亡くなった被害者本人の慰謝料が400万円、被害者家族固有の慰謝料は、請求権出来る家族1名の場合は550万円、2名の場合は650万円、3名以上の場合は750万円となり、被害者に被扶養者がいる場合は、これらの金額に200万円を加算した金額となります。
弁護士基準(裁判基準)の慰謝料は、自賠責保険の基準とは異なり、被害者本人の慰謝料と被害者の家族固有の慰謝料を合算した金額が定められています。
また、被害者の立場によっても金額が違ってきます。
弁護士基準(裁判基準)の慰謝料は、被害者が家計を支えている一家の支柱である場合は2800万円、被害者が一家の支柱以外の場合は2000万円から2500万円となります。

 ②請求できるのは誰?

慰謝料を請求できる家族は、原則として、被害者の父母、配偶者、子供となります。
養父母や養子、認知した子供もここに含まれます。
上記以外にも、内縁の配偶者や兄弟姉妹などでも、被害者との関係が深く、被害者の死亡による精神的苦痛を受けたと認められれば請求が認められる可能性があります(自賠責保険への請求は認められません。)。

(2)被害者に重い後遺障害が残った場合

 ①後遺障害の慰謝料

被害者に後遺障害が残った場合、被害者は後遺障害慰謝料を獲得できます。
原則として、後遺障害慰謝料は被害者本人のみしか請求できません。
しかし、被害者に重度の後遺障害が残った場合は、過去の判例により、被害者の家族も固有の慰謝料を請求できます。
自賠責保険の基準による後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級に応じて、1650万円(自賠法施行令別表第1第1級)~32万円(第14級)となります。
自賠責保険の基準の場合、重度の後遺障害がある場合でも被害者の家族固有の慰謝料は認められませんが、被害者に被扶養者がいる場合は被害者の慰謝料額に一定の金額が加算されます。
弁護士基準(裁判基準)の慰謝料は、被害者本人の慰謝料について、後遺障害の等級に応じて、2800万円(第1級)~110万円(第14級)となります。
被害者の家族固有の慰謝料の金額については、明確な基準というものはありませんが、過去の裁判例では、植物状態(第1級)の小学生について、その母親に800万円を認めた事例や、寝たきり状態(第1級1号)の主婦について、その夫300万円、長女と養子となった長女の夫に各200万円の慰謝料を認めた事例があります。

 ②請求できるのは誰?

慰謝料を請求できる家族の範囲は明確には定められていません。
もっとも、過去の裁判例では、被害者の父母、配偶者、子などが慰謝料の請求を認められています。

(3)被害者の入通院の付添、看護が必要となる場合

 ①付添看護費、将来介護の金額

被害者が入通院するにあたり、被害者の家族が付き添った場合は付添看護費が請求できる可能性があります。
また、被害者に重い障害が残り、将来に渡り常時介護する必要がある場合は将来介護費が請求できる可能性があります。
なお、正確には、付添看護費、将来看護費は財産的な損害を補填するものであり、精神的な損害の補填のための慰謝料ではありません。
家族が付添看護を行う場合の金額は、自賠責基準では、1日当たり入院付添費4200円、通院付添費が2100円となります。
弁護士基準(裁判基準)では、1日当たり入院付添費6000円、通院付添費3000円となります。
家族が介護をする場合の金額は、1日当たり8000円×365日×平均余命に対応するライプニッツ係数で計算します。
ライプニッツ係数とは、将来介護費を一括で受け取ることにより、将来に渡り発生する利息を差し引くための係数です。

2交通事故被害者家族ができること

もしご家族が交通事故の被害に遭われた場合、他の家族ができることについてご説明します。

(1)病院でのお手続き

 ①入院手続の際の注意点

入院をする際は、病院から病室を大部屋にするか個室にするかの希望を聞かれることがあります。
個室は、別途個室使用料がかかることになるケースが多いですが、個室使用料は医師の指示がある場合や症状が重篤で個室での治療が必要な場合などでなければ損害として認められません。
したがって、上記のような理由ではない個人的な理由の場合は、自己負担となる可能性があるので注意しましょう。

 ②支払い時の注意点

医療費を立て替える場合や被害者にも過失割合がある場合は、被害者にも金銭の負担がかかります。
負担を軽減するためにも、健康保険を利用することをおすすめします。

(2)保険会社への連絡

 ①自動車保険へのお手続き

交通事故にあったら、すぐにご家族の加入する任意自動車保険に事故の報告をしましょう。
その際、弁護士費用特約に加入しているか否かも確認するようにしてください。
弁護士費用特約があれば、示談交渉を弁護士に依頼することができます。

 ②生命保険へのお手続き

被害者が生命保険に加入している場合、保障の内容によっては、入院やけがをした場合に保険金が受け取れる場合があります。
こちらも確認を忘れないように注意しましょう。

(3)会社への連絡

 ①被害者の勤め先へ連絡

被害に遭ったご家族の勤務先に連絡をしましょう。
入通院のため仕事を休業することになると、休業損害が請求できますので、勤め先に休業損害証明書を作成してもらうようにしてください。

 ②自分の勤め先への連絡

被害に遭ったご家族の入通院の付添いのために仕事を休まなければならないことがあります。
その場合は自身の勤め先にも事情を説明した方が良いでしょう。
ご家族は相手方に対して入通院付添費を請求できる可能性があります。

3弁護士ができるサポート

交通事故に遭われた場合は、何をすればよいか分からなかったり、どのくらいの賠償を受けるべきなのかについて疑問を持たれる方も多いと思いますので、お早めに弁護士にご相談ください。
弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。

(1)精神的な負担の軽減

交通事故に遭うと、相手方や保険会社と頻繁に連絡を取り合ったり、損害を証明する資料を準備するなど、精神的、時間的な負担が多くあります。
弁護士に依頼することで、精神的、時間的な負担を軽減することができます。

(2)適正な賠償金額の算定及び相手方への請求

保険会社から提示される損害賠償額は、自賠責保険の基準や、それに近い独自の基準で算出されたものなので、低額になる傾向があります。
また、本来請求できるべき損害額が計上されていない場合も多くあります。
弁護士に依頼すると、弁護士基準(裁判基準)で損害額を算定するとともに、請求項目の漏れもなくすことができるので、保険会社の提示額よりも大幅に損害賠償額が増額できる可能性があります。

(3)過失割合の調査

事故の状況によっては、加害者から、被害者にも過失があると主張されることがあります。
被害者にも過失があると、過失相殺され、損害賠償額は過失割合分減額されます。
過失割合は獲得できる損害賠償額に大きな影響を与えることから、十分に検討する必要があります。
過失割合は、弁護士に依頼することで専門的な視点で調査を行うことができます。

(4)話し合いがまとまらない場合、裁判で徹底的に戦える

仮に相手方や保険会社との話し合いがまとまらない場合は、裁判をすることになりますが、裁判は専門的な知識が必要で、ご自身で訴訟を提起して納得のいく判決をもらうのは至難の業です。
弁護士に依頼をすると、示談交渉を任せることもできますし、示談交渉がまとまらない場合でも、裁判で徹底的に戦うことができます。

4まとめ

以上のように、被害者家族がもらえる損害賠償について説明いたしましたが、弁護士に依頼するかしないかで獲得できる金額が違ってきたり、より有利な主張ができるなど、多くのメリットがあることが分かります。
特に、加入する保険に弁護士費用特約が付いている場合は、原則として費用の負担なく弁護士に依頼することができるので、交通事故に遭われた場合はお早めに弁護士にご相談ください。