スマートフォンで動画撮影した遺言の有効性
2019/1/18
こんにちは。
今日は、ご相談でご質問いただくことが増えてきたので、「動画で遺言が残せるのか」についてお話ししたいと思います。
最近ではスマートフォンの普及率も非常に高く、誰もがスマートフォン等で動画を気軽に撮影できる時代となりました。
大切なメッセージを動画で残しておこうと考える方もいらっしゃるかもしれません。
遺言を書面で作成するよりも、動画を残しておく方が、書く手間を省けて簡単ともいえそうです。
では、生きている間にスマートフォン等で撮影したメッセージ動画を、遺言とすることはできるのでしょうか。
1 映像による遺言の有効性
結論からお話すると、映像による遺言は無効です。
とはいえ、実際に本人が遺言について動画の中で話しているのであれば、その映像の内容は信用できるのではないか、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それでは、どうして映像による遺言は無効なのでしょう。
民法では、遺言のルールが厳密に決められています。
このルールに反した場合、どれだけ信用できる媒体で遺言を残したとしても、決して有効な遺言としては認められないのです。
では、日本で認められている遺言の方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
2 遺言書作成のルール
民法967条は、遺言の方式についていくつか定めており、その方式に従わないと、遺言としての効力は認められません。
そして、方式によっては、自分以外の第三者が必要になったりするなど、作成のしやすさに差があります。
そこで、最も作成しやすい遺言の方式として、自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)が挙げられます。
「自筆」とは、自分が書くことやその人自身が書いたものを意味します。
自筆証書遺言は、公証人等の立会いなく、あなただけで作成することができる遺言です。
このように、民法は、遺言を書面で作成することとしているのです。
したがって、いくら遺言を残す本人が映像で遺言の内容を語ったとしても、それは法的には無効と言わざるを得ないのです。
スマートフォン等で撮影された動画を遺言とすることはできません。
もっとも、法的に遺言としては無効である動画も、遺産分割協議の場などで効果を有する場合があります。
遺産分割協議において、故人の意思を表した動画が存在していれば、相続人がその内容を考慮する可能性があるためです。
そのような意味では、動画で遺言を残しておくことも、無意味ではありません。
3 おわりに
近年、社会のIT化が急激に進んでいることを考えると、紙でなければ遺言を残せないということが時代遅れになる日も遠くないかもしれません。
今後は、動画が遺言書の代わりになるなど遺言のルールももっとバリエーション豊かになる可能性があります。
しかし、これまで述べたように、現段階では、遺言書はルールに則って書面を作成しなければなりません。
具体的にどのように遺言書を作成すればよいのかお悩みになられたときは、是非、一度弊所にご相談ください。
相続事件の経験が豊富な弁護士が、相談者様のご希望に沿った遺言の方式選択、内容面・形式面等のアドバイス、作成支援等をさせていただきます。
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皆さまのご相談をお待ちしております。
執筆者:弁護士 森本 禎
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