離婚の基礎知識-財産分与-

2023/1/4

 今回は、離婚の場面で問題となる、「財産分与」についてお話します。

 財産分与は、民法には簡単な条文が設けられているのみで、その具体的方法は裁判例などによって形成されています。

 財産分与においては、どの時点にあるどの財産が対象になるのか等、問題となる点も多くありますが、この記事でお伝えできるのはごく基本的な内容に限られます。

 そのため、夫婦で共同して形成した財産がある場合には、弁護士にご相談されることを強くお勧めします。

1財産分与とは

 財産分与とは、離婚に際し、夫婦の一方が、他方に対し、財産上の給付を求める制度です。

 財産分与には、

 ①夫婦共同財産の清算(清算的財産分与)

 ②離婚後の扶養(扶養的財産分与)

 ③慰謝料(慰謝料的財産分与)

 の3つの側面があります。

 この中でも、財産分与の中心は、清算的財産分与とされています。

 以下では、清算的財産分与についてのみお話します。

(1)プラスの財産

 財産分与の対象となるのは、名義を問わず、夫婦の協力で取得した夫婦共同の財産です。

 たとえば、夫の収入によって購入した財産であっても、夫がその収入を得るために、妻が家事などによって支えていたという場合には、妻の協力によって取得したといえます。

 夫と妻の役割が逆の場合も同様です。

 対象財産の典型例は、不動産、預貯金、生命保険、退職金、株式です。

(2)特有財産

 特有財産とは、その取得について他方配偶者の寄与が認められない財産をいいます。

 典型的には、夫婦の一方が婚姻前から有していた財産や、贈与や相続によって取得した財産です。

 特有財産は、財産分与の対象から除外されます。

(3)マイナス財産

 財産分与は、原則として、夫婦が形成したプラスの財産を分ける制度です。

 そのため、マイナスの財産、つまり債務しかない場合、財産分与は行われません。

 ただし、プラスの財産とマイナスの財産の双方があるという場合、実質的に夫婦が共同で負担したといえる債務については、どのようにプラスの財産を分けるかという中で考慮されます。

2財産分与の割合

 分与割合は、原則として「2分の1」です。

 一方で、分与割合を2分の1とすると公平とはいえない場合には、分与割合が修正されることもあります。

 たとえば、夫婦の一方が類まれなる経営能力により高収入が得ている経営者である場合など、一方配偶者の特別な努力や能力によって資産形成されたといえるときには、分与割合が修正されることがあります。

 もっとも、夫が働き、妻が専業主婦であるというだけで、夫に特別な努力や能力があると認められるわけではありません。

3財産分与の方法

 原則は、一方が他方に金銭を支払う方法により行います。

 話し合いによって、その他の方法をとることも考えられます。

 たとえば、不動産であれば、どちらか一方の名義に変えて金銭で調整する方法や、生命保険であれば、解約せずに名義変更をする方法などがあるでしょう。

4財産分与を請求する時期

財産分与は、離婚と共に請求する場合と、離婚成立後に請求する場合があります。

財産分与調停・審判は、離婚の時から2年を経過したときは、申し立てることができません。

そのため、離婚成立後に財産分与を請求する場合には、2年の期間を経過してしまうことのないよう、注意が必要です。

5財産分与の事例

 不動産や預貯金など、夫婦共同して形成した財産であるにもかかわらず、一方配偶者の名義になっている場合、自分の財産であるから渡したくないなどと主張されることがよくあります。

事例1

 離婚調停で、互いに財産を開示した後もなお、財産を渡したくないと主張されることがあります。

 妻が、主婦として夫婦生活を支えてきたにもかかわらず、夫の不倫によって破綻したというケースでも、そのような主張をされることがあります。

 調停の中で、離婚後の生活がどれほど大変なものになるかということを、調停委員を通じて伝えてもらい、数千万円相当の財産を獲得しました。

事例2

 離婚裁判で、互いに財産を開示することになった後も、すべての財産を開示しないということがあります。

 裁判の中で、財産を調査する手続を経て、開示されなかった預貯金などを見つけ、財産分与の対象財産を増やしました。

まとめ

 以上で説明したことは、ごく基本的な内容です。

 財産分与には、財産評価、分与割合、分与の方法など、多岐にわたって調整が必要な場合が多いです。

 離婚を検討するにあたって、夫婦で共同して形成した財産や債務があるという場合には、財産分与の検討は不可避ですので、ぜひ弁護士にご相談ください。