台風被害。飛来物での損傷は誰かに請求できる?
2024/10/28
今年も台風や大雨で各地に甚大な被害がもたらされました。
毎年、必ずといってもいいほど発生する台風による被害。
今年の台風シーズンはもう終了したかと思いましたが、現在も大型の台風21号が沖縄地方に接近中です。
今回は、台風による飛来物により被害に遭った場合の対処法について解説いたします。
1 飛来物で車/家屋が損傷した場合
・台風により飛んできた瓦で、家の窓が割れた
・隣の家の木が倒れてきて、駐車場の車が損傷した
・台風により駐車場の車が飛んできて、自分の車が損傷した etc.
台風による被害は様々です。ではこのような被害に遭った場合、賠償請求は可能でしょうか。
(1)飛来物の持ち主が不明な場合
台風の際の飛来物は、どこからやってきたのか分からず、持ち主が不明であることが大半です。
そのような場合には、飛来物の持ち主に対して賠償請求を行うことはできません。
(2)飛来物の持ち主が特定できる場合
飛来物の持ち主が特定できたとしても、台風の強風や突風により生じた飛来物が原因で被った損害は、他人の故意又は過失により生じた損害といえず、「不可抗力」として原則、賠償請求は認められません。
もっとも自然災害が原因であっても、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたとき」には、工作物の占有者・所有者に対して賠償請求可能なケースがあります(民法717条1項)。
※「瑕疵」とは
「瑕疵」とは聞きなれない言葉ですが、判例では「工作物が通常有すべき安全性を欠くこと」とされています。
台風は事前に経路が予測され予防対策が可能です。そのため強風で飛ばされそうな物をそのまま放置したり、劣化して強風により破損しやすい物を外部に放置した場合等には、「本来あるべき安全性を欠いて」、「通常有すべき安全性を欠く」として損害賠償の対象となり得ます。”
2 保険は使える?
飛来物により損害を受けた場合、加入している火災保険で「風災」が対象となっていれば修理費等について保険金請求できるケースがあります。
火災保険に加入している場合は、契約書や約款で「風災」が保険の対象となっているのか確認することを勧めします。
なお、保険の契約内容によっては、保険を使用したことで等級が一定期間下がることもあります。
台風被害のために保険を利用する場合は等級ダウンについても確認しておいた方がよいでしょう。
3 飛来物を出さないために
(1) 強風で飛ばされる可能性のあるものは室内へ
植木鉢や物干し竿、自転車、サンダルやゴミ箱、ゴミ等、家の外に置いてあるもは、可能な限り家の中に入れておきましょう。
どれだけ強い風が吹くのか、実際に台風が来るまでは分かりません。
窓ガラスは、風の強さではなく飛来物で割れてしまいます。
自宅だけでなく近隣の家、車を守るためにも、台風が来る前に家の周囲を確認しましょう。
(2) 網戸のはずれ止め、窓のロック、シャッター
網戸は、強風で外れてしまうことがあります。
網戸には、上部にはずれ止めが付いていることが多いです。
台風が来る前に、外れないよう確実にセットしましょう。
窓についても、割れてしまうと甚大な被害が出てしまいます。
雨戸やシャッター、ブラインドを確実に降ろし、ロックをかけておきましょう。
心配な方は、ガラス飛散防止フィルムなどを貼っておくことも効果的です。
4 まとめ
台風による被害は日本各地で発生しています。
被害発生を防ぐためには、日常生活において飛来しやすい物を放置しない等、予防策を講じることが大切です。
一方で被害が発生した場合には、自然災害だからとあきらめずに、保険金請求や賠償請求が可能か早めに専門家に相談されることをお勧めいたします。
執筆者弁護士 稲生 貴子
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