採用担当者向け!面接で避けるべき質問とは

2024/9/13

 

人事担当者の皆さん、採用面接で避けた方がよい質問があることをご存知でしょうか。
優秀な人材を獲得すべく、応募者に不快な思いをさせることなく面接を行えるようにしたいものです。
このコラムでは、面接官の持つべきマインドや避けた方がよい質問項目、質問をしたことで発生しうる不利益について解説いたします。

1 公正な選考のために持つべきマインド

(1)「人を人として見る」

日本国憲法(第22 条)では、基本的人権の一つとして、「職業選択の自由」を保障しています。
また、雇用主にも、採用方針・採用基準などの「採用の自由」が認められています。
ですが、「採用の自由」は、応募者の基本的人権を侵すことはできません。
採用選考を行うに当たっては、何よりも「人を人としてみる」こと、応募者の基本的人権を尊重することが求められます。

(2)適性・能力を見る

「職業選択の自由」とは、誰でも自由に職業を選べるということです。
これを実現するには、雇用する側が、適性・能力に基づく「公正な採用選考」を行わなければなりません。
日本国憲法(第14 条)「法の下の平等」の理念に基づき、人種・信条・性別・社会的身分・門地などの事項による差別があってはならず、適性・能力に基づいた基準により行われることが求められます。

2 面接で避けた方がよいとされている質問項目

こちらでご紹介する質問項目6つは、法律で尋ねることを禁止されているわけではありません。
ですが、就職差別は、応募者がそう感じた時点で不利益が発生する可能性があるものです。
下記に該当する質問を行った時点で、直ちに「就職差別だ!」となるわけではありませんが、そのつもりはなくとも、応募者がどのように捉えるのかはわかりません。
頭の片隅に留めておきましょう。

1.本籍に関する質問

例)本籍地はどこですか。/お父さんやお母さんの出身地はどこですか。

2.住居とその環境に関する質問

例)あなたの家は国道●号線(●駅)のどちら側ですか。
住所については、履歴書に記載がされますが、応募者の能力には関係のない事柄ですので、面接の場で話題にするのは危険です。
住環境に関する質問は避けましょう。

3.家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問

例)お父さんの勤め先はどこですか。/両親は共働きですか。

4.資産に関する質問

例)家は一戸建てですか、賃貸ですか。
こちらに関しては、住宅手当等の関係で、面接の際に確認したい場合もあるかと思います。
ですが、採用前に確認することで、就職差別であると応募者が感じてしまう恐れがあります。
必要があれば採用後に確認しましょう。

5.思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問

例)宗教は何ですか。/尊敬する人物を言ってください。/愛読書を教えてください。
「尊敬する人物」は、面接の際に尋ねる、よくある質問の一つかと思います。
ですがこちらも、応募者の能力には関係のない質問ですので、職業差別であると捉えられてしまう可能性があります。

6.男女雇用機会均等法に抵触する質問

例)結婚や出産後も働き続けますか。/スリーサイズを教えてください。
性別を理由とした質問は、男女雇用機会均等法の趣旨に違反するものとなります。
また、男女の別にかかわらず、今後のライフプランを尋ねることも、職業差別ではないかと捉えられてしまう恐れがあります。

3 避けるべき質問をすることで発生する不利益

(1)罰則

職業安定法では、面接等で収集してはいけない、応募者の個人情報を以下のように定めています。

・人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地、その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
・思想および信条
・労働組合への加入状況

違反した企業は、行政指導や改善命令などの対象となります(職業安定法第48条の4)。
改善命令に応じない場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科される場合があります(職業安定法第65条の4)。

(2)開示請求や指導

応募者が「就職差別を受けた」と感じた場合、ハローワークを通じて、企業に対して質問の意図を尋ねる開示請求を行ったり、ハローワークから企業への指導を要求したりする場合があります。
そのような要望があると、ハローワークは会社を訪問し、採用担当者や代表者との面談を行うこととなります。
不要な時間、労力を割かなければならなくなるうえに、「就職差別である」と認定され、指導を受けることが複数回繰り返されると、厚生労働省から企業名が公表されてしまいます。

(3)人材の取り逃し

避けるべき質問をされたことで、応募者が緊張したり、不安になってしまい、実力が発揮できなくなる場合があります。
面接の精度が低下し、優秀な人材であったとしても、見逃してしまう原因となり得ます。
また、不快な気持ちにさせてしまうことで、内定を出したとしても、辞退されてしまうこともあるでしょう。

(4)企業のイメージダウン

SNSや口コミサイトにより、一個人の書き込みが瞬く間に全世界に拡散される時代です。
面接で応募者に不要な質問によるストレスを与えることで、その事実がネット上に拡散されてしまうと、企業の社会的信頼を失墜させてしまう恐れがあります。
企業の評判が悪くなると、応募者が減る、取引先からの信用がなくなる、働いている従業員のモチベーションが下がる、など、そこから波及するリスクは計り知れません。

4 まとめ

面接官は、常に自身が「企業の顔」であることを自覚し、適法・公正な面接を心がけなければなりません。
不要な質問をしないよう気を付けつつ、応募者の能力や適性を適切に評価できる環境を整えましょう。


監修者:弁護士 瀧井 喜博

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