「フリーランス保護法」令和6年11月施行!その内容とは?

2024/8/13

 

現代では、デジタル社会の進展に伴い、雇用という枠組みを超えたさまざまな働き方をする人が増えています。
多様化した働き方の中でも、近年フリーランスと言われる働き方が普及してきたのではないでしょうか。
そんなフリーランスの方々は、取引先から報酬が支払われない、パワーハラスメントを受けるなどの問題が発生しやすい環境におかれています。
そこで、フリーランスをめぐる環境を整備するために、令和6年11月1日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」(以下、「フリーランス保護法」といいます。)が施行されます。
これにより業務委託取引が適正化され、個人がフリーランスとして業務に安定的に従事できる環境の整備が図られます。

1 フリーランス保護法の対象

(1)業務委託

フリーランス保護法は、業務委託事業者と特定受託事業者との間の業務委託取引に適用されます。
すなわち事業者間(BtoB)における業務委託取引が対象です。

【用語解説】
業務委託:事業者がその事業のために、他の事業者に物品や情報成果物の製造・作成または役務の提供を委託すること。
特定受託事業者:業務委託の相手方である事業者(すなわち業務を受託する事業者)であって、従業員を使用しないもの。
業務委託事業者:特定受託事業者に業務を委託する事業者。

(2)対象とならない取引

次の場合は、フリーランス保護法の対象にはなりません。

①一消費者から個人事業主へ業務を依頼する場合
事業者からの業務委託ではないため)

②個人事業主がすでに作成し販売しているものを企業が購入(売買)する場合
(購入物が事業者の依頼により作成したものではないため)

③企業が個人事業主と労働契約を結んで雇用し、業務を行わせる場合
(労働法が適用されるため)

2 業務委託事業者が特定受託事業者に対して負う義務

業務委託事業者が特定受託事業者に対して負う義務は次のとおりです。

①書面等による取引条件の明示

書面等により取引条件を明確に提示する必要があります。

②報酬支払期日の設定・期日内の支払

特定受託事業者から数えて60日以内、かつできる限り早い日を報酬支払期日と設定し、期日内に報酬を支払わなければなりません。

③禁止行為

業務委託事業者は、1か月以上の期間を設定して業務を委託する場合、特定受託事業者に対し、次に該当する行為をしてはいけません。
・発注した物品や情報成果物等の受領を拒否すること
・特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく
・特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品すること
・通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
・正当な理由なく自己の指定する物を購入させ、または利用を強制すること
・自己のために金銭、役務その他の経済上の利益の提供を要請すること
・特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく給付内容を変更し、またはやり直しをさせること

④募集情報の的確な表示

広告等に特定受託事業者の募集情報を掲載する際は、
・虚偽の表示、誤解を与える表示をしてはいけません
・表示内容を正確で最新のものに更新しなければなりません

⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮

6か月以上の期間を設定して業務を委託する場合、特定受託業者が介護や育児等と業務を両立できるよう、特定受託業者からの申出に対して必要な配慮をし、就業環境を整備しなければなりません。

⑥ハラスメント対策に係る体制整備

特定受託業者に対するハラスメント行為に関して、必要な体制整備等の措置を講じなければなりません。
・ハラスメントを防止する方針を明確化し、周知や啓発をする
・適切に相談や苦情の対応をするために必要な体制や制度を整備する
・ハラスメント行為が発覚した際は迅速で適切な対応をする 等

⑦中途解除等の事前予告・理由開示

6か月以上の期間を設定して業務を委託する場合であって、し、または更新を拒絶する場合は、
・30日前までに特定受託業者にその旨を通知しなければなりません
・通知の日から契約の解除日までに、特定受託業者から契約解除等に対する理由開示を求められた場合は、特定受託業者にその理由を開示しなければなりません

なお、業務委託事業者の特性等により、特定受託事業者に対して負う義務は異なります。
・業務委託事業者が、従業員を使用していない場合
⇒①の義務のみを負います。
・業務委託事業者が従業員を使用している場合
⇒①・②・④・⑥の義務を負います。

業務委託事業者が従業員を使用しており、かつ一定の期間を定めて業務を委託する場合(※契約の更新により、一定期間以上継続して行う業務委託も含む)
・「定められた一定の期間」が1か月以上の場合
⇒①・②・③・④・⑥の義務をいます。
・「定められた一定の期間」が6か月以上
⇒①~⑦すべての義務を負います。

3 フリーランス相談窓口

「フリーランス・トラブル110番」は、特定受託事業者と業務委託事業者との取引上のトラブル等について、特定受託事業者が弁護士にワンストップで相談できる窓口です(弊所は関与しておりません)。
特定受託事業者は、フリーランス・トラブル110番に問い合わせることにより、弁護士からアドバイスを受けることができます。

4 まとめ

今回はフリーランスの就業環境改善のために施行される「フリーランス保護法」について解説しました。
委託または受託しようとする業務が「フリーランス保護法」の対象か否か不明な場合には、取引前に弁護士にご相談なさることをおすすめいたします。


監修者:弁護士 瀧井 喜博

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