婚約中の浮気で慰謝料請求はできる?

2024/4/9

1.はじめに

結婚式や新生活の準備をする等、忙しいながらも楽しい時間を過ごすことが多い婚約期間。
そんな中、婚約者が肉体関係を伴う浮気をしたと相談を受けることが少なからずあります。
籍を入れる前に最後に遊んでみたかった、マリッジブルーで婚約者以外との関係に思わず逃げた、そもそも浮気癖があった、等理由は様々ですが、本来楽しいはずの婚約期間中の裏切りは悲しいものです。
今回は、婚約者の浮気に関する慰謝料請求について解説していきたいと思います。

2.婚約とは

「婚約」とは、将来の結婚を約束することをいいます。
法律上の結婚であれば役所に婚姻届を提出する必要がありますが、婚約は契約書や合意書等の作成は不要で、当事者の意思の合致があれば成立します。
とはいえ、婚約について意思が合致したのか目に見えないことから、たとえば、以下のような事実関係等から婚約の成立を判断することとなります。

⑴ 式場の予約

⑵ 両親への挨拶

⑶ 結婚指輪や婚約指輪の購入

⑷ 結納

⑸ 同居の有無

3.婚約中の浮気による慰謝料請求

婚約中に肉体関係を伴う浮気をされた場合、婚約者や浮気の相手方に対し、不法行為に基づき慰謝料(民法709条)を請求できる可能性があります。

ア 婚約者に対する請求

婚約成立後は、「将来結婚するという合意を誠実に履行すべき義務を負っているから、それぞれ婚約相手と異なる人物と性的関係を持たないという守操義務を負う」(佐賀地方裁判所平成25年2月14日判決)とされ、婚約者が肉体関係を伴う浮気を行った場合、不法行為が成立し婚約者に対して慰謝料請求を行うことが可能です。

イ 浮気相手に対する請求

一方で婚約者の浮気相手に対する慰謝料請求は必ずしも可能とは限りません。
裁判例においても、

・「婚約は将来婚姻を締結しようとする当事者間の契約であり、権利として法律上の保護を受けうるものであるから、婚約の事実を知りながら、これを侵害した第三者が不法行為者として責任を負うべきことは明らか」として、浮気の相手方への慰謝料請求を認めたもの(大阪高裁昭和53年10月5日判決)

・婚約当事者間の合意に基づく貞操義務を婚約当事者が守るかどうかは、主として本人の意志にかかっているものというべきであって、婚約当事者との間で性交渉を持った第三者が不法行為責任を負うのは、当該第三者が、社会的相当性を欠く不当な方法で婚約当事者の一方に干渉して性行為に及んだ場合など、特段の事情がある場合に限られるべきである(東京地判令和2年8月20日)とし、婚約者の浮気相手に対する慰謝料請求を否定したもの

と判断が分かれます。
慰謝料の可否について裁判所の判断基準は明確ではありませんが、法律上の婚姻に比べると婚約中における浮気相手に対する慰謝料請求は相対的に認められにくいと考えられます。

4.慰謝料額について

婚約中の浮気に関する慰謝料額は、事案によって様々です。
婚姻中の浮気に対する慰謝料額より低くなることもある一方で、請求者が婚約後に仕事を辞めていたり、既に妊娠している場合等には、精神的苦痛が大きいとして慰謝料額が高くなる場合もあります。
近年では、概ね、50万円から200万円程度の範囲に収まることが多いようです。

5.慰謝料請求をするにあたっての準備(各種証拠集め)

⑴ 婚約成立を示す証拠

慰謝料請求に対して、婚約者や浮気相手が婚約の成立自体を争ってくることがあります。
婚約は婚姻と異なり、契約書等がないことが一般であり、婚約の成立を立証することが困難な場合があります。
そこで、婚約中の浮気に関する慰謝料請求では、婚約中であることを示す客観的証拠の存在が重要となります。証拠として、

① 婚約指輪や結婚指輪の購入を示す領収書や保証書等

② 相手方の両親への挨拶等を行ったことが分かる資料(LINEのトーク履歴、メール等)

③ 結婚式の準備状況が分かる資料(結婚式場の予約票、内金支払いを示す領収書等)

といったものが挙げられます。

⑵ 肉体関係を伴う浮気を示す証拠

婚約者が相手方と肉体関係をもったことを示す客観的証拠も重要です。
証拠としては

① 性行為が伺える婚約者と相手方とのやり取りを示す資料(LINEのトーク履歴やメール等)

② ラブホテル等への出入りを示す写真

③ ラブホテルの会員カード

④ 浮気を認めた婚約者の発言を録音したもの

が挙げられます。

6.弁護士へ依頼するメリット

婚約中の浮気といった婚約者による裏切り行為により精神的に大きく傷つけられた上、一人で問題を抱えて対応することは精神的にも疲弊します。
また当事者同士が直接協議することは、精神的負担も大きくなり、場合によっては婚約者に言い負かされる可能性もあります。
一人でそこまで大きな精神的負担を抱える必要はありません。
弁護士に依頼すれば、弁護士があなたにかわって相手方と交渉し、相手方と直接協議をすることによるストレスを軽減することも可能です。

弊所では、婚姻後の浮気に関する慰謝料請求の他、婚約期間中の浮気に関する慰謝料請求等、様々な事案を扱っています。
婚約中の浮気に関する慰謝料請求等でお悩みの方は、一人で抱え込まず一度弊所までご連絡下さい。