人身傷害保険の概要

2024/3/18

 

人身傷害保険とは、交通事故で負傷したり亡くなったりした場合に、保険会社から保険金が支払われる保険です。
保険会社や契約内容によって、人身傷害特約や人身傷害補償特約などと呼ばれることもあり、自動車保険の特約として付加されていることも多い保険です。
この記事では、人身傷害保険の補償の範囲や内容について解説いたします。

1 人身傷害保険の補償範囲

人身傷害保険は大きく分けて、契約車両に乗車していた方のみが補償されるタイプと、契約車両以外の車両(知人の車やタクシーなど)に乗車していたり、歩行中の事故でも補償されるタイプの2種類の補償範囲があります。
前者は補償範囲が狭い分保険料が安く抑えられます。後者は、補償範囲が広い分保険料は前者に比べて高くなります。

2 人身傷害保険の補償内容

人身傷害保険は、交通事故で負傷した場合であれば、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などが補償されます。
後遺障害が発生した場合は、上記に加え、逸失利益、後遺障害慰謝料などが補償されます。
死亡した場合は、逸失利益、死亡慰謝料、葬儀費用などが補償されます。
他方で、人身傷害保険は、怪我や死亡による損害を補填する保険であるため、車両の修理費などの物損は補償されません。
補償上限額は無制限の場合もありますが、あらかじめ契約で決められていることも多いです。
また、各補償項目の算定方法は約款で決められており、裁判で損害賠償請求をした時に認められる額よりは低い基準となることが多いです。

3 人身傷害保険の特徴

⑴ 過失割合の影響を受けない

交通事故の相手方に請求できる損害賠償額は、過失割合の影響を受けますが、人身傷害保険は過失割合の影響を受けません。
そのため、自身にも過失がある場合に利用することで、相手方から獲得できる損害賠償額よりも高い金額を受け取れる場合があります。

例えば、裁判基準で算定した損害額が1000万円、自身の過失割合が7割だとすると、認容される損害賠償額は300万円になります。
これに対して、人身傷害保険を利用すると、自身の過失割合に関係なく、保険の約款で定められた保険金が支払われます。
そのため、人身傷害保険の基準で算定した損害額が600万円だとすると、600万円全額を受け取ることができます。

⑵ 自損事故でも利用できる

人身傷害保険に加入していなければ、相手方がいない自損事故で怪我をした場合、相手方に損害賠償請求できず、自己負担になります。
しかし、人身傷害保険は自損事故の場合も利用できるので、損害をカバーすることができます。

⑶ 等級がダウンしない

交通事故を起こし、対人賠償や対物賠償、車両保険などを利用した場合は等級が下がり、以後の保険料がアップすることになります。
しかし、人身傷害保険については利用しても等級はダウンせず、保険料に影響しません。

4 おわりに

今回は人身傷害保険の概要について解説しました。
人身傷害保険は自身にも過失割合がある場合に利用するメリットが大きいですが、そもそも過失割合が争いになる場合や、事故の相手方にも追加で損害賠償請求ができる場合があります。
そのため、適正な損害賠償を獲得するためにも、交通事故に遭われた場合は弁護士に相談されることをお勧めします。


執筆者:弁護士 森本 禎

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