子どもを交通事故から守る!大人の私たちができること

2023/10/13

 

令和4年の交通事故の死者数は2610人となり、そのうち15歳未満の死者数は27人となっています。
今回は、子どもを交通事故から守るためにできることや、万一交通事故に遭った場合に大人の私たちができることについて解説します。

1 子どもの交通事故はなぜ起こるのか

まず、子どもの交通事故は、どのような場合によく起こり、なぜ交通事故が起こるのかについて解説します。

(1)歩行中の交通事故死傷者数が一番多いのは?

子どもが歩行中に交通事故に遭った場合の死傷者数が一番多い年齢は7歳であり、令和元年は年間900人以上の7歳の子どもが交通事故で死傷しています。

(2)なぜ7歳の交通事故が多いのか

7歳という年齢は、ちょうど小学1年生にあたる年齢で、保護者の手を離れて登下校や友人と遊びに行ったりする機会が増えてくることが影響していると考えられます。
そして、交通事故の原因で最も多いのが飛び出しであり、一人で歩いている時に興味があるものを見かけ、周囲を確認せずに飛び出して事故に遭うというケースが多くなります。

(3)子どもの視野は狭い!

子どもの視野は大人の視野の3分の2程度しかありません。したがって、大人には当然のように見えている左右から来る車が子どもには見えていなかったり、直前まで発見が遅れる可能性があります。

(4)背の低い子どもは見えにくい

また、子どもは大人に比べると背が低いので、車の運転者からは死角にいたり、見えにくい場合が多く、子どもが歩行していることに気づきにくいことも交通事故の原因になります。

2 子どもの特性

上記は子どもの身体的な特徴による交通事故の原因ですが、それだけではありません。子どもの行動の特性も、交通事故の原因となる危険を孕んでいます。

(1)何かに注意が向くと、周りが見えなくなる

子どもは、道路の向こう側に家族や友達がいたり、興味を惹かれるものがあったりしてそれらに注意が向くと、周りが見えなくなり、道路に車が近づいていないかなどの注意が不十分になる傾向があります。

(2)状況に応じた適切な判断ができない

子どもは、車がすぐに止まれると思い込んでいたり、青信号であれば絶対に安全だと思い込んでいることがあり、大人と比べると個別の状況に応じた適切な判断ができない傾向があります。

(3)気分によって違う行動をする

子どもは、外に出ると急に走り出したり、後ろ向きで歩くなど、気分によって大人では予測がつかない行動をすることがあります。

(4)大人の真似をしたがる

子どもは、赤信号を渡るなど、大人の良くないルール違反の行動を真似したりすることがあります。

(5)物陰で遊ぶことが好き

子どもは、物陰で遊ぶこともあり、車の運転手から見て死角となる場所にいることもあります。

(6)あいまいな言葉は理解できない

子どもは、「危ない」や「気を付けて」などの曖昧な言葉は、どうして危ないのか、何を気を付けるべきなのかが理解できないことがあります。

3 道路を横断する際に気を付けること

子どもが道路を横断する際、以下のような点に気をつけることで交通事故に遭う可能性を減らすことができます。

(1)安全な場所を横断する

横断歩道がある道路は、必ず横断歩道を渡るようにしましょう。
また、歩道橋がある場所では、面倒でも、歩道橋を利用するなど、安全な場所を横断するように心がけましょう。

(2)車が止まっていることを確認する

車が動いている中を横断するのは危険です。横断する前に立ち止まり、左右をよく確認したうえで、車が止まっていることを確認したうえで横断するようにしましょう。

(3)存在をアピール!

横断する際は、手を挙げ、存在をアピールし、横断中も左右をよく確認しながら横断するようにしましょう。

(4)幼児の一人歩きは禁止

幼児は、特に自動車や自転車の危険を理解できる年齢ではありません。幼児が外を歩くときは、必ず保護者が手をつなぎ、一人で歩くことがないように注意しましょう。

4 夜間の歩行の際に気を付けること

夜間の歩行は、歩行者からも、車の運転手からも見通しが悪いので事故が発生しやすく、特に注意が必要です。ポイントは目立つ格好をして歩くということです。

(1)夜間歩行中の交通事故の発生率は昼間の2倍!

夜間の歩行中に交通事故が発生する確率は、昼間の時間帯の2倍以上と言われています。

(2)明るい色の服装を心がける

夜間の歩行者は、車の運転手から見えにくくなります。歩行者が夜間の暗闇と同化する暗い色の服装だとより見えにくくなり、事故のリスクが高くなります。
したがって、歩行者は白色や黄色などの明るい色の服装をすることを心がけましょう。

(3)反射板を付けよう

反射板を身体に身に着けることはより効果的です。
反射板とは、車のライトの光を反射する素材で作られたもので、靴、衣服、自転車などに直接取り付けるタイプのものや、エコバッグ、キーホルダー、ブレスレットなどの商品も販売されています。
反射板のグッズは100円ショップなどにも売っており、手軽に購入することができます。

5 子どもが請求できる慰謝料

万一子どもが交通事故に遭い、怪我をしてしまった場合は、相手方に慰謝料を請求することができます。
慰謝料とは、精神的な苦痛を受けたことに対する損害賠償のことをいいます。

(1)大人と同じく3種類の慰謝料を請求できる

子どもについても、大人が交通事故に遭ったときと同様の内容の慰謝料を請求することができます。
慰謝料の種類は以下の3種類があります。

 ① 入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、交通事故で怪我をし、治療のために入院や通院を余儀なくされた場合に支払われる慰謝料です。
入通院慰謝料は、入通院期間やけがの程度によって金額が変わります。

 ② 後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ってしまった場合に支払われる慰謝料です。
後遺障害は、専門機関で後遺障害等級認定を受け、その等級に応じて慰謝料を獲得できます。

 ③ 死亡慰謝料

死亡慰謝料は、本人が死亡した場合に発生する慰謝料です。
本人の慰謝料のみならず、遺族の慰謝料も請求できる場合があります。

(2)大人と子どもで慰謝料の相場に違いはあるのか

入通院慰謝料や後遺障害慰謝料については、大人であっても子どもであっても、慰謝料の相場は違いません。
これは、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料については、怪我の程度や後遺障害の程度によって慰謝料の金額が決まるためです。
他方で、死亡慰謝料の相場については、家庭での役割によって金額が異なってきます。
すなわち被害者が大人で、家計を支えている方の方が、それ以外の方と比べると慰謝料の相場は高額になります。

(3)子どもの慰謝料が増額されるケース

上記のように、死亡慰謝料を除き、慰謝料の相場は大人と子どもで変わりません。
もっとも、慰謝料の算定基準によって慰謝料が増額できる可能性があります。
慰謝料の算定基準には3種類の基準があります。

 ① 自賠責保険の算定基準である自賠責基準

一般に、自賠責基準による算定金額は他の基準と比べて低額になります。

 ② 任意自動車保険会社の算定基準である任意保険基準

これは保険会社独自の基準ですが、自賠責基準と近い水準になることも少なくありません。

 ③ 弁護士基準(裁判基準)

これは、裁判所で認定される可能性が高い金額をベースとした基準で、最も金額が高くなる算定方法です。
したがって、慰謝料を増額するためには、弁護士基準(裁判基準)で算定し、相手方や相手方の保険会社と交渉することが肝要です。

(4)過失割合による減額

事故の状況によっては、慰謝料が減額される可能性もあります。
事故の状況によっては、子どもにも過失が認められるケースがあります。
子どもが歩行者であったとしても、横断歩道を赤信号で横断していたなどのケースでは、子どもにも一定程度過失が認められます。
その場合、加害者に対して損害賠償請求をしても、過失割合の分減額されることになります。

6 子どもが同乗している車で事故に遭った際の慰謝料

ご家族が運転する車で、子どもが事故に遭った場合、子どもは慰謝料を請求できます。

(1)赤ちゃんも慰謝料を請求できるのか

赤ちゃんもけがをした場合は、大人と同様に慰謝料を請求できます。

(2)胎児は慰謝料を請求できるのか

もっとも、胎児については、法律上請求する権利が認められていないため、請求できません。
もし、交通事故によって、胎児が流産してしまったなどの事情があれば、母親の固有の慰謝料として増額の請求ができる可能性があります。

7 子どもの慰謝料請求は誰がするの?

未成年者である子どもは、自ら相手方と交渉したり、裁判をすることはできませんが、子どもの親が法定代理人として相手方と交渉したり、裁判をすることになります。

8 子どもの交通事故で慰謝料以外に請求できるお金

子どもが交通事故に遭い、怪我をした場合、請求できるのは慰謝料だけではありません。
慰謝料の他に、治療費、家族が入通院に付き添った費用(付添看護費)、通院交通費、後遺障害逸失利益、物損なども請求できます。

9 まとめ

以上のように、子どもも交通事故の被害は多くあり、様々な子ども特有の交通事故の原因もあり、注意が必要です。
万一交通事故に遭った場合は、子どもも大人と同様に損害賠償請求ができますので、弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士に依頼すると、弁護士基準(裁判基準)での損害賠償の請求や過失割合の交渉等を任せられるので、損害賠償額の増額が期待できます。


執筆者:弁護士 森本 禎

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