遺産分割とは?基本的な流れ

2023/9/20

 

ご家族が亡くなられたら、相続人同士で遺産分割をするということは何となく聞いたことがあるかもしれません。
今回は、そもそも遺産分割とはどういうもので、どのような方法で行うのかなどについてご紹介します。

1 遺産分割とは?

遺産分割とは、亡くなった人(被相続人)の遺産を相続人同士で分ける手続のことをいいます。
被相続人が生前遺言書を作成している場合は、原則遺言書のとおりに遺産分割を行います。
ところが、遺言書が無い場合は、遺産は相続人の共有となり、この共有状態を解消する手続が遺産分割になります。

2 三つの手続

遺産分割の手続は、①遺産分割協議、②遺産分割調停、③遺産分割審判の3つがあります。
原則として①から③の手続は順番に進めていくことになります。

(1)遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人同士で、どの遺産を誰に分けるかということを話し合いにより行うことをいいます。
遺産分割協議は、後述の調停や審判とは異なり、裁判所を通さずに行います。
この段階で弁護士に依頼し、代理で話し合いをすることも可能です。

(2)遺産分割調停

遺産分割調停は、相続人同士のみの遺産分割協議では解決できない場合など、家庭裁判所で話し合いをする手続です。
遺産分割調停は、調停委員という中立の立場の者が間に入り、調整を行います。
遺産分割協議を行わずに、はじめから遺産分割調停を申立てることも可能です。

(3)遺産分割審判

遺産分割審判は、遺産分割調停で話し合いがまとまらない場合に自動的に移行する手続です。
遺産分割審判は、遺産分割調停と異なり、話し合いではなく、最終的に家庭裁判所が遺産分割の内容を決定します。
遺産分割協議は、話し合いによる解決が前提となっているので、遺産分割審判よりも先に遺産分割調停を行うことが原則となります。

3 遺産の分割方法

遺産分割は、⑴現物分割、⑵換価分割、⑶代償分割、⑷共有分割の4つの方法があります。

(1)現物分割

現物分割とは、現預金、不動産などの遺産を相続人同士で物理的に分ける方法のことをいいます。

(2)換価分割

換価分割は、不動産を売却するなど、遺産を売却してお金に換えたうえで、そのお金を相続人間で分ける方法のことをいいます。

(3)代償分割

代償分割とは、一部の相続人が遺産を取得する代わりに、その相続人が他の相続人に対して代償金を支払うことによる分割方法のことをいいます。
例えば、被相続人の自宅不動産を1名の相続人が現物分割で相続することになり、他に遺産が無い場合、他の相続人は相続する財産がありません。
そこで、不動産を相続した相続人が、他の相続人に対して金銭等の自己の財産を引き渡すというのが代償分割です。

(4)共有分割

共有分割は、遺産を複数人の相続人で共有する方法のことをいいます。
遺産は共有状態のままになるため、今後遺産を売却などをする場合に共有者同士で意見が対立し、トラブルになる可能性があります。

4 遺産分割の流れ

次に、一般的な遺産分割の流れについて解説します。

(1)遺言書の有無確認

まず、被相続人が遺言書を残していないか確認します。
遺言書があれば、遺産分割協議をするまでもなく、遺言書の内容に従って相続をすることになります。

(2)相続財産の確認

次に、相続財産としてどのような財産が有るかを確認します。
相続財産は、現金や不動産など、プラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
仮にプラスの財産よりもマイナスの財産が多いという場合は、相続放棄をして一切の財産を相続しないようにすることも選択肢の一つになります。

(3)相続人の確認

次に、相続人が誰なのかを確認します。遺産分割協議は、相続人全員で合意しなければ成立しません。
そのため、遺産分割協議が完了したとしても、協議する相続人に漏れがあった場合、有効な遺産分割協議とはならないので注意が必要です。

(4)相続人間で協議を行う

相続人全員で遺産分割の内容について協議を行ってください。
話し合いがまとまれば全員で遺産分割協議書を作成します。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、裁判所で調停員を交えて話し合いを進めることになります。

(5)遺言書がある場合

遺言書がある場合は、原則として遺言書に従って遺産分割を行います。
もっとも、遺言書の作成過程や方式に問題があれば遺言書が無効になる可能性があります。
その場合は相続人全員で遺産分割協議をすることになります。

5 まとめ

今回は、そもそも遺産分割とはどういうもので、どのような方法で行うのかなどについてご紹介しました。
相続人や相続財産が増えるほど、遺産分割も複雑になるため、トラブルになる可能性が高くなります。
トラブルを避けるためにも、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。


執筆者:弁護士 森本 禎

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