弁護士が解説する!親族が死亡したときにやること、禁止事項

2023/9/13

突然、身内が亡くなった場合、お葬式の他、どのような手続きをする必要があるのでしょうか。
そのような場面の経験がない、又はそれほど体験することもないことから、何をしてよいのか分からず困る、という声をよく耳にします。

1初七日までにやること

身内が亡くなったら、次の手続きを行っていきます。

(1)死亡診断書を受け取る

死亡日や死亡理由等が記載された死亡診断書を取得します。
死亡診断書は主治医等の医師が作成します。
事故死や突然死、自殺等の場合は警察に連絡し、監察医等による遺体の検案が行われ、死体検案書が作成されます。
これについては、警察医や監察医による遺体の検案と身元確認が行われます。
死亡診断書、死体検案書ともに交付に費用が発生するため、作成医師の所属する病院にお問合せ下さい。
また、診断書・検案書の提出が求められる場面が複数あります(金融機関の口座解約、年金停止処分等)。
そのため入手され次第コピーし手元に保管しておきましょう。

(2)死亡届を提出する

次に、死亡届を役所に提出、火葬許可書を取得します。
死亡届については、死亡の事実を知った日から7日以内 (国外で死亡があつたときは、その事実を知った日から三箇月以内)に提出する必要があります(戸籍法86条1項)。
死亡届には死亡診断書又は検案書を添付し提出いたします。
これらについては葬儀会社が代行することも多いことから、葬儀会社にご確認下さい。

(3)火葬許可証を受け取る

火葬するにあたって火葬許可証が必要となります。
これは死亡後24時間経過した後役所で取得可能となります。
死亡届を提出するタイミングで火葬許可証の発行も申込されるとよいでしょう。

(4)訃報の連絡をする

身内が亡くなったことについて、親族や知り合い等に連絡をします。
いざ誰に連絡していいのか分からない場合も多く、生前から連絡先のリストをまとめておくこともおすすめいたします。

(5)葬儀社への連絡、打ち合わせをする

必ず葬儀社に葬儀を依頼しなければいけないというものではありません。
しかしながら、葬儀社が火葬手続きを始めとする各種手続きを代行、サポートしてくれ、身内が亡くなり心身ともにつらい状況を助けてくれることもあります。

2親族死亡後すぐに行うべき手続き

親族が死亡した後、速やかに行うべき諸手続きがあります。
各種手続きを行うにあたり、死亡診断書や除籍謄本(死亡したことが記載された本人戸籍)の提出が求められることがあります。
そのため役所で本人の戸籍(除籍謄本)を複数取得いたしましょう。

(1)年金受給を停止

亡くなった方が年金を受給していた場合は、年金事務所に連絡し支給停止の手続きをします。
国民年金機構にマイナンバー登録されている方は死亡届の必要はありません。
しかし未支給年金を受給するには届出が必要となりますので、ご注意下さい。

(2)介護保険資格喪失届を提出

亡くなった方が要介護等の認定を受けていた場合は、役所に資格喪失届の提出が必要となります。

(3)住民票世帯主変更届を提出

亡くなった方が住民票の世帯主であった場合は、役所に世帯主変更届を提出する必要があります。

(4)雇用保険受給資格者証を返還

亡くなった方が雇用保険を受給していた場合、資格者証を返還する必要があります。

(5)国民年金死亡一時金を請求

国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を一定期間以上納めていた人のうち、老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれも受けないまま死亡したとき、遺族に死亡一時金が支給されます。
死亡から2年以内に請求する必要があります。
なお、遺族基礎年金を受け取る場合は、死亡一時金は支給されません。

(6)埋葬料の請求

亡くなった方が健康保険の被保険者であった場合、埋葬料として5万円を加入していた健康保険組合又は健保協会に請求することができます。

(7)葬祭費の請求

亡くなった方が国民健康保険か後期高齢者医療保険に加入していた場合、遺族は市区町村へ「葬祭費」の請求ができます。
金額は各市町村によって異なります。

(8)高額医療費還付申請

亡くなる前に入院をし、高額の治療費負担を行った場合、高額医療費の還付請求が可能な場合があります。
死亡から2年以内に加入していた健康保険組合等にお問合せ下さい。

(9)遺族年金請求

配偶者が亡くなった場合、遺族年金が請求可能なケースがあります。
遺族年金は年金事務所で手続きをしなければ支給を受けることはできませんのでご注意下さい。

(10)未支給年金の請求

年金は2か月ほど遅れて支給されます。
そのため亡くなった方の生前2か月間の年金が死亡後に受給可能となるため、忘れず年金事務所で手続きを行ってください。

3税金関係の手続き

(1)所得税準確定申告および納税

親や家族等が亡くなった場合、次の税金関係の手続きが必要となります。

①所得税の準確定申告・納税(4カ月以内)

 ②固定資産税の納税・現所有者申告

 ③相続税の申告・納税(10カ月以内)

申告期限に遅れると延滞税等のペナルティが発生する可能性があるため、なるべく早く対応いたしましょう。

4遺産相続に関する手続き

亡くなった人の相続人の間で、遺産分割の協議を行うこととなります。

(1)相続人の調査

まずは相続人の調査から始めます。
調査方法としては、被相続人の出生時から亡くなるまでのすべての戸籍謄本類を集めます。
戸籍謄本は、本人の本籍地の役所に申請します。

(2)相続財産の調査

被相続人名義の財産について調査を行います。
銀行に被相続人名義の口座がないか確認し残高証明書を取得したり、不動産については法務局で登記簿謄本を取得します。
なお、相続財産の調査について、もれなく行うためには専門家である弁護士に依頼されることをお勧めいたします。

(3)遺言書の確認

亡くなった方が生前遺言書を作成していなかったか、調査を行います。
遺言は自身で作成し、自宅等で保管している場合や、公証役場で公正証書を作成している場合等があります。
公正証書遺言については、公証役場で確認することができます。

(4)相続放棄・限定承認の検討・手続き

相続は、プラスの財産のみならず負債も承継します。
そのため被相続人に多額の負債があった場合、相続放棄や限定承認を検討することとなります。

 ①相続放棄とは

自身のために相続が開始されたことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に提出することをもって行う手続きです。
この手続きにより最初から相続人でなくなります。
そのため一切の債務、資産を引き継ぐことはありません。

 ②限定承認とは

相続財産について資産超過であればプラスになった部分に限って承継できる、限定承認手続きがあります。
相続人全員で行う必要があり、手続きも煩雑であることから実際に申し立てられる件数は少ないです。

(5)遺産分割をする

相続財産があれば、相続人の間でどのように分配するのか「遺産分割協議」を行うこととなります。
協議が整えば遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、亡くなった方の金融機関口座の解約等の際、提示が求められ、実印での押印、印鑑証明書の貼付等が必要となります。
そのため、遺産分割協議書の内容や作成方法についてお困りの方は、なるべく早くに弁護士にご相談下さい。
また、遺産分割協議が整わなかった場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることとなります。
調停でも協議が整わない場合は、争う内容によって、遺産分割審判や相続関連の訴訟に移行することとなります。

(6)相続登記手続き

協議等により遺産分割の方法が決まれば、財産の名義変更等を行います。
不動産に関して名義変更手続きが面倒と感じ、相続による登記変更手続きを行わない方も見受けられます。
この点、これまで相続登記に期限はありませんでしたが、2024年4月から相続登記が義務付けられます。
死亡3年以内に相続登記を行わなければ、10万円以下の過料が課せられる可能性があるので、ご注意下さい。

(7)銀行預貯金払戻しを受ける・名義変更する

亡くなった方名義の金融機関口座がある場合は、死亡後速やかに各機関に連絡します。
なお、連絡と同時に口座は凍結され、自由に金銭を出し入れ出来なくなります。
凍結後、解約や引出しを行う場合には、相続人全員の戸籍謄本や遺産分割協議書、印鑑証明書等が必要となります。

5まとめ

その他、株式を保有している場合は、株式の名義変更(もしくは種類によっては会社に買い取り請求)、自動車等の名義変更、クレジットカードの返却、運転免許証の返納、公共料金の支払変更、携帯やスマートフォンの解約等、多くの手続きが必要となります。
死亡直後の諸手続きについては、葬儀会社若しくは市役所で案内を受けることが可能です。
相続等の財産関係についてご不安な方は、弁護士までご相談下さい。