賃料を増額したい!その方法とは?

2023/8/23

賃貸借契約は、長期間継続することがあり、長い年月が経過すると、過去に取り決めをした賃料が時代の変化とともに不相当に低い状態になることがあります。
賃料が不相当に低くなった場合、賃貸人は賃借人に対して賃料増額請求権を行使できる可能性があります。
今回は、賃料増額請求権がどのようなものなのかについて解説いたします。

1賃料増額請求権とは

賃料増額請求権は、借地借家法という法律で認められており、経済事情の変動や、近隣の不動産と比べたときに賃料が不相当である場合に、当初の契約の条件にかかわらず、賃料の増額を請求できる権利です。

2賃料の増額を請求できる場合

賃料の増額はいつでも認められるわけではありません。
ここでは、賃料の増額が認められる条件について解説します。

(1)経済変動

賃料増額請求が認められる前提として、物価の上昇や税金の負担の増加、不動産の価値の上昇など、経済事情に変動があったことが必要です。

(2)賃料額が不相当

経済事情に変動があったことだけではなく、これまで契約で定められた賃料額が不相当になることが必要です。
近隣の同種の不動産の賃料相場と比較して賃料が安いことや、賃料を安く設定しておくべき特殊な事情がなくなった場合などは賃料額が不相当であるといえるでしょう。

3賃料増額の方法

次に、賃料増額を請求するために具体的にどのような方法で行うかについて見ていきます。

(1)賃借人との話し合い

まずは、賃借人と話し合いをして相当な賃料額を合意することを目指すことになります。

(2)賃料増額調停

話し合いにより双方納得のいく賃料の合意ができない場合は、簡易裁判所に賃料増額の民事調停を申立てます。
民事調停は、中立の立場の調停委員が当事者の間に入り、話し合いのサポートを受けることによって、合意による解決を目指す手続です。
賃料増額請求については、後述の賃料増額訴訟を提起する前に原則として必ず調停を申立てなければなりません。

(3)賃料増額訴訟

民事調停をしても合意による解決が困難な場合には、訴訟を提起し、裁判によって決着をつけることになります。
裁判は、証拠に基づいて賃料増額の可否を判断します。
話し合いとは異なり、双方合意をすることなく裁判所が結論を出しますが、証拠から増額が適切ではないと判断した場合には請求は棄却されます(訴訟においても、双方の合意に基づく和解による解決もあります)。
そのため、裁判により増額が認められない可能性があるケースでは、なるべく話し合いによる解決を目指す方が望ましいといえます。

4賃料増額請求の際のポイント

賃料増額請求をする際のポイントは以下のとおりです。

(1)増額についての通知はすみやかに

賃料増額請求権は、増額が正当なものであれば、増額請求をしたときから増額されることになります。
例えば、令和5年9月に賃借人に賃料増額請求の通知を行ったものの、賃借人が納得せず、訴訟となり、1年後に判決で賃料増額請求が認められた場合は、遡って令和5年9月分(賃料が前月末払の場合は10月分)から増額した賃料を受け取る権利があります。
したがって、賃料増額請求の通知はなるべく早い段階で行っておくのがよいでしょう。

(2)値上げの正当性を裏付ける根拠

賃料増額が認められるためには、交渉や調停においては相手方の説得、訴訟の場合は裁判所を説得しなければなりません。
そのため、賃料の増額を正当化する裏付けとなる根拠資料の提出が重要です。
例えば、近隣の同種の土地建物の賃料が分かる資料や、地価の上昇が客観的に分かる資料などを提出した方が良いでしょう。

(3)賃借人のメリットを提示

単に賃料増額を求めることは、賃借人にとっては負担が増えるため、デメリットしかありません。
そこで、例えば賃料を増額する代わりに、防犯カメラやオートロックなどのセキュリティを強化したり、共用部分を充実させるなど、賃借人にとってもメリットがある提案を同時にすることで、納得が得られる可能性が高くなります。

5賃料増額請求の際の注意点

以下の場合は賃料増額請求が認められないので注意が必要です。

(1)賃料不増額特約

契約書に、一定期間は賃料を増額しない旨の賃料不増額特約が盛り込まれている場合があります。
この場合は訴訟をしても、契約で定められた一定期間は賃料増額が認められません。

(2)駐車場契約は賃料増額請求ができない

賃料増額請求権は、借地借家法という法律で認められていますが、借地借家法の適用のない賃貸借契約の場合は認められません。
例えば、土地の賃貸借契約については、建物の所有を目的とする場合に借地借家法の適用があります。
駐車場の賃貸借契約の場合、建物の所有を目的とするものではないので、借地借家法の適用は無く、賃料増額請求権は認められません。

6まとめ

賃料増額請求は、賃借人にとっては負担が大きいものであるため、賃借人の反発が予想されます。
そのため、話し合いを進めるにあたり、増額の理由を根拠をもって説得的に説明し、反発を抑えるために、弁護士が代理人となって交渉をすることもできますので、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。