専業主婦/主夫だけど離婚したい!

2023/8/22

 

専業主婦(主夫)の方が離婚を悩まれる際に、最も大きな問題としてお金の問題があります。
離婚後は相手方の扶養に入れないことから、自身で保険や年金を支払う必要があり、また生活費等を稼ぐ必要も出てきます。
では、専業主婦(主夫)が離婚するためには、どのように進めればよいのでしょうか。

1 専業主婦/主夫が離婚するための準備

まずは、離婚後の生活を考えて、経済的自立ができるよう職を探すことをお勧めいたします。
長らく専業主婦(主夫)をしており職歴がない、とご心配される方も多いことでしょう。
安定した雇用を考えると正社員がベストではありますが、正社員でなくても雇用保険等に入れる場合があります。
働き方にも、パートから派遣社員、フリーランスと幅広くあることから、離婚後のご自身の生活を想定して、求職をしてみてください。
求職に当たっては、求職サイトの他、ハローワーク等でも募集があるので、離婚をお考えの方は、まずはそちらに足を運んでみてはいかがでしょう。
次に、離婚協議において、どのような主張が可能となるのかみていきましょう。

(1)親権について考える

専業主婦(主夫)であっても、離婚時に親権を獲得することは可能です。
親権者を定めるには、基本的に双方の話し合いによって決めますが、話し合いによって定まらない場合は、調停や裁判で定めることとなります。
裁判所で親権者を定める場合は、①父母の双方の事情(監護に関する意欲、健康状態、居住環境等)、②子の事情(年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況、子の考え)等を考慮しながら決定します。

代表的な考慮基準として、
【現状維持の原則】従前、主に子を監護してきた者が引き続き監護を担うべき、とする考え

【母性優先の原則】子供が幼い場合、特段の事情がない限り、母親の監護養育にゆだねることが子の福祉に合致するという考え

【子の意思の尊重】父母のどちらが親権者になるかについて、子の意思を当然重視すべきとする考え

【兄弟姉妹不分離の原則】原則、兄弟姉妹を分離しないとする考え
が挙げられます。

【母性優先の原則】については、父親の育児参加も近年進んできていることから、必ずしも母親が当然優先されるものではなく、どちらがより子の監護を主に行っているのか、「現状維持の原則」によって判断される傾向にあります。
このことから、専業主婦(主夫)の場合、子と一緒に過ごす時間が配偶者に比べて多く、主に監護を担ってきたとして、結果的に親権を取得することが多いといえます。
しかしながら、専業主婦(主夫)が親権者として指定されても、離婚後に自立した生活が全く見込めない場合等には、現実的に子との生活を送ることが困難となることも考えられます。
そのため、親権を取得した後の生活も考えて、できるだけ職を探し、どうしても収入が見込めない場合は、各種手当て等により生活の見通しを立てておきましょう。

(2)離婚原因の検討と証拠の収集、保全

離婚原因に関して、相手方に責任がある場合(有責)、相手方に慰謝料を請求できるケースがあります。
有責性の原因として、①不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④その他婚姻を継続しがたい重大な事由があり、いわゆる浮気については①、DV等については④に該当する可能性があります。
相手方から離婚を求められ、またはご自身で離婚を決意された場合、まずは相手方に離婚原因がないかご確認下さい。
上記原因がある場合は、離婚原因を裏付ける証拠を押さえておきましょう。
具体的には、LINEや写真、録音データ等が挙げられます。

(3)配偶者に請求する内容、金額の検討

離婚に当たって、相手方に離婚原因がある場合慰謝料を請求できる場合があります。
その他、財産分与や養育費(子供がいる場合)の請求も可能です。
養育費は離婚後の子どもに対する扶養義務を金銭的に評価したものとなり、離婚までは婚姻費用の請求を行うこととなります。

①財産分与にあたって

まずは家庭内の財産について把握する必要があります。
金融機関預貯金、有価証券、不動産、保険の解約返戻金、暗号資産等が挙げられます。
これらについて、今後の財産分与の資料とするためにも、事前に写しを手元に集めておいた方がよいです。

②養育費・婚姻費用について

養育費、婚姻費用は主に、双方の収入から算定することとなります。
そのため、配偶者の現在の収入が分かる資料(源泉徴収票や確定申告の資料等)も確認しておいた方がよいかと思います。
これらの資料を事前に確保し、離婚協議においてどの程度の財産分与を主張できるのか、ある程度見通しを立てておいた方が、離婚協議に臨むにあたって不安が少しでも払拭されると思います。

(4)離婚後の家計シミュレーション

専業主婦(主夫)であれば、原則離婚後は、それまでと同じ生活が保障されるわけではありません。
離婚後の生活費をどこから捻出するのか、財産分与における獲得予想金額、養育費の額等を基に、家計のシミュレーションをしておいた方がよいかと思います。
なお、どうしても費用が足らない、といった場合には生活保護を検討してみるのも方法です。

2 離婚の切り出し方

専業主婦(主夫)の方が離婚を切り出すタイミングはお悩みになる方も多いです。
早く離婚をしたいという気持ちもあるかもしれませんが、上記の通り専業主婦は離婚後の生活も踏まえて、ある程度準備をしてから協議を進める必要があります。
そのため、できれば就職先を確保し、財産分与等の資料を確保してから、相手方に離婚を切り出したほうがよいかと思います。

3 別居したら婚姻費用を請求しましょう

子どもに対してのみならず配偶者に対しても扶養義務があります。
当該扶養義務は別居をしていても原則免れることはできません。
すなわち別居をスタートすれば相手方に子どもの分のみならずご自身の分として婚姻費用を請求することをお忘れなく。

4 離婚時に請求できるお金

(1)財産分与

離婚協議に当たり、婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産の分与を求めることができます。
財産分与に当たっては多額の資産をお持ちでない方であっても、何かしらの分与が行われることが多いことから、請求せず離婚する、といったことは極力避けたほうがよいかと思います。
また、何か理由があり長年専業主婦(主夫)を行い、年齢的にも離婚後に就職が困難な方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合は、財産分与において扶養的な意味合いを持たせて、一方当事者の取得分を通常の取得額より多額とする方法もあります。
ご自身のケースでは具体的にどのような主張が可能か、離婚をお考えの方は一度弁護士にご相談下さい。

(2)慰謝料

前述の通り、相手方に離婚原因がある場合は、慰謝料請求を行うことも可能です。
不貞行為が離婚原因の場合は、配偶者のみならず不貞相手にも賠償請求を行うことが可能です。
できるだけ離婚後の財産を確保したいとお考えの方は、不貞相手への慰謝料請求も検討してみてはいかがでしょうか。

5 離婚後は生活が一変する

専業主婦(主夫)の場合、離婚後の生活はがらっと変わってしまいます。
経済的自立が求められ、子どもが小さい場合は、仕事をしながら一人で面倒を見る必要が出てくる場合もあります。
大きな生活の変動に対応することはたやすいことではありませんが、行政等に支援機関も数多くあります。
一人でお悩みになることなく、どのような手当があるのか等、一度市役所に行って相談してみるのもいいでしょう。

6 まとめ

以上のように、専業主婦(主夫)の方が離婚を進めるには、十分な準備を要します。
そのため、離婚を検討中の方はなるべく早くに弁護士に相談してみてください。


執筆者:弁護士 稲生 貴子

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