突然の交通事故!するべきこと、してはいけないこととその手順について
2023/7/28
交通事故は、一生に一度遭うか遭わないかの出来事だと思います。
しかし、不幸にして交通事故に遭ってしまった場合に備え、どのように対処すべきかについてあらかじめ理解しておくとトラブルになるリスクを減らすことができます。
今回は、交通事故が発生した場合にすべきことやすべきでないことについて、交通事故発生時からの流れに沿ってご説明いたします。
1 事故発生から終了まで、被害者が行うべきことと流れ
まず、交通事故の発生から損害賠償の示談が終了までの大まかな流れを見ていきます。
(1)救護と安全確保
一番にすべきことは、身の安全の確保です。
けがをしていれば救急車を呼び、けが人の救護をして下さい。
二次災害を防ぐために、車両を移動させるなど、安全を確保したうえで行うようにしましょう。
(2)警察に通報する
警察には事故の通報をしてください。
警察への通報は道路交通法上の義務なので、通報を怠ると刑事罰が科される可能性があります。
相手方に通報しないようにお願いされたり、軽微な事故であった場合でも、必ず警察に通報するようにしましょう。
(3)加害者と連絡先の交換
今後加害者と示談をすることになるので、加害者とは連絡を取り合えるように、氏名、住所、電話番号などの連絡先の交換をして下さい。
加害者が自動車保険に加入している場合は、保険会社の名称も確認しておく方が良いでしょう。
(4)受けた被害の記録
事故の状況や車両の損傷箇所などは、後日当事者間で争いになることがあります。
そのため、被害の状況を明確にしておくために、車両の位置関係や角度、車両の損傷箇所などは写真に収めておいたり、事故時のドライブレコーダーの映像を保存しておくなど、受けた被害を記録しておいた方が良いでしょう。
(5)加害者側及び自分が加入している保険会社へ連絡
ご自身が自動車保険に加入している場合は、保険会社にも連絡し、事故の報告をしてください。
加害者が自動車保険に加入している場合は、加害者から保険会社に事故の報告するように伝えてください。
(6)ケガをしていなくても病院に行く
ご自身の感覚として痛みが無かったり、一見ケガをしていない様子でも、念のため病院に行き、検査をしてもらってください。
交通事故ではむちうちになることが多いですが、むちうちの症状は、事故当日はほとんどなく、翌日以降に発症することがあるからです。
事故から日数が経過してから病院に行くと、加害者側から事故とは無関係の症状であるとして、治療費の支払いを拒まれるというトラブルになる場合があるので、早めに病院に行くようにしてください。
(7)ケガが治らない場合は後遺障害認定
通院し、治療を継続しても状態が改善しなくなり、障害が残ってしまった場合は、自賠責保険に対して後遺障害等級認定を受ける申請をすることになります。
後遺障害が認定されると、認定された後遺障害等級に応じて慰謝料や逸失利益といった賠償を請求することができます。
(8)加害者側と示談交渉
治療が終了したとき、または後遺障害等級認定の結果が明らかになった時点で、相手方と示談交渉をすることになります。
こちらが請求した賠償金に対して、加害者や保険会社も対案をしめして話し合いを行います。
条件面で折り合いが付けば示談成立となります。
条件面で折り合いがつかなければ裁判をして決着をつけることになります。
賠償金を請求できる項目は概ね以下のとおりです。
Ⅰ 通常請求できる賠償金項目
後遺障害が無い場合で通常請求できる賠償金項目は以下のとおりです。
①治療関係費:治療費、入院費、整骨院における施術費など
②入院雑費:入院時に必要となる日用品等の雑費
③交通費:入通院時の移動に交通機関を利用した場合の交通費
④付添看護費:入通院時に付添看護を要した場合の費用
⑤休業損害:入通院により仕事を休業して減収した分の損害
⑥入通院慰謝料:ケガにより精神的苦痛を受けたことに対する賠償
⑦物損:修理費用や代車費用、所持品の損傷に対する賠償など
Ⅱ 後遺障害を受けたときに請求できる賠償金項目
後遺障害を負った場合は、上記①~⑦に加えて以下の費目を請求できます。
①後遺症害慰謝料:後遺障害が残存したことによる慰謝料
②後遺障害逸失利益:後遺障害により労働能力に支障が出た分の将来の収入分
Ⅲ 死亡したときに請求できる賠償金項目
被害者が交通事故により死亡してしまった場合は、以下の賠償金項目を請求できます。
①葬儀関係費:葬儀にかかる費用
②死亡慰謝料:死亡したことによる精神的苦痛に対する慰謝料。死亡した本人と、その近親者の慰謝料が両方請求できる場合があります。
③死亡逸失利益:死亡したことにより、働けなくなったことにより失われる将来の収入分
2 被害者が死亡している場合
被害者が死亡した場合は、残された遺族が事故対応をする必要があります。
遺族がすべきことは以下のとおりです。
(1)遺族がすべきこと
Ⅰ 葬儀・法要
被害者の葬儀や49日法要等の法事を行います。
加害者から香典を提供される場合がありますが、これは原則として損害賠償の一部にはなりません。
Ⅱ 警察の取り調べや刑事裁判
警察から遺族に対して、生前の被害者との関係や加害者への処罰感情などについて取調べを受けることがあります。
その後、加害者の刑事裁判において、加害者に質問したり、意見を述べたりできる被害者参加制度を利用して刑事裁判に参加することができます。
Ⅲ 加害者側の保険会社との示談交渉
民事では、加害者または加害者側の保険会社と示談交渉を行うことになります。
(2)相続人が損害賠償請求を行う
示談交渉は、被害者の法定相続人が行います。
法定相続人は、被害者に配偶者がいれば、常に相続人になります。
配偶者以外の相続人は、①子、②父母(直系尊属)、③兄弟姉妹の順番で相続人となります。
Ⅰ 請求可能な賠償金項目
相続人が請求可能な賠償金項目は、上記1(8)のⅠ及びⅢで記載したものになります。
3 被害者がしてはいけないこと
これまでは、交通事故に遭ったときにすべきことについて説明しました。
次に、してはいけない注意点について説明いたします。
(1)事故発生直後に当事者だけで示談しない
交通事故直後、加害者から、賠償額の提示があっても、すぐに示談してはいけません。
一度示談をしてしまうと、それを撤回して追加で請求することができなくなります。
したがって、すぐに示談交渉をするのではなく、損害額が確定してから示談交渉を進めるようにしてください。
(2)安易に物損事故として届け出ない
事故直後に、加害者から物損事故として警察に届出をしてほしいと言われることがあります。
しかし、ケガをしている場合は、人身事故として届け出るようにしてください。
物損事故として届出をしていると、後日治療費や慰謝料の請求をした際に、物損事故であることを理由として支払いを拒否されたり、減額されたりする可能性があるからです。
(3)不要な治療を受けない
治療費は、治療に必要かつ相当な範囲でのみ認められます。
逆に言うと、過剰な治療や高額な治療については、不必要であったり不相当な治療になるので、費用が損害として認められない可能性があります。
治療費についての詳細は、下記ページも参考にしてください。
(4)医師の指示に従わない
治療費は、治療に必要かつ相当な範囲でのみ認められます。
医師の指示に従わず、勝手に整骨院やマッサージの施術を行うことは、かえって症状を悪化させるリスクもありますし、治療費として損害賠償が認められないリスクもあります。
したがって、治療は医師の指示に従うようにしてください。
(5)保険会社の言うことを鵜吞みにしない
保険会社は、一定の交通事故の知識は有しているものの、法律問題の専門家ではありません。
また、加害者側の保険会社であれば、どうしても加害者側の立場に立った主張をせざるを得ません。
したがって、保険会社の言うことを鵜呑みにしてしまうと、適正な賠償が得られない可能性があります。
特に、後述の慰謝料については、算定基準に拠って金額が大きく異なる場合があるので要注意です。
4 被害者が受け取れる慰謝料3種
慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償のことをいいます。
交通事故で慰謝料が発生するパターンは以下の3種類です。
(1)入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、ケガにより精神的苦痛を受けたことに対する賠償です。
(2)後遺障害慰謝料
後遺症害慰謝料とは、後遺障害が残存し、精神的苦痛を受けたことに対する賠償です。
(3)死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故と死亡し、精神的苦痛を受けたことに対する賠償です。
死亡した本人固有の慰謝料と、死亡した方の遺族固有の慰謝料の2種類があります。
5 慰謝料の計算に関する3つの基準
慰謝料の計算方法は、大きく分けて3つの基準があります。
詳細は下記ページもご参照ください。
(1)自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険が慰謝料を認定する際に算出する基準です。
自賠責保険は被害者の最低限の補償を目的としているため、3つの基準のうち最も低額になることが多いです。
(2)任意保険基準
任意保険基準は、任意保険会社が独自に設定した基準になります。
任意保険は、自賠責保険を上回る損害の補償をする保険なので、自賠責保険の基準より高くなることが多いです。
もっとも、下記の弁護士基準(裁判基準)と比較すると低額になります。
(3)弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準(裁判基準)とは、裁判をしたときに裁判所が認定する慰謝料の金額を前提とする基準です。
慰謝料の算定基準としては最も高額な基準となります。
基準自体は、文献やインターネット等で調べることができますが、弁護士からの請求でなければ保険会社は弁護士基準での請求に応じないことが多いです。
6 まとめ
以上より、交通事故発生から示談による解決までの流れについて解説しました。
交通事故に遭ってしまったらすべきことや注意すべきことが多岐に渡ります。
そして、すべきことをしていなかったり、誤ったことをしてしまうと、最終的に示談交渉の際に不利になってしまうおそれがあります。
したがって、そのような事態にならないように、交通事故に遭われた場合は、早めに弁護士にご相談ください。
執筆者:弁護士 森本 禎
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