離婚後の姓ってどうする?
2023/7/11
結婚によって姓を変更した方にとっては、離婚後に姓を旧姓に戻すか、そのまま継続して名乗るかは、日常生活に影響する悩ましい問題かと思います。
今回は、離婚後の姓をどうした方が良いのか、それぞれのメリット、デメリットを踏まえてご説明いたします。
1 離婚後の姓の名乗り方、2つの選択肢
結婚しても姓を変えずにいた方は、離婚してもそのままの姓を名乗ることになります。
結婚して姓を変えた方は、離婚時に旧姓に戻すことも、結婚中の姓をそのまま名乗ることもできます。
(1)通常、離婚後は旧姓に戻る
結婚により姓を変えた方は、何の手続もしなければ、離婚をすると旧姓に戻るのが通常です。
(2)婚姻中の姓を継続して名乗る
旧姓に戻したくなければ、結婚中の姓を継続して名乗ることも可能です。
結婚中の姓を継続して名乗るためには、離婚の日から3か月以内に、離婚時に名乗っていた姓を継続して称する旨の届出をすることにより、結婚中の姓を継続して名乗ることができます。
2 旧姓に戻る場合のメリット・デメリット
旧姓に戻る場合には、以下のようなメリット、デメリットがあります。
(1)メリット
旧姓に戻るメリットは、相手方の姓を名乗らなくてよくなるという点にあります。
夫婦が夫婦が離婚をする事情は様々ですが、相手方に愛情がなくなったり、嫌悪感を抱くようになり、離婚に至るケースもあると思います。
そのようなケースでは、心情的に相手方の姓を名乗りたくないと考えることも多いでしょう。
(2)デメリット
他方、デメリットとしては、身分証や印鑑等の名義変更をしなければならないことが挙げられます。
また、離婚をしたことが周囲に知られてしまうということもデメリットと言えるでしょう。
この点については、仕事上で名乗る姓は変更しないことで対応することも可能です。
3 婚姻中の姓を継続して名乗る場合のメリット・デメリット
婚姻中の姓を継続して名乗る場合には、以下のようなメリット、デメリットがあります。
(1)メリット
婚姻中の姓を継続するメリットとしては、離婚後も身分証や印鑑等の名義変更をする必要がないこと、離婚をしたことが周囲に知られにくいということが挙げられます。
(2)デメリット
他方、デメリットとしては、再婚して離婚する際は、再婚前の姓と、再婚後の姓のどちらかを選択することになり、旧姓に戻すことができなくなります。
また、再婚をしないとしても、後日旧姓に戻したいと思っても、簡単に戻すことができず、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
4 離婚後の子供の姓の名乗り方、3つの選択肢
上記は、離婚後の夫婦の姓についての説明になります。
夫婦が離婚をしても、その子供の姓は当然に変わるわけではなく、同居していたとしても親子で別々の姓になることもあり得ます。
ここでは、婚姻時に妻が夫の姓を名乗っていた場合を例として解説します。
(1)父親の姓のまま
夫婦の間にできた子供が、母親(妻)と一緒に同居することになったとしても、子供の戸籍は父親と同じ戸籍のままです。
同じ戸籍同士の家族は同じ姓を名乗ることになるので、子供の姓は同じ戸籍である父親と同じ姓を名乗ることになります。
(2)父親の姓のまま(戸籍は母親)
戸籍は母親と同じにしたいものの、離婚をしたことを公にしたくないなどの理由から、父親の姓のままにしておきたいという場合は、母親が離婚の日から3か月以内に、離婚時に名乗っていた姓を継続して称する旨の届出をしたうえで、子供が母親の戸籍に入籍する手続をすることで、父親の姓を名乗りつつ、戸籍を移すことができます。
(3)母親の旧姓を名乗る
子供も母親の旧姓を名乗るためには、家庭裁判所に氏の変更許可申し立てをして、母親の旧姓に変更する手続をしなければなりません。
5 選択的夫婦別姓について
現行法では、婚姻すると、夫婦は、どちらかの姓を名乗らなければなりません。
しかし、日本ではほとんどの夫婦が夫の姓を選択しており、姓の変更による職業上の不利益や、実質的な不平等があるのではないかとして、夫婦がそれぞれ別姓を名乗れるようにすべきとの議論があります。
選択的夫婦別姓を認めない現行法が憲法に違反するか否かが最高裁で争われましたが、最高裁は合憲と判断しています。
選択的夫婦別姓は賛否両論あるところですが、15人の最高裁判事のうち、4名は違憲と判断していることから、今後の時代や議論の流れによっては選択的夫婦別姓が認められることになるかもしれません。
いずれ最高裁判所において違憲判断が出ることになるのか、それとも、国会が選択的夫婦別姓を取り入れて立法的解決をはかるのか、動向が気になるところです。
6 まとめ
このように、離婚後の姓の名乗り方は自由に選ぶことができますが、選び方によっては家庭裁判所の手続きが必要になる場合があります。
手続についてご不明点がございましたら、弁護士にご相談ください。
離婚後の手続だけではなく、離婚前のご相談ももちろん受け付けておりますので、お早めにご相談ください。
執筆者:弁護士 森本 禎