親権者の指定に関する判例

2017/9/12

 

 

夫婦が離婚をする際に、その夫婦に未成年の子がいる場合には、その親権者を決めなければなりません。
もちろん、夫婦間で話し合って親権者を定めることができる場合には、話し合いにより親権者を決定できます。
ですが、どうしても双方が譲らない場合には、最終的に裁判所で決めることになります。
最近、親権者の指定について、最高裁判所でこんな決定が出ましたのでご紹介いたします。

1 事件の概要

平成22年、妻が夫に無断で、当時2歳4か月の長女を連れて家を出ました。
その後、妻が夫を相手取り、離婚や親権者を自分(妻)とすることを求めました。
自分(妻)が親権を持った場合の、離婚後の長女との面会交流についての双方の主張はこうでした。
※面会交流:離婚後や別居後に子を引き取った親が、もう一方の親に子を面会させたり交流させたりすること。

妻「月1、2回程度」

夫「年間100回程度」(!)

妻の主張が一般的です。
年間100回の頻度というと、離婚した相手と3日に1回程度会う事となります。
これを受けて,第1審である千葉家裁松戸支部は、

「長女が両親の愛情を受けて健全に成長するには夫を親権者にすべき」

と判断しました。
多数回の面会を約束していることが評価されたようですね。
この1審判決は、現在の生育環境を維持するために同居中の親を優先する「継続性の原則」より、欧米的な「フレンドリーペアレントルール(より相手に寛容な親を優先する基準)」を適用しており、異例の判決であると注目されました。

しかし、妻は当然不服です。
控訴審の東京高裁はこれに対して、

「子の養育状況などを総合的に考慮して親権者を定めるべきで、面会交流は唯一の判断基準ではない。

 長女は母親の元で安定した生活を送っている。」

として、妻を親権者と定めました。
この判決に対し、夫は最高裁判所に上告し、判断を求めますが、その求めを退ける決定が出ました。
判決は控訴審の「親権者は母親」で確定です。

2 注目するポイント

第1審から判決は逆転していますし、控訴審の言っていることも正しいとも思います。
最高裁の判断もうなずけます。
しかし、今回の事件で注目すべきは第1審の判決です。
離婚が増加の一途をたどる近年、別居時に子を一方的に連れ去り、その後面会がままならない別居親子が増えているそうです。
子と面会できない別居親の存在に光を当てた、意義のある判決だったと感じます。


執筆者:弁護士 瀧井 喜博

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