相続放棄あれこれ
2022/9/30
相続放棄という言葉はご存じでしょうか。
本稿では、相続放棄とは何かや、相続放棄をするべきケースはどのような場合か、そして、弁護士に相談したほうがいいのではないかと考えられるケースについてご紹介したいと思います。
1 相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人の財産について相続の権利を放棄することをいいます。
被相続人とは、亡くなった人のことをいいます。
相続放棄は、相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出して行います。
つまり、3か月以内というタイムリミットがありますので、注意してください。
2 限定承認との違い
相続放棄と少し似た制度で、限定承認というものがあります。
限定承認とは、相続人が相続財産から被相続人のマイナス財産を清算して財産が余ればそれを引き継ぐという方法です。
例えば、被相続人に100万円の貸金(プラス財産)と30万円の借金(マイナス財産)があった場合、70万円について相続するような場合です。
逆に、30万円の貸金(プラス財産)と100万円の借金(マイナス財産)である場合は、プラス財産の範囲でのみ弁済をすることがあり得ます。
ただし、限定承認は、相続人全員の同意が必要であり、手続に手間がかかるため、長期化する可能性が高いです。
以上より、相続放棄と限定承認の違いについて、相続放棄は、はじめから相続人ではなかったことにする制度ですが、限定承認は相続人であることには変わりないということになります。
3 相続放棄をするかしないか検討するべきケース
(1)借金が総資産よりも多い場合
プラス財産よりもマイナス財産の方が多い場合、すなわち債務超過の場合は、相続すると、マイナスの財産の方が多いため、被相続人の借金を肩代わりするような状況になります。
債務超過であるかどうかを確認するために、財産調査を行いましょう。
その際は、郵便物も忘れずにチェックしてください。上述のとおり、相続放棄には3か月の期間制限がありますので、財産調査は1から2か月を目安にスピーディに行いましょう。
相続についての弊所の他記事もご参照ください。
・今更聞けない?相続の基本な流れ~相続手続の手順やしなければならないことについて~
(2)山林や農地、廃墟など、管理にお金や手間がかかる不動産が相続財産となっている場合
債務超過でない場合でも、相続人が遠方の土地や山林を相続する場合、ご自身でこれらの不動産を管理するのは難しいですよね。
かといって、管理を依頼するとなると、余計に費用が掛かってしまいます。
山林や農地の場合、収入を生み出すことは難しく、費用は掛かるのに収益はないという状況も考えられるので、相続するメリットがないと考える相続人も多いです。
(3)被相続人が連帯保証人になっていた場合
被相続人自身には借金が無いとしても、連帯保証人になっている場合があります。
連帯保証人とは、債務者が金銭を返済しない場合に、債務者に代わって借金を返済することを約束した人のことをいいます。
連帯保証人は、債権者(金銭の貸し手)から返済を請求された場合、自分よりまず債務者に請求するように主張できません。
つまり、返済を請求されたら、すぐに返済しなければなりません。
連帯保証の種類によっては、相続の対象となるため、相続放棄をするか否かの判断が必要となります。
(4)借金のほかに死亡保険金がある場合
死亡保険金は、受取人が被相続人でない場合、原則として民法上の相続財産に該当しません。
ですので、相続放棄をしても死亡保険金は受け取ることができる場合があります。
相続放棄をしても受け取れる死亡保険金は、例えば、受取人が「相続放棄をした人」と指定されているものや、受取人指定はなくても「法定相続人が受取人となる」と約款等に定められているものが挙げられます。
このような場合は、相続放棄を検討してみてもいいかもしれません。
4 弁護士に相談したほうがいいケース
(1)期限内に財産調査等の手続きを完了できるか不安な場合
相続放棄には相続開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないという期間制限があります。
被相続人が亡くなられて精神的に不安定な状況にもかかわらず、期間制限内に被相続人の財産調査を的確に網羅的に行うことは困難な場合もあると思います。
そのような場合は、弁護士に依頼することもお考えください。
(2)そもそも相続放棄が適切なのか分からない場合
財産調査はご自身で行えるとしても、相続放棄をする方が得なのか、相続をする方が得なのか、分からない場合もあると思います。
この判断に悩まれている場合も、弁護士に相談することを検討してみてください。
追加で財産調査をする必要がある場合もありますので、できるだけ早く弁護士に相談する方がいいでしょう。
(3)相続から3か月経過した場合
相続放棄の期限は、「相続の開始があったことを知った時から3か月以内」(民法915条1項)とされていますが、被相続人が亡くなられた時と同人が亡くなった日を知った時が異なる場合、期限を過ぎていても相続放棄が可能な場合もあります。
このような場合に、ご自身で相続放棄が可能なのか判断をするのではなく、弁護士に相談することも検討してみてください。
(4)忙しい場合
相続放棄をすると決めた場合であっても、忙しくて必要書類を集めたり財産調査をする時間が確保できないこともあるでしょう。
その際にも、ご相談いただければ、弊所で代理人として手続きを行います。もちろん、事前にお見積りをお出ししますのでご安心ください。
5 まとめ
相続放棄は期間制限があり、そのうえ財産調査が困難な場合もあります。
ただでさえご親族がなくなりバタバタし、気も動転していることも多いです。
そのため、ひとりで抱え込まずに、専門家に相談することを検討してみてはいかがでしょうか。
弊所では、相続に関するご相談は、初回無料となっておりますので、お気軽にお問合せください。
執筆者:弁護士 森本 禎