経営者(社長)の離婚について
2021/4/22
みなさん、こんにちは。
本日は、経営者の方の離婚について、ご説明したいと思います。
経営者の方は、一般家庭よりも高収入であることが多く、また、財産分与に関しても一般家庭にはない特有の問題が生じる可能性があります。
以下では、問題になることの多い
1婚姻費用・養育費
2財産分与
に限って説明していきたいと思います。
1 婚姻費用・養育費
(1)婚姻費用・養育費
婚姻費用・養育費については、一般的には、算定表を基準に決められることが多いです。
ところが、この算定表は、上限額が給与収入の場合2000万円(自営業者の場合は1567万円)とされています。
それでは、算定表の上限額を超える収入がある場合、婚姻費用・養育費をどのように算定すればいいのでしょうか。
(2)婚姻費用
婚姻費用について、算定表の上限額を超える収入がある場合には、以下①と②の方法があります。
①算定表の上限額を上限とする方法
②実際の年収に応じて婚姻費用も増加していくとする方法
これらの方法は、いずれが正しいというものではありませんが、算定表の上限額を500万円程度超えるにすぎない場合には、①の方法がとられることが多く、それを超える場合には、②の方法がとられることが多いです。
当事者は、問題となっている事案において、どのような計算方法がその問題の解決に適切であるかを主張していくこととなります。
これに対して、養育費の場合は、基本的に算定表の上限額を上限とする方法がとられることが多いです。
養育費については、高額所得者であるからといって無制限に増加するわけではないと考えられるからです。
2 財産分与
(1)会社財産
会社財産について、会社と経営者とはあくまでも別人と考えられるので、会社財産は財産分与の対象に含まれません。
もっとも、会社財産とは名ばかりで、実質的には、夫婦の一方又は双方の資産と同視できる場合には、公平の観点から、財産分与の対象に含めるとされることもあります。
(2)株式
経営者の離婚の場合、婚姻後に取得した株式も財産分与の対象となり得ます。
さらに、夫婦で株式を保有している場合には、配偶者の保有する株式についても財産分与の対象とすることを忘れないようにしておかないと、離婚後も、元配偶者が会社経営に関与できることになってしまいます。
このような場合には、経営者が配偶者の保有する株式を適切な時価で買い取るよう取り決めておく必要があります。
適切な時価がいくらであるかの評価も難しいですが、株式に市場価格がある場合には、市場価格を基準にして判断します(裁判の場合、基準時は、口頭弁論終結時又は裁判時とされています。)。
市場価格がない場合には、会社の規模や性質に応じた判断方法により判断していくこととなります。
3 まとめ
今回、経営者の離婚において、特に問題となることの多い婚姻費用・養育費と財産分与に限ってご説明させていただきました。
この他にも経営者の方の離婚においては、一般家庭の離婚とは異なる問題が生じてきます。
離婚について適切な話合いをするためにも、まずは専門的な知識を持った弁護士にご相談にされることをおすすめいたします。
執筆者:弁護士 前川 恵利子