『バカッター』問題~不適切な動画のSNS投稿で従業員を解雇できるの?~

2019/3/22

 

こんにちは。
ここ最近、TwitterやInstagram等のSNSに、勤務中などに不適切な動画を撮影してSNSで流すといったことがニュースに取り上げられています。
有名なものだと、従業員が売り場のアイスクリームのケース内で寝そべっている写真をTwitterに投稿したり、一度ゴミ箱に投棄した魚を調理する映像を投稿したりするなど話題になっています。
これらの問題は、特にTwitterの利用者が投稿するツイートに内容の酷いものが多く見つけられ話題になったことから、『バカッター』という名称が造られ、現在では、悪い意味で一種の社会現象になっています。
このバカッター問題に関連して、事務の福田さんから「こういうのってクビにならんの?」と聞かれたので、今回は、このバカッター問題から、会社から従業員との雇用契約を一方的に解除する解雇について見てみようと思います。

1 解雇の種類

まず、一口に解雇といっても種類がありますので、その種類を整理しましょう。
解雇の種類は、大きく分けて、懲戒解雇整理解雇普通解雇に分かれます。

(1)「懲戒解雇」

「懲戒解雇」とは、会社の秩序を著しく乱した労働者に対して制裁としておこなわれる解雇です。会社の就業規則や労働契約等に記載された懲戒理由に基づく解雇であり、なおかつ懲戒理由が重大である必要があります。
そして、懲戒解雇をすることが懲戒理由に照らして相当であるかという処分の相当性、本人に弁明の機会が与えられているかといった手続きの相当性を満たす必要があります。
「懲戒解雇」となる場合、退職金が支払われない場合があり、「整理解雇」や「普通解雇」ではあらかじめ退職の予告がされますが、「懲戒解雇」では処分をされたその日に解雇されることになります。
従業員に対する最も重いペナルティとして課せられるものになります。

(2)「整理解雇」

「整理解雇」とは、会社の経営上必要とされる人員削減のために行う解雇です。いわゆるリストラであり、会社の経営が苦しくなってしまったため、人件費を減らすために従業員を解雇するというものです。

(3)「普通解雇」

そして、上記以外の解雇を「普通解雇」といいます。
「普通解雇」も会社の就業規則等に定められた解雇理由に基づく解雇ですが、「懲戒解雇」とは異なり、従業員の能力不足等を理由として行われる解雇であり、ペナルティとしての要素が強くありません。

2 実際の事例

それでは、実際に起こった事例をもとに解雇について見ていきましょう。

冷凍庫の中に入って商品であるアイスクリームの上に寝そべった写真を投稿することは、M社の飲食物の衛生状態への信用を毀損する行為といえ、通常、就業規則上の非違行為に該当します。
商品である飲食物の衛生状態に対する信用毀損や、アイスクリームだけでなく「冷凍庫内部の商品を廃棄した」という財産的損害は重大であるので、懲戒解雇にできる可能性が高いです。
他方、本人の再就職等の将来を考慮して、懲戒解雇にはせず、普通解雇を選択することもあります。この場合、就業規則等に定める普通解雇の要件を備えていれば解雇することができます。
以上のように、このようなバカッター問題を理由に解雇をすることは可能かと思います。
ただし、バカッター問題といっても十把一絡げにして語ることはできませんので、万が一、自社でバカッター問題が発覚した場合には、適法に解雇できるのかを慎重に検討する必要があります。

3 最後に

近年、SNSに限らず、ネット関連のトラブルは非常に増えています。
SNSは発信した情報が瞬時に日本中、世界中の人に伝わるという伝播力の速さや強さゆえ、利用においては十分な注意が必要になります。
企業側としても、今後も増えていくであろうネットトラブルの防止策・対応策を学んでおく必要があると思います。
弊所では、ネット被害に特化した対応を行うために「ネット火消し隊」という対策チームを設けています。
ネット関係、特にネット上の投稿に関する問題についてご質問があれば、何でもお気軽にお聞きください。


執筆者:弁護士 森本 禎

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