絶対に認知してもらいたい。すべきこととは?

2023/8/8

 法律上の婚姻関係にある夫婦の間に子どもができた場合、妻が母親、夫が父親となります。
 一方、未婚の状態で出産した場合は、生物学上の父親がいるにもかかわらず、戸籍上の父親欄は空白となります。
 このような場合、生物学上の父親を戸籍上の父親とする方法が「認知」です。
 今回、法律上の父子関係を成立させる「認知」について解説いたします。

1認知とは

(認知) 民法第七百七十九条 嫡出でない子は、その父親又は母親がこれを認知することができる。

 戸籍上婚姻していない男女の間に出生した子供(非嫡出子)と、親との間に法的な親子関係を成立させる方法として「認知」があります。
 厳密には母親と子供の親子関係を成立する方法としても「認知」はありますが、実際には母親は分娩したことが客観的に把握できないといった限定的な場面に限られ、大半は父親と子供の親子関係を成立する方法となります。
 このことから今回、未婚女性が子供を出産し、相手方である男性に認知請求するケースを想定して解説いたします。

2認知の方法

 認知には、

(1)相手方が任意で行う任意認知

(2)裁判所を通じて認知してもらう強制認知

の2種類があります。

(1)任意認知

①双方で協議し、男性側から市町村の役所に認知届を提出してもらえば、手続きは完了します。
 認知届の提出が最も簡易な認知方法といえます。
 子供が成人となった後も認知を行うことはできますが、その場合、子供の同意が必要です。

②父親である男性に認知を求めた場合「俺の子かどうかわからない」「DNA鑑定して父親であることが判明してから認知する」といった言葉をよく耳にします。
 交渉が決裂したとして、裁判所を通じて強制認知手続を行うことも可能ですが、DNA鑑定で親子関係が明白となった段階で観念して認知に応じる男性も少なからずいます。
 そこで、強制認知手続を行う前に、DNA鑑定を行えば相手方が認知してくれそうであれば、DNA鑑定を行ってみるのもいいでしょう。

ア 胎児認知

①胎児の段階でも認知をすることは可能です。
 その場合、胎児の母親の同意が必要となります。
 また胎児の段階では子供の戸籍はないことから、実際に父親として戸籍に記載されるのは、子供が出生し戸籍が作成された後となります。
 子供が生まれた後、父親が本当に認知してくれるのか不安になる方も多いと思います。
 そのような場合に備えて、胎児認知を打診してみるのも良いかと思います。

②なお、子供が生まれてからDNA鑑定すれば認知を検討する、と回答する男性も多いです。
 出産後でなければDNA鑑定はできないと胎児認知をあきらめる方もいらっしゃいます。
 しかし、胎児の段階であっても父親とのDNA親子鑑定を実施することは可能です。
 最近では母親の血液を採取することで、相手方との親子関係につき鑑定できる方法もあります。
 相手方からDNA鑑定を求められた場合、胎児の段階でもDNA鑑定可能な機関を探してみてはいかがでしょうか。

イ 遺言による認知

 遺言により認知をすることも可能です。
 この場合、本人の死亡後、遺言執行者が認知手続を行うこととなります。
 遺言による認知は、

 ①遺言書の中で対象となる子供を特定し

 ②事前に子供の承諾(子供が未成年の場合は、母親の承諾)を得る必要があります。

 また、遺言書の中で遺言執行者の指定がない場合は、裁判所に遺言執行者の選任申立を行う必要があり、遺言執行者がいる場合は、執行人の就職の日から10日以内に認知届をする必要がある(戸籍法第64条)等、手続き面で煩雑となっているため、遺言による認知を行う場合は、弁護士へのご相談を特におすすめします。

(2)強制認知

 話し合いによっても父親が、「俺の子供でない」等、認知を拒否する場合は、裁判所を通じて認知を求めることとなります。
 強制認知は、子供の出生後に、家庭裁判所への申立てにより行います。

ア 調停認知

 まずは認知請求の調停を申し立てます。
 父親が死亡した後の認知では調停を経ずに認知の訴えを提起することとなりますが、原則は認知調停の申立てが先となります(調停前置主義)。
 申立先の裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、又は当事者が合意で決める家庭裁判所となります。
 認知調停では、裁判所の調停委員を交えて協議し、双方の合意が得られれば、裁判所が合意に相当する審判を出すこととなります。
 この審判の確定により認知が認められます。

イ 訴訟認知

 調停によっても調停成立しなかった場合は、認知訴訟を行います。
 なお後述の「胎児認知」については認知の訴えができないため、産まれてから訴訟提起することとなります。
 訴訟の中でも合意することは可能ですが、合意に至らなければ判決となり、判決確定により認知の効力が生じることとなります。
 認知の訴えを提起できる原告は、①~③に該当する者です。

 ①非嫡出子(認知の対象となる子です)
 ②非嫡出子の直系卑属(非嫡出子の子供や孫)
 ③非嫡出子及び非嫡出子の直系卑属の法定代理人(対象となる子が未成年の場合の母親等)

ウ 死後認知

 父親が死亡した後であっても、認知を求めることは可能です。これを死後認知といいます。
 死後認知は、認知の訴えを提起する必要があります。

 認知の訴えの訴状は

 ①子供の住所地

 若しくは

 ②父親の最後の住所地

 を管轄する家庭裁判所となります。

 また、父親が既に死亡していることから、相手方は父親の最後の住所地を管轄する地方検察庁(検察官)となります。
 家庭裁判所に訴状を提出すれば、裁判所から担当検察官に訴状が送付されることとなります。
 なお、死後認知は父親が死亡してから3年以内に行う必要があります。

3認知で生じる子どものメリット

 認知が認められると、養育費の請求が可能となり、また相続権が発生することとなります。 

(1)養育費が請求できる

ア 認知されると、法律上の父親には養育費の支払義務が発生します。

  ではいつの時点から養育費支払義務が発生するのでしょうか。

  認知の効力は、出生のときに遡って効力が生じることから、出生の時から法律上の親子関係が認められます。
  一方で、養育費については、必ずしも出生の時から支払義務が発生するとは限りません。
  家庭裁判所において養育費のスタート時期につき、養育費請求の意思が明確となった時点とする傾向があります。
  そのため、認知をしてもらっても、養育費の支払意思を事前に明確にしておかなければ、出生時点まで遡ることができません。
  認知請求をする時点で、養育費の請求の意思も明確にしておくことが重要です。
  具体的には、書面で相手方に認知を求める場合、併せて養育費の請求も記載しておきます。
  また書面は可能な限り内容証明郵便で送付することをお勧めします。
  また、認知調停を申し立てると同時に養育費調停を申し立てることが一般的です。

イ 養育費の額については、父母の収入や、子供の数、年齢によって異なります。

  養育費の算定表について裁判所ホームページから公開されています。(養育費・婚姻費用算定表

ウ 養育費について協議が整った場合は、公正証書の作成もお忘れなく。

  公正証書を作成した場合、養育費が不払いとなっても強制執行手続きを行いやすくなります。
  公正証書作成も承っていますので、作成にあたってご不安な方はいつでもご相談下さい。

(2)相続権が発生する

 認知を受けることにより、子供の出生に遡って法的な親子関係が認められることにより、「相続権」が発生します。
 特に死後認知の場合は、認知が認められれば、すぐに相続人として、遺産分割協議等に参加することが可能となります。
 遺産分割協議中の場合は、相続人として協議に参加することができ、遺産分割協議が終了している場合であっても、他の相続人に対して、法定相続分に応じた金銭の請求を行うことが可能です。

4認知してくれないときは

(1)DNA鑑定を提案

  父親が認知をしてくれない場合は、前述の通り、強制認知の手続を進めることも可能ですが、先行してDNA鑑定を実施してみることもお勧めです。
 DNA鑑定については、胎児の段階でも母親の血液を採取する方法で可能な場合もあります。
 父親が「俺の子か分からないし」等、認知を拒絶してきた場合には、まずはDNA鑑定をご検討下さい。

(2)弁護士に依頼

 父親がDNA鑑定すら応じない場合は、弁護士を通じて交渉し、タイミングを見計らって強制認知手続をすることも効果的です。
 妊娠中、出産後、いずれのタイミングであっても一人で悩まずご相談下さい。

5認知請求調停・訴訟

 認知請求の調停や認知の訴えは、珍しい手続きではありません。
 認知を拒絶された場合、強制認知の手続を行うことも可能ですので、あきらめる必要はありません。

6まとめ

 以上のように、認知には、大きなメリットがあります。
 特に養育費は子供を育てる上で大変重要なものである一方、認知されなければ法的に養育費を請求することはできません。
 相手方が認知をしてくれない、どのように認知を請求していいのか分からない等、お悩みの方は迷わず弊所までご相談下さい。