熟年離婚の原因と離婚の進め方

2023/2/23

 「熟年離婚」というテレビドラマが、今から約20年前、放映されました。

 主演が渡哲也さん、妻役を演じたのが松阪慶子さんです。

 全9回の放映中、平均視聴率は関東で19.2%、関西で23.2%だったようで、人気の高いドラマだったことがうかがえます。

 熟年離婚というワードは当時の流行語にもなったようであり、その頃以降から、一定の年齢や婚姻期間を経ての離婚のことを「熟年離婚」ということが多くなりました。

 今回の記事では、熟年離婚をテーマに説明をしたいと思います。

1熟年離婚とは

 熟年離婚という単語に法的な定義はありません。

 本記事筆者の私見でいいますと、子育てを終えた、または、婚姻後20年程度以上を経過した夫婦の離婚を指しているように思います。

 夫婦が定年後の生活や老後の生活を見据えるようになったときに、配偶者を支えて生きていくという未来を思い描けなくなった場合、長年にわたる不満の蓄積とともに離婚という道を選ぶ場合が多いように感じます。

2熟年離婚の原因と特徴

 熟年離婚には次のような特徴が見受けられます。

(1)定年後の生活にストレス(性格不一致、価値観)

 これまで互いに仕事や子育てを抱え、性格の不一致や価値観の不一致を感じながらも、長年夫婦として生活していた二人も、子育てが終わったり、定年を迎えた際に、新婚以来の夫婦のみの生活を再び送ることとなります。

 このときに、これまであえて見なかった、または、我慢をしてきた性格の不一致や価値観の不一致から、夫婦で生活していくことにストレスを抱えることとなり、離婚を考えるというのが一つの例となります。

(2)介護をしたくない

 熟年離婚というほどですので、夫婦共に一定の年を重ねており、互いの介護が現実として見えてくるようになります。

 このときに、長年抱えていた不満から、相手配偶者の介護をする未来が見えないという考えから、離婚を選ぶという場合があります。

(3)セカンドライフ(妻側) 

 子育てや家事を主として担ってきたのが妻であるという家庭の場合、夫に子育てを頼ることができない中、孤軍奮闘しながら子育てや家事を担っているというケースが見受けられます。

 時には、夫の転勤に付き添い、これまで親しくなったコミュニティから離れてしまうということもあったことでしょう。

 そのため、子育ても一段落し、夫に縛られる生活をする必要がなくなったという女性が、自由を謳歌したいという気持ちから離婚を選択することがあります。

3熟年離婚のメリット、デメリット

(1)メリット

 熟年離婚の場合、①財産分与、②年金分割、といった制度により、一定の金銭を確保できる可能性が高いことがメリットといえます。

①財産分与

 順調に夫婦で財産を築くことができているのであれば、自分名義の財産が少ない配偶者は、他方配偶者に対して一定の財産分与を求めることが期待できます。

 例としては、

 

 ・住宅ローンの支払いを終えた持ち家がある場合

 ・住宅ローンの支払いは残っていても残りが少額で、不動産価格と比較しても不動産価格が上回るという場合

 ・退職金が支払われたばかりである場合

 ・退職金が数年後に支払われる予定である場合

 

 などがあげられます。

 このような事案では、財産分与を請求する側にとっては、それなりの金額の財産分与が期待できます。

②年金分割

 婚姻期間中、夫婦間で収入に差があった場合や、夫婦の片方が3号被保険者であった場合、年金分割制度により、離婚後も、一定の年金を確保できます。

 

(2)デメリット

 デメリットとしては、

 

 ①財産分与により金銭を支払う側にとっては負担が大きくなる

 ②年金分割により分割をする側にとってはもらえるはずであった年金が少なくなる

 ③老後の生活を一人で過ごす可能性がある

 

 といった点が挙げられます。

 

4財産分与

 熟年離婚の場合、老後の生活も考えますと、財産分与が非常に重要となってきます。

(1)財産分与できるもの

 財産分与は、婚姻期間中に夫婦がその協力によって得た財産で、離婚時または別居時に存在する財産が対象となります。

 預貯金、不動産、株式や投資信託といった有価証券、生命保険(掛捨てのものを除く)、退職金などが財産分与の対象財産の一例として挙げられます。

(2)財産分与の対象にならないもの

 婚姻期間中に得た財産であっても、夫婦の一方が他方の協力を得ずに獲得した財産は、特有財産として財産分与の対象にはなりません。

 相続によって得た財産が典型例として挙げられます。

5熟年離婚の進め方

 熟年離婚を進めていくには、夫婦間での合意による離婚を目指すか(協議離婚、調停離婚)、裁判所に離婚を命じてもらうか(裁判離婚)のいずれかによる離婚を目指すこととなります。

(1)協議離婚

 協議離婚は、夫婦で離婚届に署名押印し、役所に届け出る方法によって離婚をすることをいいます。

 夫婦間で合意ができさえすれば、たとえ民法上の離婚理由はなくとも離婚することができます。

 夫婦間で離婚意思が合意できそうであり、条件についても比較的対立が少ない場合は、協議離婚によって解決できる可能性が見込めます。

(2)離婚調停

 協議離婚による離婚が難しい場合は、家庭裁判所における離婚調停の手続きをとる必要があります。

 離婚調停は、家庭裁判所で進める手続きですが、あくまで話合いによる解決を目指す手続きであり、話合いによって互いに合意ができれば、調停離婚という形で離婚が成立します。

 夫婦間で離婚自体は合意できそうではあるものの、財産分与などの条件を巡って、家庭裁判所の調停委員の関与が必要と思われるケースなどは、離婚調停によって離婚を進めていくこととなります。

(3)離婚裁判

 離婚調停を経ても、何らかの理由で合意に至らない場合、裁判所に判決という形で離婚を命令してもらい、強制的に離婚を実現させるのが、いわゆる裁判離婚です。

 離婚裁判では、民法上の離婚事由が満たされていないと、そもそも裁判所は離婚を命じることができません。

 熟年離婚の場合は、婚姻期間が長いケースがほとんどですので、婚姻期間と比較して長期といえる別居がある場合や、相手配偶者による暴力や不貞といた有責性がある場合に、裁判離婚が認められやすいといえます。

6まとめ

 熟年離婚では、互いに長年にわたる不満ゆえに紛糾するケースや、老後の生活を見据えて財産分与を巡る争いが生じたりするケースが多く、離婚に向けた具体的な進め方を、練っておく必要があります。

 特に、財産分与は専門性が高い話が出ることもあり、弁護士が関与した方がよいケースも見受けられます。

 熟年離婚をお考えの方は、ぜひ一度、弊所にご相談にお越しください。