拒否してもいいの?面会交流

2023/3/13

1面会交流権とは

面会交流権とは、別居または離婚により、子どもと離れて暮らす親が、子どもと交流する権利のことをいいます。

面会交流は、当初は親の権利という発想から議論が始まりました。現在では、親の権利という側面のみならず、人格の円満な発達のために、両親の愛育の享受を求める子どもの権利としても捉えられています。

子どもの成長にとっては、同居親との絆だけではなく、別居親との絆も欠かせないものとされており、面会交流に関する離婚家庭の子どもに対する諸団体のアンケートにおいても、面会交流は子ども達にとって肯定的に捉えられています。

2拒否が認められる場合

面会交流は、子どものために行われるものという側面がある以上、子どものためにならない場合には制限されることがあります。

「子どものためにならない」とはどういった場合か、という点については、同居親がその思い込みで判断してよいものではなく、様々な事情に照らして判断する必要があります。

(1)子どもを虐待する、(過去に)していた

別居親が子どもを虐待していた場合、子どもと会わせることが子どものトラウマとなる可能性がありますので、面会交流が認められにくくなります。

もっとも、一言で「虐待」といっても、誰がどのように見ても虐待であるというレベルから、同居親が別居親の接し方について虐待という表現を用いているだけで、言い方や態度がきついということにとどまるものまで、様々です。

また、過去に虐待をしていたものの、別居親と子どもの双方が慕い合っているなどの事情がある場合、過去の虐待の一事をもって面会交流を拒否してよいのかは、判断が難しいケースもあります。

(2)連れ去りのおそれがある

別居親が面会交流を奇貨として、子どもを連れ去るおそれがある場合、面会交流は制限される傾向にあります。

何をもって連れ去りのおそれがあるといえるのかは、個別具体的な事情によって判断することとなります。

少なくとも、「連れ去りのおそれがある」という内実が、同居親の別居親に対する嫌悪感にとどまる場合は、連れ去りのおそれがあるとはいえないでしょう。

(3)監護親へ暴力を振るう

別居親が子どもと同居する監護親に対して暴力を振るっていたケースも、面会交流が制限される方向に考慮されます。

もっとも、第三者機関の利用など、工夫によって面会交流が実現できる場合は、面会交流そのものを制限することは難しいこともあります。

(4)一定以上の年齢の子どもが自ら拒否している

面会交流については、概ね10歳前後から子どもの意思を考慮することも多くなってきます。

同居親の別居親に対する嫌悪感が子どもの意思に影響していないのかは、慎重に判断する必要があります。

しかし、それでも子どもが明確に面会交流を拒否しているといえる場合は、面会交流が認められるのは難しいでしょう。

3拒否した場合のリスク

面会交流は、子どもと同居する親にとっては義務としての側面を持ちます。

したがって、面会交流に関する協議を誠実に行わない、面会交流の合意をしたのに子どもを別居親に会わせないといった事情がある場合、法的に不利益を被る可能性があります。

(1)履行勧告

履行勧告とは、家庭裁判所の調停や審判で決められた面会交流等の義務を守らない者に対し、家庭裁判所が義務を履行するよう勧告する手続です。

履行勧告には強制力はありませんが、従わない場合、後に続く強制執行手続において不利益に取り扱われたり、慰謝料を請求された場合に慰謝料を肯定する事情として取り扱われる可能性があります。

(2)間接強制

間接強制とは、強制執行の方法の一つです。

面会交流に従わない同居親に対して、面会交流に従わせるための強制執行は間接強制の方法が取られます。

面会交流を実際に行うためには、子どもという人格的存在の引渡し等を必要とします。

それゆえに、面会交流の強制執行において、執行官が子どもを同居親から取り上げて別居親に引き渡すという方法は馴染みません。

そこで、同居親に対し、面会交流に従うまで別居親に対して金銭を支払わせる、という間接的な方法によって面会交流を実現させようとするのです。

間接強制が行えるようにするためには、家庭裁判所での調停や審判において、面会交流の日時又は頻度、面会交流時間の長さ、子どもの引渡しの場所や方法等について、具体的に定めておく必要があります。

(3)慰謝料請求

面会交流について合意をしているにもかかわらず、同居親が、誠実に協議をしない場合や、面会交流に応じない場合、慰謝料が認められることもあります。

具体的事情において慰謝料が認められるかどうかは、個別的な判断となります。

(4)親権者変更申立

面会交流について合意をしたのに、同居親が正当な理由なくこれに応じない場合、親権や監護権が別居親に変更される可能性もあります。

面会交流が子どもの権利としての側面を有する以上、面会交流の拒否は、同居親が子どもの権利を蔑ろにしているものと評価され、親権者、監護権者としての適格性を否定することにつながるからです。

4裁判所で考慮される「子の利益」

裁判所において「子の利益」を判断する際には、様々な事情を考慮しながら総合的に判断することになります。

(1)子どもに関する要素

子どもに関する要素としては、①子どもの意見、②子どもの生活環境に及ぼす影響などです。

①子どもの意見

乳幼児の場合は、子どもが自らの意見を述べることが難しいとされることが多いため、子どもの表面上の意見は重視されません。

10歳前後くらいから、子どもの意見も重視されるようになっていき、子どもの意向が面会交流の判断に影響することになります。

もっとも、子どもが経済的、精神的に同居親から独立していない状態では、年齢にかかわらず、同居親の影響を受けていることがあります。

そのため、子どもが面会交流を拒否する意見を述べる場合は、その裏にどういった理由があるのか、慎重に吟味する必要があります。

②子どもの生活環境に及ぼす影響

面会交流を行うこと自体や、面会交流の方法、面会交流の頻度や場所などは、子どもの生活環境に悪影響を及ぼしてはいけません。

そのため、子どもの年齢や就学状況、習い事の有無、面会交流場所と子どもの自宅の位置関係などによって、子どもの生活環境にどのような影響があり得るのかを検討することになります。

(2)同居親(監護親)に関する要素

子どもと同居する監護親が子どもの養育についてどのような意見を持っているのか、監護親が面会交流によって養育監護に影響を受けることがないか、といった事情も考慮要素となります。

監護親が別居親からDVを受けていたケースなどでは、別居親との接点があることが、監護親の過度な負担となり、養育監護に悪影響を及ぼすこともあるためです。

(3)別居親(非監護親)に関する要素

別居親についても、面会交流についてどのような意見を持っているのか、子どもと同居していた頃の親子関係はどうであったのか、などが考慮要素となります。

当然の事ながら、一人よがりな面会交流を求めたり、子どもや同居親に全く配慮しないような意見しか持っていない場合は、子の利益に反する方向へと評価されてしまうことでしょう。

(4)夫婦の関係、別居や離婚に関する要素

上記と重複しますが、子どもとの関係で夫婦関係がどうだったのかも考慮されます。

夫婦としてはどうしても喧嘩が絶えなかった場合でも、双方ともに子どものことを真剣に考えて、愛情を持って接していたようなケースでは、面会交流を肯定する方向の要素となるでしょう。

他方で、双方が自分の意見の賛同者として子どもを囲っていた場合は、その内容や程度によって、面会交流について慎重な判断を要する考慮要素となってきます。

別居や離婚をした後も、父母双方が面会交流に向けて協力していけそうなのか、といった事情が考慮されることとなります。

5まとめ

面会交流は、関係の拗れた夫婦(元夫婦)において、別居や離婚後も相手と接点を持たねばならない内容です。それゆえに、別居親と接点を持ちたくない同居親は、面会交流に消極的な人もいます。

しかし、面会交流は、子どもの成長のために必要なものであり、極力実施する方向で検討が必要な内容です。

もし、面会交流を拒否したいと思っている場合は、その心情が、自分のための拒否となっていないか、今一度立ち止まってもらう必要があります。

一方で、面会交流を制限することに正当な理由があるケースもあります。

面会交流でお困りの方は、ぜひ一度、弊所にご相談ください。