対応可能時間 LINE・メール:平日休日適宜対応
TEL:平日 9:30〜21:00

副業(ダブルワーク)の残業代とは?

 近年では、厚生労働省の推奨もあり、副業(ダブルワーク)をする方が増えてきています。
 様々な働き方を選択できる時代となりましたが、あなたの労働時間は適正でしょうか?
 複数の職を持つことで、全体の労働時間は自然と増えてしまうものです。
 収入を増やすためにたくさん働いているのに、実は残業代をもらえずに損をしているかもしれません。
 今回は、副業(Wワーク)をしている方の残業代について解説します。

1そもそも「副業」ってしていいの?

 そもそも「副業」はやってもいいことなのでしょうか?
 多くの人は、会社と「労働契約」を締結しています。法律の原則からしますと、複数の会社と労働契約を締結したとしてもそれは労働者の自由です。
 そのため、「アルバイトを掛け持ちする」というのは、労働契約を複数締結し、複数の会社の仕事を行っているといえます。
 では、正社員の場合、なぜ副業ができないように思うのでしょうか?
 ほとんどの会社は、就業規則や労働契約などで、副業、すなわち、自社以外のものと労働契約を締結することや、自ら事業を営むことを禁止、制限しているのです。
 これは、その会社以外でも働く時間を労働者が取ると、働きすぎにより労働者の健康にも影響が出得ることや、競業や営業秘密の秘密保持という観点からによります。
 そのため、会社が副業を認めるということは、就業規則の副業禁止・制限条項を変更するか、特別に副業を許可するということを意味しています。
 就業規則や労働契約にもともとこのような定めがない場合は、副業を行っても何も問題はありません。

2複数の会社に雇われている場合、副業も「労働時間」!

(1)副業の労働時間

 法律では、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間であると定義しています。
 つまり、本業であろうと、副業であろうと、指示を受けて働いている時間は全て「労働時間」となります。
 本業と異なる場所で異なる仕事をしていたとしても、「労働時間」は通算して数える(労働基準法38条1項)ので、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働く場合は、割増賃金の請求ができます。
 なお、これは雇用形態にはよりません。
 正社員でもアルバイトでも、労働時間は通算します。

(2)副業が「労働時間」に算入されない場合

 「使用者の指揮命令下に置かれている時間」なので、副業が、他の会社と労働契約を締結している場合はこれに当たりますが、副業が、個人事業主としての活動である場合はこれに当たりません。
 後者は、個人で動画配信やSNSでのインフルエンサーとして活動している場合や、業務委託の形式で仕事の受注をしているケースがこれにあたります。

3副業の残業代を計算しよう

(1)残業代の種類

  残業代には、次の3種類があります。

・時間外労働割増賃金 

  法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えたとき…割増率25%以上
  時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間等)を超えたとき…割増率25%以上
  時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき…割増率50%以上

・休日労働割増賃金

  法定休日(週1日)に勤務させたとき…割増率35%以上

・深夜労働割増賃金

  22時から5時までの間に勤務させたとき…割増率25%以上

 上記のとおり、月60時間を超える残業は、割増賃金率が引上げられます。
 また、休日や深夜に働く場合は、休日労働割増賃金、深夜労働割増賃金といった残業代が請求できます。
 まずは、本業、副業に関わらず、自身の労働時間が通算何時間であるか、うち残業時間が何時間であるかを把握することが大切です。

(2)計算式

  計算方法は、1つの職場で働く場合と同じです。
  

1時間あたりの賃金×時間外労働時間数×1.25=割待賃金(残業代)

  上記1.25の部分を、(1)で説明した残業代のうち、当てはまる割増率に変換して計算しましょう。

4副業の残業代は誰に請求するのか

 複数の職場で働いている場合、残業代の支払い義務はどこの会社にあるのでしょうか。

(1)原則

  原則では、「後から労働契約を結んだ会社」に支払い義務が発生します。
  労働者が他の職場でも働いていることを確認した上で、後から労働契約を結んだ会社には、割増賃金を支払う義務があります。
  副業として労働者を雇用する会社は、本業での労働時間を把握しておかなければなりません。

(2)先行して残業させた会社

  原則では、後から労働契約を結んだ会社が支払う義務があると説明しましたが、先に労働契約を結んだ会社にも、支払い義務が発生する場合があります。
  労働契約の時期に関わらず、先に労働時間が法定時間(1日8時間、週40時間)を超えて勤務させた場合には、その会社に残業代の支払い義務が発生します。

 

5注意点

 残業代をスムーズに請求して受け取るために、次の注意点に気を付けておきましょう。
 働き方によっては、残業代が発生しない場合もあるので、後から知らなかった!とならないように、これから副業を始める方も押さえておくべき事項を説明します。

(1)副業していることを勤務先に伝える

  本業、副業の各職場に、兼業していることを伝えておきましょう。
  通算で残業時間が発生していても、内緒で働いている場合、各職場は残業代の発生を認知できません。
  秘密にしたままでは、残業代を請求するのは困難です。
  兼業していることを伝え、許可をもらっておけば、円滑に残業代を請求し、受け取ることができるでしょう。

(2)残業代が発生しない場合

  フリーランスなどの個人事業で副業をする場合は、残業代は発生しません。
  個人事業主は「労働者」ではないため、労働基準法の適用がないからです。
  ここで注意したいのは、個人事業主として業務委託契約を結んでいたとしても、雇用契約のような働き方になっていないか、という事です。
  実態が雇用と変わらないのであれば、残業代の請求が可能な場合もありえます。

6まとめ

 「働き方改革」で、兼業で働く方がどんどん増えています。
 ルールを正しく理解し、働いた分の適正なお給料をしっかりもらえるよう、労働者の権利を学ぶことはとても大切です。
 兼業でなくとも、「残業代を請求しても払ってもらえない」というご相談をよく耳にします。
 後からでも、未払の残業代をきっちり請求するために、普段から始業時間や終業時間を自身で記録しておくとよいかもしれません。
 「未払残業代を払ってもらえない」、「フリーランスとして契約したけどこれは雇用では?」など、お困り事や判断に迷う事があれば、ぜひ弁護士に相談してください。


   お気軽にお問い合わせください