経営者のための遺言書作成のすゝめ

2023/5/17

こんにちは。

「遺言」とは、死亡後の財産処分等に関する生前の意思表示をいいます。

1遺言の種類

遺言には、以下の3種類の方式があります。

①自筆証書遺言…自筆で作成するもの。

②公正証書遺言…公証役場で公証人に作成してもらうもの。

③秘密証書遺言…封印して、公証人と証人に確認してもらうもの。

手書きで良いという意味では、①自筆証書遺言が手軽であるようにも思えますが、全文を自書しなければならない(※ただし、2019年の民法改正により、財産目録はパソコンでの作成も可能)など、決まった方式があります。

中身についても、意図する効果を表現できているかについては、法的判断を要する部分もあります。

その意味で、ご自身で正しく作成するのは難しいかもしれません。

また、死亡後、相続人の間で、本当に自筆で書いたものか、他人が作成したものではないか等、遺言は無効ではないかという争いに発展するリスクもあります。

一方、②公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらうものであり、証人2名以上の立会いが必要となりますので、作成に費用がかかります。
ただし、遺言を無効とされるリスクは、①自筆証書遺言に比べれば低いといえます。

2遺言を残すメリット

①経営する会社の株式を保有する場合

特に会社経営者で、かつ、その会社の株式の大半を保有するという場合、その株式が死亡後に誰に渡るかによっては、会社の経営に混乱を来しかねません。

この場合は、特に遺言を残すメリットがあるといえます。

②不動産を保有する場合

皆さんの中には、財産が多くはないから、遺言書を残す必要はないだろうとお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、たとえば、財産の中に不動産があれば、相続後に登記が必要となり、相続人の中で誰が取得するのかを遺産分割によって決めなければなりません。

この場合、誰が不動産取得するのかだけでなく、不動産を取得しない者は何を取得できるのか、不動産を取得する者が代わりにお金を支払うのか等、争いとなるポイントは複数あります。

生前に遺言の中で対策しておけば、このような争いを防げる可能性は高まります。

3遺言の内容

遺言の内容は、必ずしも相続人全員に公平に分けなければならないということはありません。

しかし、兄弟姉妹以外の相続人には、法律上「遺留分」があり、最低限受け取れる遺産があります。

たとえば、相続人が配偶者と子2人という場合で、「全財産を長男に残す」などとした場合、配偶者は1/4、財産を受け取れない子は1/8の権利を有するということになります。

その意味で、亡くなった後、遺留分に関する争いを避けるためには、最低限遺留分に配慮した分け方を考える必要があります。

4非上場株式を保有する場合の特別の配慮

会社経営者で、かつ、その会社の株式の大半を保有する場合、自身が亡くなった後の経営にも配慮するのが望ましいといえます。

たとえば、子が2人(AとB)いて、うち1人(A)に会社を継がせたいと思っている場合、その子(A)に全株式を相続させたいという希望が出てくるかと思います。

ただ、会社の株式以外にめぼしい財産がない場合や、株式の評価額が高額な場合、子(A)は、子(B)からの遺留分侵害額請求に対して、子(A)自身の財産から捻出してでも、子(B)にお金を支払う必要が出てくる場合があります。

このような事態を避けるため、生前にできる対策がいくつかありますので、簡単にご紹介します。

①子(B)に遺留分放棄をお願いする。

家庭裁判所の許可が必要となりますが、生前に遺留分を放棄してもらう制度があります。

②経営承継円滑化法上の合意

相続人となる者全員で行う必要はありますが、①株式を遺留分対象の基礎財産から除外する合意、 ②遺留分を算定する際の株式の価額を固定する合意などがあります。

③早期の生前贈与

早期に子(A)に生前贈与すれば、遺留分侵害額請求の対象から外せる可能性があります。

株式の評価額が低い時に譲渡すれば、譲渡金額を抑えることができます。

また、経営承継円滑化法上、贈与税・相続税の納税が猶予又は免除される制度もあります。

5まとめ

事故や病気・ケガでの死亡など、万が一の事態は突如として発生するものです。

皆さんが亡くなった後に、親族の方が困らないよう、生前からできる対策があります。

弊所では、税理士等の専門家との連携も行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。