過払い金とは?過払い金が請求できる条件について解説

2023/3/22

テレビコマーシャルやインターネットで「過払い金」という言葉を目にするようになって久しいかと思います。

かつて、利息制限法の上限利息と、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」といいます。)の上限利息とでは、出資法の上限利息の方が高く、消費者金融等の貸金業者は、高い方の利息で貸し付けを行っていました。

しかし、最高裁判所は、利息制限法の上限利息を超える利息分の支払いについて、無効とし得る判断を平成18年に出しました(以下「平成18年最高裁判決」といいます。)。

これによって、利息制限法の上限利息を超えて支払っていた分は、過払いだったこととなり、過払い金として返ってくることになったのです。

1過払い金とは?

過払い金とは、利息制限法の上限利息を超えて支払っていた金銭のことを指します。

実は、この過払い金の理屈自体は、平成18年最高裁判決が出されるまでにも確立されていました。

しかし、昭和58年に制定された「貸金業の規制等に関する法律」において、利息制限法の上限利息を超えた支払いであっても、一定の場合には有効な支払い(弁済)と認める規定が設けられ(これを「みなし弁済」といいます。)、上記の過払い金の理屈が骨抜きにされていました。

なお、「貸金業の規制等に関する法律」は、後に「貸金業法」へと改正され、それと共に、みなし弁済の規定も廃止されています。

平成18年最高裁判決は、このみなし弁済と戦ってきた諸先輩方の長きに渡る歴史があります。

その内容はあまりに専門的過ぎるので、以下では、平成18年最高裁判決によってもたらされた状況を前提に解説します。

(1)グレーゾーン金利

冒頭で述べた、利息制限法の上限利息と、出資法の上限利息の差のことを、俗に「グレーゾーン金利」といいます。

金銭の借金において、利息制限法の上限利息は、年15%~20%とされ(利息制限法1条1項)、これを超える利息は無効とされます。その結果、利息制限法を超える利息を定めても、その定めは無効となり、利息制限法を超える利息部分は支払いをしなくて済みます。

しかし、利息制限法違反には刑事罰はありません。

そして、かつての出資法では、上限利息を年29.2%と定めていました。出資法の上限利息を超える場合は刑事罰が科されます。

そのため、多くの貸金業者は、出資法の上限利息に合わせて年29%~年29.2%の利息を設定し、それに対する返済も「みなし弁済」として有効であるとして、事実上、利息制限法を超える利息を取っていたのです。

このことから、利息制限法を超えているため、「シロ」とはいえないが、出資法の上限利息であれば刑事罰が科されず、当時の法律では有効ともいい得るため「クロ」ともいえないことから、「グレー」といわれていたのです。

(2)グレーゾーン金利の撤廃

貸金業者によるグレーゾーン金利は、多くの多重債務問題を引き起こし、社会問題となっていました。

これに対して、平成18年最高裁判決は、「みなし弁済」が認められる場合を厳格に判断することにより、事実上、グレーゾーン金利での貸し付けが無効となるような判断をしたのです。

グレーゾーン金利の温床となっていた「みなし弁済」も法律改正により撤廃され、出資法の上限利息も利息制限法の上限利息に合わせて揃えられたため、現在では、グレーゾーン金利は撤廃されています。

2過払い金が発生する条件とは?

上記で述べた通り、過払い金は、払い過ぎたお金が戻ってくるというものです。

そのため、前提として、借金の返済をしていたということが必要です。

(1)過払い金が発生する条件

グレーゾーン金利の撤廃は、平成22年6月18日以降となっています。

したがって、過払い金が発生する人は、平成22年6月17日までに貸金業者から借金をしていた人となります。

(2)過払い金が発生しない条件 ※貸金業者

どれほど利息の支払いが厳しくとも、過払い金が発生しない場合もあります。

利息制限法の上限利息内で借入れをしている場合や、平成22年6月18日以降に適法な業者から借金をしている場合です。

3過払い金の時効の期間

過払い金を請求できる権利は10年で時効となります。

この起算は、貸金業者との取引終了時とされています。

したがって、最後に取引をした日が10年以内であれば間違いなく請求が可能です。

借金を完済した方であっても請求は可能です。

完済をしてから10年以上経っているものの、同じ貸金業者から再び借入をした場合は、意見が分かれています。取引の連続性が認められそうであれば、過払い金請求が認められる可能性があります。

4過払い金請求のメリット

過払い金請求には次のようなメリットがあります。

(1)借金返済が現実的

多重債務を抱えている場合で、過払い金がある場合、過払い金を返済の一部に充てることができるため、借金の負担が軽減される可能性があります。

過払い金で他の債務を返済できる場合は、自己破産すらも不要となります。

(2)過払い金が戻ってくる

過去に借金は抱えつつも、今は借金を抱えていないという方の場合、過払い金があれば自分の下へ帰ってくるお金となります。

5過払い金請求のデメリット

今現在借金を抱えている中で、過払い金を請求すると、デメリットも生じることがあります。

(1)信用情報機関に登録される

多重債務の中で過払い金請求を行う場合、過払い金で借金の返済ができる目途があるにせよ、一時的には借金の返済を止めることになります。

これにより、信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録されてしまうこととなります。

(2)新規借入やカード作成が難しくなる

信用情報機関に登録されますと、新たな借り入れや、クレジットカードの作成が難しくなります。

これについては、過払い金で他の借金を完済できるのであれば、信用情報機関から削除されるため、リカバーができます。

(3)一定期間住宅ローンが組めない

信用情報機関に登録されてしまいますと、一定期間、住宅ローンが組むことができなくなります。

6まとめ

過払い金は、法の抜け道を利用したかつての貸金業者が、不当な利益を得ていたものといえるものです。

平成22年以前の借り入れとなりますと、10年以上も前の借金に関することとなりますが、過去に借金をしていた人の場合や、過去から現在に至るまで借り入れと返済を繰り返している人の場合、過払い金が発生している可能性があります。

もし、かつて借金をしたことがあるという場合は、過払い金があるかもしれませんので、弊所までご相談ください。