暗号資産関連法規の現状と改正

2019/6/14

1はじめに

令和元年6月7日、仮想通貨の「暗号資産」への改称や、規制強化策などを盛り込んだ、資金決済法等改正法(情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律)が公布されました。

以下、その概要について情報共有させていただきます。

公布されたばかりの法律のため、内容に幾分不正確なところがあるかもしれません。内容の判断は、自己責任でお願いいたします。

 

主な改正事項は、以下の通りになります。

① 暗号資産(仮想通貨)交換業者に対する規制の見直し

② 暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引、ICOに対する規制の整備

③ 銀行等の業務範囲の見直し

④ 店頭デリバティブ取引の一括清算における証拠金の清算

 

https://www.fsa.go.jp/common/diet/index.htmlがすべてなのですが、それなりの分量になりますので、以下、重要と思われるところを整理させていただきます。

 

2暗号資産交換業者に係る制度整備

(1) 呼称を、「仮想通貨」から「暗号資産」に変更する(資金決済法2条5項など)。

 

(2) 暗号資産管理業務を営む者に対する規制を導入する(資金決済法2条7項など)。

これにより、暗号資産のいわゆるカストディ業者に対して、暗号資産交換業者として登録義務が課され、本人確認、分別管理などの規制対象となる。

 

(3) 暗号資産交換業の拒否事由の追加(資金決済法63条の5第1項第6号)。

a. 自主規制機関に加入しないもの

b. 自主規制機関の規則に準じた社内規則や当該社内規則の遵守体制を整備していないもの

これにより、暗号資産交換業者に対し、自主規制機関への加入を促し、自主規制の実効性を確保する。

 

(4) 暗号資産交換業者による顧客資産の分別管理の強化(資金決済法63条の11、11の2)。

a. 顧客資産のうち、金銭は、自己の金銭と分別して、信託する。

b. 顧客資産のうち、暗号資産は、自己の暗号資産と分別して、原則として利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法(コールドウォレット等)で管理する。

c. 上記b.の例外として、いわゆるホットウォレットで管理する顧客の暗号資産については、別途見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)を保持することを義務付ける。

 

3金融商品取引法による規制

(1) 金融商品の定義に暗号資産を追加する(金融商品取引法2条24項3号の2)ことで、暗号資産デリバティブ取引が、金融商品取引法の規制対象となる。

 

(2) いわゆる投資型ICOトークンを第1項有価証券に追加する(金融商品取引法2条3項など)ことで、企業内等の開示制度の対象とするとともに、投資型ICOトークンの売買、募集の取り扱いなどを第一種金融商品取引業として位置付ける(金融商品取引法28条1項1号など)

これにより、投資型ICOトークンの仲介業者が、明確に金融商品取引法に基づく業規制の対象となる。

 

(3) 集団投資スキーム持分の要件など一定の場合について、暗号資産を「金銭」とみなして金融商品取引法を適用する(金融商品取引法2条の2)。

これにより、たとえば、暗号資産などを払い込む「ファンド」であっても、他の要件を満たせば、原則、みなし有価証券(集団投資スキーム)に該当し、金融商品取引法の規制対象となる。

暗号資産の取引、暗号資産を用いたデリバティブ取引などに関して、「不正行為の禁止」「相場操縦行為等の禁止」などを整備する(金融商品取引法185条の22~24)

 

4おわりに

今回の改正では、弊所が当初から解釈上懸念していた箇所も、具体的に規制されることになりました。

弊所では、暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーンといった最先端分野も取り扱っております。

暗号資産に関する事業についても、お気軽にお問い合わせください。