【速報版】離婚慰謝料に関する最高裁判所判例(平成31年2月19日最高裁判決)

2019/2/21

1 平成31年2月19日最高裁判決

 こんにちは。

 みなさん、「離婚慰謝料」という言葉を耳にされたことありますか?

 配偶者の不貞行為(不倫)が原因で夫婦が離婚した場合、不倫相手に、離婚時の精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるかが争われていた事案について、平成31年2月19日、最高裁の判決が出ました。

 世間の注目度も高い判決なので、速報版として簡単にご紹介します。

2 不貞行為(不倫)の慰謝料について

 過去の判例によれば、配偶者の不倫相手に対しては、離婚が成立したかどうかにかかわらず、不貞行為の慰謝料を請求できるとされています。

 この場合、不貞行為を不法行為として、不法行為に基づく損害賠償請求をするのですが、民法上、不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間で時効消滅すると定められています。

 このことから、不貞行為や相手方のことを知ってから3年経過すると、損害賠償請求することが基本的にできなくなってしまいます。

 今回の裁判でも、原告男性が元妻の不貞行為と不貞相手を知ったときから3年以上経過していたため、不倫相手から、損害賠償請求権が時効消滅しているとの反論がされました。

3 下級審の判断

 確かに、不貞行為が不法行為にあたると捉えれば、被害者が不貞行為と不貞相手を知ってから3年以上が経過していれば、損害賠償請求権は時効消滅していることになります。

 しかし、今回の裁判の2審は、不倫相手には、夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任があるとして「離婚に伴う慰謝料を請求することができる」と判断しました。

 この考え方では、離婚させたことが不法行為に当たると捉えるため、時効の起算点は不貞行為と不貞相手を知ったときよりも後になります。

 そして、今回の裁判の事例では、離婚時から3年は経過していなかったため、損害賠償請求権が時効消滅していないことになります。

 

 これまでの裁判例では、夫婦を離婚させたことを不法行為として慰謝料を請求するという、いわゆる「離婚慰謝料」は認められないことが多かったため、離婚慰謝料について最高裁がどのような判断を示すのか、世間からも注目されていました。

 

4 最高裁の判断

 結論として、最高裁は、元夫である原告男性の請求を棄却しました。

 すなわち、今回の事案では離婚慰謝料は認められない、と判断したのです。

 その理由は、離婚は本来夫婦間で決められるべき事柄であるから、夫婦を離婚させたことについて直ちに不倫相手が不法行為責任を負うことはない、というものでした(判決文参照)。

 そして、離婚慰謝料が認められる場合として、「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるとき」と判示しました。

 

 これは、本来夫婦間で決められるべき事柄である離婚について、不倫相手が不当な干渉をして離婚に至らせたような事情がある場合には、離婚慰謝料が認められる余地があると判断したといえます。

どのような場合が「不当な干渉」に当たるのかは、今後の裁判例や判例により具体化されることと思います。

 

5 さいごに

 今回の判決では元夫である原告男性の請求が棄却されましたが、上記のように、「特段の事情」があれば離婚慰謝料が認められると最高裁が判断したことで、今後、離婚慰謝料を請求する訴訟が増加することが予想されます。

 どのような事実があれば「特段の事情」が認められるのか、引き続き、今後の裁判例にも注目したいところです。

 

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